その他 : 子ども・若者ビジョン、社会形成参加を支援
7月23日、内閣府は「『子ども・若者ビジョン』~子ども・若者の成長を応援し、一人ひとりを包摂する社会を目指して~」をとりまとめ、発表した。子ども・若者育成推進支援法に基づく大綱となるもので、NPO・寄付税制改正による支援や社会形成・社会参加に関する教育(シティズンシップ教育)の推進なども盛り込まれている。
旧自公政権下では、平成15年(2003年)に「青少年育成推進本部」が閣議決定により内閣府内に設置された。青少年育成推進本部は、同年12月に、1)現在の生活の充実と将来への成長の両面を支援 / 2)大人社会の見直しと青少年の適応の両方が必要 / 3)すべての組織及び個人の取組が必要の3点を基本理念とする(旧)青少年育成施策大綱を策定。5年後の平成20年(2008年)12月には、新しい青少年育成施策大綱を策定していた。
その後、政府は平成21年(2009年)3月に、いわゆるニート(無就業・無就学)や引きこもりの若者の自立支援を中心とした「青少年総合対策推進法案」を国会に提出。内閣府内への総理大臣を本部長とする「青少年総合対策推進本部」の設置や、自治体によるワンストップ型「青少年総合相談センター」の創設、自治体とNPOなど関係機関による「青少年自立支援地域協議会」の設置などが盛り込まれていた。
参考ニュース「NPOに期待、青少年総合対策推進法案」(2009/03/9)
/2009/03/その他-npoに期待、青少年総合対策推進法案/
同法案は与野党間の修正協議の結果、「子ども・若者育成支援推進法」への法律名称変更や「良好な家庭的環境で生活することの重要性」の基本理念への追加、支援対象となる子ども・若者の範囲拡大(年齢を問わず対象に)、原因究明など調査研究の実施、地方公共団体による「子ども・若者指定支援機関」の指定などの修正が行われた。
※参考:例えば、佐賀県ではNPO法人スチューデント・サポート・フェイスが子ども・若者指定支援機関に指定され、「佐賀県子ども・若者総合相談センター」も運営している。
子ども・若者育成推進支援法は平成22年(2010年)4月から施行。同法に基づき、内閣総理大臣を本部長とする子ども・若者育成支援推進本部が内閣府内に設置され、子ども・若者育成支援推進大綱に関する議論がスタート。
同本部は子ども・若者育成支援に関するワーキングチームを設置して大綱について検討。4月に実施したパブリックコメントを経て、7月23日に「子ども・若者ビジョン~子ども・若者の成長を応援し、一人ひとりを包摂する社会を目指して~」として大綱をまとめ、発表した。
子ども・若者ビジョンのポイントは子ども・若者を「社会を構成する重要な『主体』として尊重」し、子ども・若者の全体とその中でも困難を抱える者双方を支援する方向性を示した点。また、注目すべき点は理念として「自己を確立し社会の能動的形成者となるための支援」を掲げていること。
具体的な施策の方向性は、すべての子ども・若者向けが下記4点。
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(1)自己形成支援
・日常生活能力の習得
・多様な活動機会の提供
・学力の向上
・大学教育等の充実
・経済的支援の充実
(2)社会形成・社会参加支援
・社会形成への参画支援 - 社会形成・社会参加に関する教育(シティズンシップ教育)の推進/子ども・若者の意見表明機会の確保
・社会参加の促進 - ボランティア活動、国際交流活動 等
(3)健康と安心の確保
・健康の確保・増進
・相談体制の充実
(4)若者の職業的自立、就労等支援
・就業能力・意欲の習得
・就労等支援の充実
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① 社会形成への参画支援
(社会形成・社会参加に関する教育(シティズンシップ教育)の推進)
社会の一員として自立し、権利と義務の行使により、社会に積極的に関わろうとする態度等を身に付けるため、社会形成・社会参加に関する教育(シティズンシップ教育)を推進します。
具体的には、民主政治や政治参加、法律や経済の仕組み、労働者の権利や義務、消費に関する問題など、政治的教養を豊かにし勤労観・職業観を形成する教育に取り組みます。
(子ども・若者の意見表明機会の確保)
政策形成過程への参画促進のため、各種審議会や懇談会等における委員の公募制の活用、インターネット等を活用した意見の公募等により、子ども・若者の意見表明機会の確保を図ります。
子ども・若者育成支援施策や世代間合意が不可欠である分野の施策については、子ども・若者の意見も積極的かつ適切に反映されるよう、各種審議会、懇談会等の委員構成に配慮します。
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特に注目したいのは、「(2)社会形成・社会参加支援」だ。シティズンシップ教育推進や意見表明機会確保、ボランティア活動などが例示されている。
シティズンシップ教育については、日本における実践や研究が多くはないが、以下のページが参考になる。
経済産業省「シティズンシップ教育と経済社会での人々の活躍についての研究会」
http://www.meti.go.jp/press/20060330003/20060330003.html
同研究会「シティズンシップ教育宣言」
http://www.meti.go.jp/press/20060330003/citizenship-sengen-set.pdf
シティズンシップ教育推進ネット「シティズンシップ教育とは」
http://www.citizenship.jp/citizenshipedu/
NPO・市民活動や社会貢献活動の活性化、寄付文化の醸成、市民の社会参画推進などに向けて、シティズンシップ教育推進などの方向性は重要と言えるだろう。
困難を有する子ども・若者とその家族向けが下記2点。
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(1)困難な状況ごとの取組
①ニート、ひきこもり、不登校の子ども・若者への支援等
②障害のある子ども・若者の支援
③非行・犯罪に陥った子ども・若者の支援等
④子どもの貧困問題への対応
⑤困難を有する子ども・若者の居場所づくり
⑥外国人等特に配慮が必要な子ども・若者の支援
(2)子ども・若者の被害防止・保護
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何らかの困難を抱える子ども・若者に対して、それぞれ対応する施策が盛り込まれている。
また、社会全体で支えるための環境整備として、「多様な主体による取組の推進」が掲げられ、「新しい公共」による活動等の支援の中で、「新しい公共」円卓会議での提案を踏まえた寄付金税額控除制度の導入や認定基準見直し、地方独自の税制優遇NPO法人指定制度の導入などNPO・寄付税制改正も盛り込まれている。
参考ニュース「「新しい公共」宣言公表、鳩山首相が署名」(2010/06/14)
/2010/06/その他-「新しい公共」宣言公表、鳩山首相が署/
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(「新しい公共」による子ども・若者を支える活動等の支援)
「新しい公共」円卓会議における提案を踏まえ、寄附を行った際の所得税の税額控除制度の導入、認定NPO法人の認定基準の見直し、地方公共団体において寄附金税額控除の対象とするNPO法人を指定できる仕組みの導入等の税制の整備や、社会的活動を担う人材の育成等を行うとともに、地域における子ども・若者を支える活動やそのネットワークづくりを支援します。
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今回発表された「『子ども・若者ビジョン』~子ども・若者の成長を応援し、一人ひとりを包摂する社会を目指して~」の全文など詳細は、内閣府サイト内、下記ページを参照。
http://www8.cao.go.jp/youth/wakugumi.html