その他 : 「新しい公共」宣言、NPO・寄付税制拡充へ
5月14日、政府は「新しい公共」円卓会議の第7回会合を開催。円卓会議の報告となる「『新しい公共』宣言」の取りまとめに向け、宣言案を基に議論を行った。税制部分では、認定NPO法人制度改正や寄附税制拡充が盛り込まれる見込みだ。
「新しい公共」円卓会議は、「『新しい公共』という考え方やその展望を市民、企業、行政などに広く浸透させるとともに、これからの日本社会の目指すべき方向性やそれを実現させる制度・政策の在り方などについて議論を行うこと」を目的に設置、1月27日に初会合を開催した。これまでに6回の会合を行っている。
メンバーは座長の金子郁容氏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)をはじめ、経営者や研究者、NPO/NGO関係者など19名。内閣総理大臣や副総理、内閣官房長官、内閣府特命担当大臣(「新しい公共」担当)が出席する。
参考ニュース「政府の『新しい公共』円卓会議が発足」(2010/01/29)
/2010/01/その他-政府の「新しい公共」円卓会議が発足/
参考ニュース「新しい公共円卓会議、NPO・寄付税制を議論」(2010/03/08)
/2010/03/その他-新しい公共円卓会議、npo・寄付税制を議論/
参考ニュース「『新しい公共』円卓会議、資金面の支援を議論」(2010/03/24)
/2010/03/その他-「新しい公共」円卓会議、資金面の支援/
参考ニュース「鳩山首相、寄付金の50%税額控除を提案」(2010/04/21)
/2010/04/その他-鳩山首相、寄付金の50%税額控除を提/
今回は今までの議論をまとめる形で、金子座長により提出された「『新しい公共』宣言」案に関して、各委員との意見交換や修正などが行われた。それに先立ち、円卓会議での提案に対する政府側の対応について、報告もあった。
政府側の対応に関する詳細は、「新しい公共」円卓会議サイト内、下記ページ(PDF)を参照。
http://www5.cao.go.jp/entaku/shiryou/22n7kai/pdf/100514_03.pdf
宣言は、中心となる宣言文と具体的な事例紹介で構成。19名の円卓会議メンバーをはじめ、総理や担当大臣・副大臣・政務官ら政府関係者も署名を行うという新しい形式となる見込み。
宣言案要点では、「『新しい公共』とは、『支え合いと活気のある社会』を作るための当事者たちの『協働の場』である。」と整理。「『新しい公共』の主役は国民である。」として、国民の当事者意識と自発的な参加が重要とした。企業も重要な担い手とした。
「新しい公共」の実現には、「公共への政府の関わり方」と「政府と国民の関係のあり方」を大胆に見直すことが必要と指摘。政府に対して、制度改革や運用方法見直しにより、「これまで政府が独占してきた領域を『新しい公共』に開き、『国民が決める社会』を作る。」ことを求めている。
具体的な政策としては、認定NPO法人制度改正や寄附税制の拡充、「特区」の活用、社会的活動を担う人材育成と教育の充実、新しい発想による民間提案型業務委託や市民参加型公共事業等の仕組みの創設、社会的責任投資の推進などが挙げられている。
また、今後の体制については、「新しい公共」について引き続き議論をする場を設ける方向性が示されている。会合の中で鳩山首相は「この夏には新たな会議体を作り、これからがスタートだという思いで発展させていきたいと思う。」と述べ、円卓会議の後継となる会議体の創設に意欲を見せた。
宣言への署名は、6月上旬に予定されている次回の会合にて行われる見込み。
「『新しい公共』円卓会議」については、内閣府サイト内、下記ページを参照。会議資料の入手や会議動画の閲覧が可能。
http://www5.cao.go.jp/entaku/index.html
「新しい公共」宣言(案)の要点は下記の通り。
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「新しい公共」宣言(案) 要点 (「新しい公共」円卓会議による提案)
◇ 「新しい公共」とは、「支え合いと活気のある社会」を作るための当事者たちの「協働の場」である。そこでは、「国民、市民団体や地域組織」、「企業」、「政府」等が、一定のルールとそれぞれの役割をもって当事者として参加し、協働する。(次ページの「イメージ図」参照。)
◇ 「新しい公共」の主役は国民である。国民自身が、当事者として、自分たちこそが社会を作る主体であるという気持ちを新たにし、ひとりひとりが日常的な場面でお互いを気遣い、人の役に立ちたいという気持ちで、それぞれができることをすることが「新しい公共」の基本だ。ひとりでは到底解決できないような大きな社会問題は多いが、大きな問題だからこそ、ひとりひとりの気持ちと、身近かなことを自分から進んで行動することが大事なのだ。
◇ 企業は「新しい公共」の重要な担い手である。企業は、市場を通じて社会に受入れられ、社会に貢献することで、その対価として利潤をあげる存在。本業の社会性や社会貢献活動への多様な評価を積極的に受けることを推進してもらいたい。NPOや社会的課題を解決するためにビジネスの手法を適用して活動する事業体が継続的な活動を行える仕組みを作る事は、よりよい社会を構築するための多様性を確保するという視点から重要である。
◇ 「新しい公共」を実現するには、公共への政府の関わり方、政府と国民の関係のあり方を大胆に見直すことが必要である。政府は、思い切った制度改革や運用方法の見直し等を通じて、これまで政府が独占してきた領域を「新しい公共」に開き、「国民が決める社会」を作る。
・税額控除の導入、認定NPOの「仮認定」とPST 基準の見直し、みなし寄附限度額の引き上げ等を可能にする税制改革を速やかに進め、特に、円卓会議における総理からの指示(税額控除の割合、実施時期、税額控除の対象法人)を踏まえて検討を進める事を強く期待する。
・関係各省庁の壁を乗り越え、「特区」などを活用して社会イノベーションを促進する体制を政府一体となって作ること、および、政府、企業、NPO等が共同で社会的活動を担う人材育成と教育の充実を進めることが重要。
・国や自治体等の業務実施にかかわる市民セクター等との関係の再編成について、依存型の補助金や下請け型の業務委託ではなく、新しい発想による民間提案型の業務委託、市民参加型の公共事業等の仕組みを創設することが必要。
・公的年金の投資方針の開示の制度化による社会的責任投資の推進をすることが望まれる。
◇ 「新しい公共」が作り出す社会は、すべての人に居場所と出番があり、みなが人に役立つことの喜びを大切にする社会であるとともに、その中から、さまざまな新しいサービス市場が興り、活発な経済活動が展開され、その果実が社会に適正に戻ってくる事で、ひとびとの生活が潤うという、よい循環の中で発展する社会である。さらに、つながりの中で新しい発想による社会のイノベーションが起こり、「新しい成長」が可能となるであろう。
◇ なお、今後の政府等の対応などをフォローアップし、また、「新しい公共」について引き続き議論をする場を設けることが望ましいと考える。
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