Step.5 依頼・企画案
Step.5 依頼・企画案
いよいよ、具体的な寄付集めに入ります。寄付は、「お願い」して、はじめて集まるものです。どのような形で寄付を募るのが効果的なのかをよく考えて、きちんとした計画を立てて寄付集めを開始しなくてはなりません。
ここでは、いくつかのキーワードに沿って、寄付集めの手法について考えてみたいと思います。
●バリューの発掘
潜在的寄付者をセグメントし、ターゲティングすることに加え、もう1つ大事なのが、「NPO側からバリューを発掘し、セグメント自体の種類を増やす」という視点を持つことです。
バリューが多様化すれば、関係開拓の方法にも広がりが生まれ、より多くの人が「関係者」になるからです。
具体的な例をあげると、沖縄のサンゴを守るNPOが、サンゴに「貴重なもの」というバリューしか見出していない場合と、「魚のすみかとなっており、漁業者にとっても大事」、「サンゴがあるから多くのダイバーが集まり、観光が成立している」、など複数のバリューを見出している場合で、どちらが多くの寄付製品を開発できるでしょうか? 答えは明らかです。
大切なことは「自分のやりたいことは、誰に、どんな価値があるのか」を考え抜くことです。そして「何をもって寄付を集めるのか」をちゃんと意識して、寄付製品を開発することです。
バリューを掘り起こすとは、言い換えれば、漠然としたテーマから具体的なキーワードを提示することです。サンゴというテーマのままでは、人に「サンゴは美しく貴重なものだ。」くらいの思いしか喚起できませんが、サンゴというテーマから、「漁業」、「観光」というキーワードを掘り起こすことで、人の「最終的に」サンゴにつながる思いを発掘できるのです。
こうしたキーワードが、潜在的寄付者にとっての「価値」であり「寄付を促すもの」です。キーワードが多くなればなるほど、潜在的寄付者(参加者)が増え、より多くの寄付製品が開発でき、結果的に寄付額も大きくなるでしょう。
●アップセールとクロスセール
寄付をより伸ばす依頼の仕方について、企業のマーケティングで使われる「アップセール」、「クロスセール」という言葉で考えてみましょう。
アップセールとは、ひとり当たりの購買単価を上げること。クロスセールとは、関連するほかの製品を買ってもらうことを意味します。
途上国への寄付であれば、繰り返し寄付を行う中で、寄付金額が上がっていくことが「アップセール」。
寄付だけでなく、その国の産品などを購入してもらうことなどがクロスセールに当たります。
二度、三度と寄付を繰り返してくれる人がもしいれば、その人は、みなさんのNPOの「ファン」です。一番重要なのはファンになってもらうまでの過程ですが、こうした「ファン」に、より寄付の単価を上げてもらう、寄付に関連する製品を買ってもらうという視点も重要です。
●パーソナライズ化
寄付製品が開発できたら、次はどう売る(=寄付をお願いする)のかを考えなければなりません。ここでキーワードになるのが情報の「パーソナライズ化」。相手にとって意味のある情報を届けるということです。
潜在的寄付者の関心は常に、「自分にとって」何の意味があるのか、です。自分のお金を出して、自分にどんな対価があるのかを知りたがっています。
しかし、日本のNPOの多くは、この「知る欲求」に応えられていません。ひとりひとりの寄付者に、その人が必要とする情報を届けられていないのです。これでは、寄付製品を開発したとしても、寄付を集めることはできません。