Step.8 スパイラルアップ
Step.8 スパイラルアップ
寄付は不安定で一過性のものと考えがちですが、実は、寄付は、継続的で安定的な財源となり得るものです。そのためには、ファンドレイジングサイクルを、「繰り返され循環するもの」と考え、一度寄付をしてくれた人との関係を強化していくことが重要です。
●寄付をやめる人
関係強化に向けてたくさんの努力をしても、寄付者の中には、何らかの理由で寄付を中止したいという人が必ず現れます。そのときに、中止の理由、不満があったかなかったか、あったならばどんな不満か、などをさりげなく聞いてみましょう。
国際NGO『ワールド・ビジョン・ジャパン』の募金担当者である高木克巳さんは「継続できない人たちの声なき声が一番怖い。黙ってやめていく。だけどそこには何かこちらの問題がある。そういう場合は丁重にご意見を聞く。改善しなければ、同じ理由でやめている人が何人いるかわからない」と述べています。
●分析と評価
企業がプロジェクトの評価を欠かさないように、ファンドレイジング・サイクルにも、定期的な「分析・評価」が必要です。どこがうまくいったのか、うまくいかなかったのかを把握せずして、内容の向上は図れません。
ただ、「分析・評価」というと、私たちは最終的な「結果」の部分ばかりを見てしまいがちです。寄付者数はどれだけ増加したか、寄付の単価はどれだけ上がったか、寄付総額はどれだけ上がったかばかりに、気を取られてしまいます。
もちろんこの3つの要素は、もっとも大事なものです。この3つをきちんと意識せずにファンドレイジングをしても、いつまでたってもよいものにはなりません。
しかし、この3つだけ「分析・評価」すればよいのか、というと決してそうではありません。結果に至る「過程」までを含めて、きちんと「評価・分析」しなければ、意味を成しません。自分たちのNPOのファンドレイジング・サイクルにおいて、どんな情報が有益なのか、その情報を用いて何を改善したいのかを意識して取り組むことが大切です。
●数値化
ファンドレイジングの「分析・評価」において重要なのが、数値化です。
どれだけの資源(ヒト、モノ、カネ)を投入し、どれだけの成果を得たかを数字にすることです。これによって、過去や他の方法との比較が可能になり、ファンドレイジング・サイクルの改善に役立ちます。
関係開拓のためにイベントを開催したのなら、どれくらいの人が個人情報を提供してくれたのか。実際の寄付行動にまで至った人の割合はどれくらいだったのか、などが数値化のポイントです。数値化したら過去の同種イベントや、他の開拓ツールと効果を比較検証しましょう。
数値化して「分析・評価」するという考え方は、寄付者個人を対象にしても有効です。その人の行動を数値化することで、考え方や嗜好を詳しく知ることができます。 どんなイベントに関心を示す/示さないのか? どんな寄付製品に、どれくらい寄付してくれたのか?といった情報を、ファンドレイジング・サイクルの改善に役立てましょう。
「分析・評価」は、検証のためだけのプロセスではありません。数値化された指標が満足できるものであれば、かかわるスタッフのモチベーションが上がりますし、組織としてのまとまりも生まれます。
あらかじめ「数値目標」を決めておき、それを共有しておけば、達成したときの感動も大きくなります。期限を区切って数値目標を設定し、達成されたときに喜びを分かち合いましょう。