その他 : 政府、新成長戦略で税制改正などNPO支援
6月18日、政府は「新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ~」を閣議決定し、公表した。NPOが成長に向けた主体として期待されており、「新しい公共」が国家戦略プロジェクトに設定。工程表には認定NPO法人制度改正や寄付税制拡充の平成23年度税制改正での実現が明記された。
今回発表された新成長戦略の骨格は、鳩山政権下の平成21年(2009年)12月30日に閣議決定されている「新成長戦略(基本方針~輝きのある日本へ~」がベースとなっている。
菅政権発足後、鳩山政権下で推進された「新しい公共」やNPO・寄付税制改正がどう扱われていくのか注目がされていたが、今回の新成長戦略では、NPOが成長に向けた主体として期待されており、各所に頻出。また、21ある国家戦略プロジェクトの一つとして「新しい公共」が取り上げられた。
また、政策・事業の優先順位付けにおける基準として、「国民参加基準」の設定もうたわれている。
具体的な政策としても、認定NPO法人制度改正や寄付税制拡充が盛り込まれており、スケジュールを記した工程表では平成23年度税制改正での実現が明記された。「新しい公共」円卓会議の提案の実現や社会的責任円卓会議を通じた協働の推進、NPOを支える金融制度の拡充なども盛り込まれている。
工程表には、具体的な成果目標も設定されており、「新しい公共」への参加割合の拡大を26%(2010年)から5割(2020年)へ高めることに加え、国民の寄付をGDP比で5~10倍にすることも掲げられた。
※約1千億円(2009年)GDP比では0.02%
⇒6.5千億円~1兆3千億円(2020年)GDP比では0.1%~0.2%
全体として、鳩山政権下での取り組みを引き継いでおり、実現に向けた弾みとなるもので歓迎したい。
今回発表された「新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ~」や昨年の「新成長戦略(基本方針~輝きのある日本へ~」などは首相官邸サイト内、下記ページを参照。
http://www.kantei.go.jp/jp/sinseichousenryaku/
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新成長戦略 ~「元気な日本」復活のシナリオ~
NPO関連部分抜粋
第2章 新たな成長戦略の基本方針-経済・財政・社会保障の一体的建て直し-
日本経済の成長力と政策対応の基本的考え方
(3)資金循環面からの制約
(ii)金融・資本市場の健全な発展とリスク・マネーの供給
円滑な資金循環を確保するためには、上記のような対応と同時に、国際的な動向も踏まえつつ、金融・資本市場の健全な発展を支える規制・制度の改革を進める必要がある。また、国際的な金融危機等に機動的に対応するため国際協調体制の強化を進める必要がある。
さらに、日本経済の成長を支える資金、とりわけ、リスクの高い投資や研究開発等のためのリスク・マネーの供給、さらには、起業や新規参入を行う企業、社会的企業、NPO 等に対する資金供給を確保することが不可欠である。リスク・マネーの供給やNPO 等への資金供給を円滑化するため、規制・制度や税制の改革を進める。また、こうした分野における政策金融の役割は重要である。
以上のような取組を通じ、資金循環面から成長が制約されることのないよう最大限の努力を行う。
「新成長戦略」のマクロ経済目標
(前略)国民の満足度や幸福度には、所得などの経済的要素だけではなく家族や社会との関わり合いなどの要素も大きな影響を持つ。「新しい公共」の考え方の下、全ての国民に「居場所」と「出番」が確保され、市民や企業、NPO など様々な主体が「公(おおやけ)」に参画する社会を再構築することは重要な課題である。政府は、マクロ経済目標の実現に向け全力を尽くすとともに、官では行うことが困難な、国民の多様なニーズにきめ細かく応えるサービスを無駄のない形で市民、企業、NPO 等が提供できる社会の構築に向け、国民各層による取組を支える。
政策の優先順位の判断基準
