Step.1 組織づくり
Step.1 組織づくり
ファンドレイジングは、NGOの組織全体に関わる重要なテーマです。
ファンドレイジングを行うには、ファンドレイジングの意義を理解し、組織全体で意識を共有し、きちんとした計画をたてたうえで実行し、その後には振り返りを行うことが必要です。
ここでは、ファンドレイジングサイクルの「Step1」である、組織づくりについて考えてみましょう。
●意思統一
寄付者志向のファンドレイジングを実行するためには、その重要性について、組織内で意思統一しておくことです。ファンドレイジングを団体の中核的機能として明確に位置付け、日々の会議や理事会、事業計画を作る過程において、ファンドレイジングの意味とあり方についての認識を共有する必要があります。
優れたファンドレイジングを展開しているNPOは「自分たちだけで問題を解決することはできない。遠回りなようでも、ファンドレイジングを通じて、市民からの『参加』を得ることこそが、解決への近道だ」という意識を全職員で共有しています。現場のスタッフにファンドレイジングに同行してもらう、募金のパンフを一緒につくるなど、ファンドレイジングにすべてのスタッフをかかわらせていくことが重要です。
ミッションにファンドレイジングを位置づけることから始める団体もあります。寄付者志向のファンドレイジングが問題解決の必須条件であると、全職員が理解するように組織をつくっていっているのです。
●寄付者志向
メンバーの意思統一とともに重要なのが、組織のあり方の再構築です。
現在、日本の多くのNPOは、問題解決と支援者対応の間で分断されています。つまり、片や自分たちで問題解決をしようと集中する。一方で、お金や人が必要になったときに支援を募る。2つの行動のベクトルが互いにまったく違う方向を向いていて、どちらにも集中できていない。組織として一体性がないのです。
このような組織のままでは、問題解決に注力すればするほど、支援者対応がおろそかになり、支援者対応をすればするほど、今度は問題解決がおろそかになってしまいます。
では、どうすればよいのでしょうか?
先ほど、ファンドレイジングは「寄付者志向」でなければならないと述べました。組織もまた「寄付者志向」に再構築すればよいのです。ミッション(目的)、戦略、個々の活動、組織構造に至るまで、寄付者が問題解決の主役となれるような仕組みとは何かをきちっと考えることが大切です。「寄付者志向」というベクトルに、すべての活動が集約されるようにする必要があります。
●組織資源
ファンドレイジングを進めていくに当たっては、今、自分たちの組織にあるものを再確認することが大切です。何があって、何がないのかを把握し直すことです。ヒト、モノ、カネ、実績などを洗い出しましょう。
これらの中で、NPOにとって最も大切なものは「ヒト」です。スタッフやボランティアはもちろん、団体が持つあらゆるものから広がる人的ネットワークです。
頭文字を取ると「FR」になるファンドレイジングは、米国では「フレンド・レイズ」だともいわれています。ファンドレイジングにおいては、この「フレンド(友達)・レイズ(集める)」、すなわち「友だちづくり・友だち広げ」です。
ヒトのつながりをつくることが非常に大切な第一歩なのです。
人的ネットワークをはじめとする組織資源を、NPOが再確認する最も大きな意味は「組織の強みは何か」「組織のオリジナリティは何か」をつきつめることにあります。NPOの数が3万5千を超えた中では、自分たちのオリジナリティは何か、他のNPOに負けない強みは何か、類似団体との違いは何かなどを掘り下げることが欠かせません。
寄付者の思いを読み取り、魅力的な解決プログラムを開発して、寄付(参加)を募るというファンドレイジングの一連の流れは、自分たちの強みやオリジナリティに支えられたものでなければなりません。