NPO法人リヴォルヴ学校教育研究所 小野村哲さん
NPO法人リヴォルヴ学校教育研究所 小野村哲さん
設立代表者は16年間公立中学校に勤務した後、2000年7月にかつての教え子らとともに「リヴォルヴ学校教育研究所」を設立しました。
私達のモットーは「対立から共育へ」であり、「大切な子ども達の教育が、人任せであってはいけない。責任を押し付け合うよりも、まずは小さな一歩を一緒に踏み出そう」との信念に基づき、以下の4つの柱を中心に活動を続けています。
(1) 学校になじめずにいる子ども達のためのライズ学園を運営。主に小中学生を対象に学習支援や各種体験教室などを行っている。
(2) 子どもたちのつまずきとその支援方法に関する講演に、全国各地からのべ3,000人超の参加者を集めている。
(3) 地域で支える豊かな学びを目指した「いばらきマナビィ・ネット」(2003・2004年度文部科学省委嘱事業)の運営に取り組んでいる。
(4) つまずきがちな子ども達への支援方法の研究に努め、独自教材の開発に取り組んでいる。
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●1.教材販売でファンドレイジングの道を拓く
不登校や学習につまずきがちな子どもたちのための支援は、より質の高いものであることが求められます。私たちが目指すのは、単にライズ学園の成功ではなく、難しいとされるフリースクール等の経営に1つのビジネス・プランを提案することにあります。
そこで私たちは、ライズ学園等における実践や研究の成果を教材としてまとめ、その販売によって得られる収益を活動経費に充てています。
これまでに「もじのかたちをとらえるためのひらがなれんしゅうちょう」、「ひらがな絵本1」、「よめるかけるABC英語れんしゅうちょう」、学習支援ソフト「ひらがなの森 ver.1.0」、同「英語の森 ver.1.0」の計5商品を開発。全国各地の学校や塾等で採用されています。
教材の頒布は、当法人のホームページや書店、委託業者(Amazon.co.jp等)を通じて行い、「ひらがなれんしゅうちょう」は、すでに13,000部を販売しています。
●2.スタッフの研修と企業との協働
各教科担当はもちろん、美術担当スタッフが表紙のデザインを行うなど、教材はそのほとんどを自製しています。ここに至るには、毎年のように研究成果を学会発表するなど、研修に力を注いできたことが要因の1つとしてあげられます。
しかし当法人スタッフは教育や心理を専門とするものが中心で、学習支援ソフト制作に関しては、コンピュータに関する知識、技術の不足が泣き所となっていました。そこで助成金を活用し、学習ソフト製作技術を習得するための研修会に参加しました。
予算ゼロからスタートした当法人ですが、できることから積み上げ、研修を重ねたことで、外注すれば数百万円もかかる教材を自製できるようになりました。同時にこれらの教材をライズ学園の授業でも活用することで、支援活動の質を高めることもできました。
最後になりましたが、製本・印刷や販売等においては、活動趣旨を理解いただいた企業との協働も欠かせない要因としてあげられます。
●3.今後の課題
当法人が開発する教材の最大の特長は、日々子どもたちと接し、彼らから様々なヒントを与えられながら製作したものであることです。改善すべき点をまだ多く残していることも確かですが、何より目の前の子どもたちの伸びがその質の高さを証明してくれていると自負しています。
しかしこれまでは開発にばかり重きを置き、広報が不足しがちでした。その一因は、これを担当できるスタッフの不足です。商品そのものの広報ばかりではありません。私たちの教材は、諸科学の最新の研究成果を盛り込んだものですが、その違いや意図が十分に理解されていないということもありました。同じ教材を用いても、製作意図を十分に理解しているか否かによって必然的に成果にも差が出ます。
販売数は確実に伸びてはいますが、今後は上記を踏まえた上で、研修会の開催や商品そのものの広報、そして新たな販路の開発など企業との協働も推し進めていく必要があると痛感しています。
●4.継続的な活動をするために
私たちの活動が、助成金や寄付等によって支えられてきたことも確かです。一例として、つくば市からはライズ学園の活動に対し、毎年、補助金をいただいています。
しかしこれに頼るだけでは、スタッフを常勤化することは困難です。常勤化できなければ研修も思うに任せず、研修が不足すれば活動の質を高めることも教材製作もできません。経営の苦しさは変わりませんが、スタッフに交通費さえ払えずにいた頃に、ライズ学園の生徒から「ここって、いつつぶれるかわからないの」と言われたことは忘れられません。彼らに不安を与えたことは、組織としての責任だと感じています。
たとえNPOであっても、質の高い活動を継続させるには安定した収入源を確保することが不可欠です。くだけた言い方をすれば、独自性を生かし「売れる商品」をつくることが必要であり、企業に対しても支援を求めるだけでなく、こちらから提供できるものを生み出す努力が必要だと思います。