認定NPO法人北九州ホームレス支援機構 原山映子さん
認定NPO法人北九州ホームレス支援機構 原山映子さん
北九州ホームレス支援機構は「①ひとりの路上死も出さない②ひとりでも多く、一日でも早く、路上からの脱出を③ホームレスを生まない社会の創造」を目指して活動中です。
1988年、野宿労働者の実態調査と継続的支援のために、前身である「北九州越冬実行委員会」が発足しました。2000年、NPO法人格取得とともにこれまでの実態調査から明らかになったホームレスの自立に必要なことをNPOの事業に取り入れ、社員会費1万円、賛助会費5千円を設定しました。
炊き出しでお弁当を配布することからホームレスとの出会い、続いて自立支援が始まります。高齢者を対象とした「自立支援住宅」をNPO独自で運営し、就労層を対象とした「ホームレス自立支援センター北九州」は北九州市との協働により運営しています。それぞれホームレスの方が自立し地域生活へ移行するための中間施設として運用されています。
また2005年には自立後の生活をサポートする「自立生活サポートセンター」を開設し、再ホームレス化と孤立化を防ぐ事業に取り組んでいます。
ひとつの支援団体が、炊き出しからアフターフォローにいたるまで、ホームレスに一貫してかかわるトータルサポートを行っていることによって、高い就職率、高い自立継続率が顕著であり、全国的に高い評価を得ています。
団体のホームページはこちら
http://www.h3.dion.ne.jp/~ettou/npo/top.htm
●1.具体的なファンドレイジングの取り組み
① 認定NPO法人は2004年、2006年、2008年に取得いたしました。2008年は5年間の継続です。すべての情報発信物に記載しています。
② 認定取得を待って山口県下関市にある古い旅館が寄付されました。20人規模の入居型施設への改修費2000万円は、NPO発足当初からのシェルター建設積立金とともに、新たにマスメディアを通じて募金を呼びかけました。2007年、寄付金を用いさせて頂き、自立援助ホーム「抱樸館下関」は開所に至りました。地域でのホームレス支援の拠点としてメディアに大きく取り上げられたので、その後もご寄付は続き、寄付者名簿の増加につながっています。
③ 継続した寄付者を確保するために、寄付者名簿にあるすべての方に会報やニュースレターによる活動報告と情報発信をしています。発送された月の振込寄付金は他の月の5倍以上に上ります。また、領収書のはがきには活動の一端を添えたお礼を印刷し、一言手書きをしています。
④ 市内50か所に店舗を持つドラッグストアのマッチング寄付。
ホームレス支援の医薬品を仕入れている(株)サンキュードラッグ様に寄付のお願いにあがった際、社長からマッチング寄付の提案を受け、店舗に活動紹介の三つ折りパンフと募金箱を置き、店頭募金額と同額を(株)サンキュードラッグ様が小切手で寄付してくださるようになりました。また、店頭の三つ折りパンフを読んだという市民からのご寄付も寄せられています。
⑤ 広く活動を知らせて資金を得る方法としてホームページを常に更新するとともに、マスメディアと時機にあった対応をすることは大切な要素です。当法人のホームレス自立支援の取り組みは高い評価を得て、多くのメディアの取材を受けており、2009年2月に放映されたNHKの「プロフェッショナル」や「クローズアップ現代」の放映後は全国から暖かいコメントとともにご寄付が寄せられています。
●2.困窮孤立者のための「地域拠点施設」建設計画のファンドレイジング
活動開始22年を迎えた今、当法人の支援によって地域での生活を取り戻したホームレスは900人以上になりますが、彼らが再びホームレス状態に陥らないための継続支援や、今般の経済悪化によって野宿になる恐れがある地域の困窮孤立者のために「地域拠点施設」建設計画を立て、1億円の建設費予算のうち5000万円を募金で調達することにしました。
2009年度の取り組みは
①ゆうちょ銀行の払込取扱票付き4つ折りパンフを40000枚印刷し、会報とともに2000箇所に発送し、正会員に各20部の割あてと理事長や会員の講演会での配布をおこなっています。
②市内のミュージシャンによる「ホームレスエイド・チャリティーコンサート」を今年から当法人が主催しました。ボランティアが運営し理事長のトークをプログラムの中に入れて募金要請をしました。
③街頭募金は毎年年末に3カ所2日間行っていましたが、今年度は夏に3回追加し、延べ8カ所ボランティア250人が参加して総額130万円を集めました。
④ホームレスエイド・チャリティーコンサート実行委員会が「オリジナルTシャツ」を作成販売してくださるに際し、当法人はイベント開催時に広報を行い販売促進に寄与しました。
⑤4つ折りパンフ配布による募金活動を進めるため、諸団体でのパンフ配布をお願いするひとつに、カトリック司教を訪問し、市内のカトリック教会8カ所の神父と面談の上、各教会で配布する了承を得ることもしています。
●3.課題
認定NPO制度は、寄付者が確定申告を行わなければ税の控除を受けられない、いわゆる申請主義であるため、寄付者自身の負担は避けられない。ファンドレイジングを推進するにあたって、寄付者により負担がないかたちで寄付をしていただく方法を見いだす必要がある。
また単発の寄付ではなく、定時に定額をクレジットなどで自動引き落とし決済するシステムがNPO側に負担なくできる方法を模索している。
企業の補助金は、その企業の企業イメージや業種により、助成相手がある程度限定される傾向があると思える。当法人はホームレス支援を主たる活動にしているが、企業イメージとしてはそぐわないと判断されていることがあるのではないかと感じている。格差社会と貧困がこれからの日本社会の課題となることを考えると、ただ単にお金を出してくれる企業ではなく、どの企業と協働して新しい社会を創造するか、こちらもよく考えなければならないと思う。
●4.教訓!
継続的な活動報告は寄付者への義務であるとともに安定した寄付につながり、活動を広報することは新しい支援者と寄付者の獲得につながる。