その他 : 社会医療法人、創設2年で85法人へ増加
6月21日、厚生労働省は平成22年(2010年)3月末時点の医療法人数集計結果を公表した。これによると、制度スタートから2年を迎えた社会医療法人の数が85法人と、昨年から倍増した。
従来、医療法人には、医療法人(財団または社団)、特定医療法人、特別医療法人の3類型が存在した。
医療法人の設立は、医療法に基づく都道府県知事の認可。特定医療法人は租税特別措置法に基づく国税庁長官の承認で、公益法人並み法人税軽減税率が適用される。特別医療法人は、医療法に基づく都道府県知事の認可で、収益業務の実施が可能になる。
非営利性の徹底や効率性・透明性の向上などを目指した、一連の医療法人制度改革に伴い、特定医療法人・特別医療法人の後継として、社会医療法人制度が新たに設けられた。
参考ニュース「政府・与党、医療法人に公益類型を創設」(2005/12/09)
/2005/12/行政-政府・与党、医療法人に公益類型を創設/
参考ニュース「医療法人の非営利性に関するアンケート」(2005/02/26)
/2005/02/行政-医療法人の非営利性に関するアンケート/
社会医療法人制度の狙いは「へき地医療や小児救急医療など地域で特に必要な医療(救急医療等確保事業)の提供を担う医療法人を新たに社会医療法人として位置付け、救急医療等確保事業に社会医療法人を積極的に参加させることにより、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図る。」こと。
苦しい経営を余儀なくされている公立病院の現状を踏まえ、「官から民へ」の考えの下、へき地や小児医療、救急医療など公益性の高い分野に取り組む民間医療法人(病院)の経営を支援することを目指している。
医療法人のうち、一定の要件に該当するものとして、都道府県知事(2以上の都道府県の区域において施設を開設する医療法人については厚生労働大臣)の認定を受けたものを「社会医療法人」として認定。一般の医療法人に求められる財産目録・貸借対照表・損益計算書・事業報告書・監事の監査報告書に加え、公認会計士等の監査報告(一定規模以上の法人)の提出が必要。一般の医療法人の場合は閲覧できるのは、債権者や社員・評議員だが、社会医療法人は情報公開が強化されており、一般の閲覧も可能だ。
優遇措置として、収益業務の実施、社会医療法人債の発行、附帯業務として第一種社会福祉事業の一部の実施が可能になる。
また、税制面では医療保健業(本来業務)の法人税非課税や収益業務への公益法人並み軽減税率(22%)適用、社会福祉法人並みのみなし寄附金制度(所得金額の50%上限)、固定資産税・都市計画税・不動産取得税も非課税となるなど税制優遇がある。
※社会医療法人への寄付金控除については、厚労省が要望しているものの、まだ実現していない。
特定非営利活動法人(NPO法人)制度におけるNPO法人-認定NPO法人の関係によく似た制度設計となっている。
今回、発表された「平成22年3月31日付医療法人数の推移について」によると、全体の医療法人の数は45989法人。その内、医療法人財団が393法人、一方、医療法人社団は45596法人と圧倒的に多い。
社会医療法人の数は85法人(内、医療法人財団:13法人、医療法人社団:72法人)。昨年3月末の36法人から2倍以上に増加した。
しかし、未だ特定医療法人が382法人、特別医療法人が54法人存在することから、社会医療法人への移行が円滑に進んでいるとは言い難い状況となっている。
新公益法人制度と同様に、新医療法人制度についても、寄付税制対象化など今後の動向に注目していきたい。
今回発表された「平成22年3月31日付医療法人数の推移について」は厚生労働省サイト内、下記ページを参照。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/midashi.html
医療法人制度改革については、厚生労働省の下記資料(PDFファイル)などが参考になる。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/pdf/ryouyou01f.pdf