東京コミュニティパワーバンク(東京CPB) 坪井眞里さん
東京コミュニティパワーバンク(東京CPB) 坪井眞里さん
NPOやワーカーズ・コレクティブ(主に女性が中心で経営も労働も対等に担う協同組合)など、市民事業をしている団体に活動資金を融資しています。2003年の設立からいままで、高齢者住宅建設、障がい者の働くレストラン、パン屋のオーブン購入、デイケアセンター改装などに融資してきました。
一般の金融機関がなかなかNPOなどに融資しないのが現状ですが、地域の課題を解決する非営利の市民事業を活性化し増やしていくことは、市民が主役の社会につながるはずと、このような金融のしくみを作りました。また、NPOの主な資金ニーズにつなぎ資金がありますが、このつなぎ融資も含め27団体に約1億円を融資しました。
団体内部で調達されることの多かった資金を、東京CPBから借りることで経営力を高めていただきたいと提案しています。市民審査委員会によるきめこまかい審査や、半年後の見回り相談を助言の機会としています。
団体のホームページはこちら
http://www.h7.dion.ne.jp/~fund/
●1.ファンドレイジングの具体例(どのようにおカネがまわっているのか)
東京CPBは、社会を豊かにする市民事業に資金を届けるささやかなしくみですが、このしくみに参加するためには、まず会員になる必要があります。個人は一口5万円以上、団体は三口15万円以上出資して会員となり、会員同士のたすけあいとして事業資金を融資するしくみです。
2010年4月現在、個人会員は557名、団体数は38。原資9,600万円は100%市民出資です。NPOにとって大きなハードルである担保を取らず、低金利で融資しますが、融資希望の団体は最低でも希望金額の10分の1を出資します。
また、会員である出資者が東京CPBに期待するのはお金の見返りではなく豊かな社会の実現です。したがって東京CPBには融資した資金をきちんと回収し、市民のお金を地域で有効に生かす使命があります。
そのためにネットワークを駆使して情報収集し、ボランティアの審査委員たちが熱く厳しい目線で審査します。多くの団体で市民のお金は生かされ、雇用を生み出しています。
●2.組織としての取組みの成功例
東京CPBは、生活クラブ生協から生まれた女性の社会起業家たちワーカーズ・コレクティブのネットワーク、地域福祉団体、環境団体、女性議員のネットワークが一丸となり、必要にせまられて作りました。
28年前に生まれたワーカーズ・コレクティブが、女性中心でいまだに法人格がないことから銀行からお金を借りられず、苦労していたからです。誰も貸さないなら私たちが貸しましょうと立ち上がりましたが、そのためには原資が必要です。「銀行に預けたお金はどう運用されるか知っていますか?あなたのお金を環境破壊や貧困のためにではなく、しあわせな社会のために生かしましょう。」と知り合いに声をかけ、都内50ヶ所で説明会を開き出資者を集めました。
またこのネットワークを生かし、都内の中間支援組織やNPOを訪問して融資先を開拓し、少しずつ活動を広げてきました。融資先は、半分以上が、もとのネットワーク以外の団体です。
●3.残された組織的な課題
東京CPBのような非営利の市民金融はNPOバンクと呼ばれ、現在全国に12が活動しています。多くが市民出資を元に市民や団体に融資していますが、貸金業者として登録していることから法改正の波にのまれることになりました。
深刻な多重債務が社会的問題となり、悪質な貸金業者を規制するのが目的ですが、同時に非営利で相互扶助のNPOバンクも規制されてしまいます。それぞれの事情で自発的に生まれた全国のNPOバンクは、貸金業法の前は金融取引法と、予期せぬ法規制に対応するため急速に連携を組むことになりました。
法規制は大きな課題ですが、ネットワークが更に広がり、わくわくする副産物がたくさん生まれていて、将来的にNPOバンクがきちんと社会に位置づくような非営利金融法の制定を求めて運動しています。
●4.教訓
ピンチはチャンス!