(国民参加基準)
行政が独占してきた「公」を企業、NPO 等に開き、国民が積極的に公に参画することを重視する。このため、行政による直轄事業を見直し、企業、NPO 等の参画を認める事業、民間資金等活用事業や公共サービス改革を進める事業を重視する。また、何が必要かの選択について、国民が積極的に意見を述べる機会の拡大を目指す。
第3章 7つの戦略分野の基本方針と目標とする成果
成長を支えるプラットフォーム
(6)雇用・人材戦略 ~「出番」と「居場所」のある国・日本~
(国民参加と「新しい公共」の支援)
国民すべてが意欲と能力に応じ労働市場やさまざまな社会活動に参加できる社会(「出番」と「居場所」)を実現し、成長力を高めていくことに基本を置く。
このため、国民各層の就業率向上のために政策を総動員し、労働力人口の減少を跳ね返す。すなわち、若者・女性・高齢者・障がい者の就業率向上のための政策目標を設定し、そのために、就労阻害要因となっている制度・慣行の是正、保育サービスなど就労環境の整備等に2年間で集中的に取り組む。
また、官だけでなく、市民、NPO、企業などが積極的に公共的な財・サービスの提供主体となり、教育や子育て、まちづくり、介護や福祉などの身近な分野において、共助の精神で活動する「新しい公共」を支援する。
(地域雇用創造と「ディーセント・ワーク」の実現)
国民の新たな参加と活躍が期待される雇用の場の確保のために、雇用の「量的拡大」を図る。このため、成長分野を中心に、地域に根ざした雇用創造を推進する。また、「新しい公共」の担い手育成の観点から、NPOや社会起業家など「社会的企業」が主導する「地域社会雇用創造」を推進する。
《21 世紀日本の復活に向けた21 の国家戦略プロジェクト》
VI.雇用・人材分野における国家戦略プロジェクト
20.新しい公共
「新しい公共」が目指すのは、一人ひとりに居場所と出番があり、人に役立つ幸せを大切にする社会である。そこでは、国民の多様なニーズにきめ細かく応えるサービスを、市民、企業、NPO 等がムダのない形で提供することで、活発な経済活動が展開され、その果実が社会や生活に還元される。「新しい公共」を通じて、このような新しい成長を可能にする。
政府は、大胆な制度改革や仕組みの見直し等を通じ、これまで官が独占してきた領域を「公(おおやけ)」に開く。このため、「「新しい公共」円卓会議」や「社会的責任に関する円卓会議」の提案等を踏まえ、市民公益税制の具体的制度設計やNPO 等を支える小規模金融制度の見直し等、国民が支える公共の構築に向けた取組を着実に実施・推進する。また、新しい成長及び幸福度について調査研究を推進する。
官が独占していた領域を「公」に開き、ともに支え合う仕組みを構築することを通じ、「新しい公共」への国民参加割合を26%(「平成21 年度国民生活選好度調査」による)から約5割に拡大する。
第4章 新しい成長と政策実現の確保
新しい成長
(中略)また、こうした活動の可能性を支援する「新しい公共」すなわち、従来の行政機関ではなく、地域の住民が、教育や子育て、まちづくり、防犯・防災、医療・福祉、消費者保護などに共助の精神で参加する公共的な活動を、応援する。
「新成長戦略」の政策実現の確保
(1)成長戦略実行計画(工程表)の提示
21 の国家戦略プロジェクトをはじめ7つの戦略分野の施策を計画倒れに終わらせずに確実に実現するため、別表の成長戦略実行計画(工程表)に実施スケジュールを示す。
(2)予算編成や税制改革の優先順位付け
予算編成や税制改革に当たっては、無駄遣いの根絶を強力に進めるとともに、「新成長戦略」を着実に推進する。「財政運営戦略」との整合性を保ちつつ、第2章にある経済成長や雇用創出への寄与度等も基準とした優先順位付けを行う。
(3)施策執行の進捗管理
成長戦略実行計画に示された各施策については、国家戦略室を中心に、効果的・効率的な執行を図る観点から関係者に進捗状況の報告を求め、必要に応じ改善措置を講じさせるなど、PDCA サイクルに立脚した進捗管理を徹底する。
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