その他 : 外務省、ODA改革としてNGOとの連携強化
6月29日、外務省は、ODAのあり方に関する検討 最終とりまとめとして「開かれた国益の増進―世界の人々とともに生き、平和と繁栄をつくるー」を発表した。NGOとの連携強化として人材交流や財政基盤強化支援、NPO税制改正の実現などが盛り込まれている。
政府開発援助(ODA)については、政府側だけでなく、NGO側も改革に向けて、フォーラムを開催するなど活発な提言を行ってきている。
参考ニュース「JANICら4団体、ODA改革フォーラムを開催」(2009/11/06)
/2009/11/その他-janicら4団体、oda改革フォーラムを開催/
参考ニュース「NGO、「国際協力省」創設を共同提言」(2006/02/23)
/2006/02/行政-ngo、「国際協力省」創設を共同提言/
昨年から政権を担う民主党は、衆議院総選挙のマニフェスト(政権公約)で「国際協力においてNGOの果たす積極的な役割を評価し、連携を強化する。」と掲げるなどNGOの役割を重視していた。
参考ニュース「衆院選マニフェスト、NPO関連政策を比較」(2009/08/19)
/2009/08/その他-衆院選マニフェスト、npo関連政策を比較/
こうした流れの中で今年2月に、「ODAに対する国民の共感が十分には得られていない」との認識の下、岡田克也外務大臣の指示で、ODAのあり方についての検討がスタート。
外務省内に設けたタスクフォースを中心に、(1)国際協力の理念・基本方針、(2)援助の効果的・効率的実施、(3)多様な関係者との連携、(4)国民の理解・支持の促進、(5)国際協力機構(JICA)の5つの論点を議論。今回発表された報告書は、その検討結果をまとめたもの。
冒頭、日本の開発協力の理念を「開かれた国益の増進 -世界の人々とともに生き、平和と繁栄をつくる-」として、ODAをこの中核として位置付けるとした。
次に、下記3つの重点分野を掲げ、戦略的・効果的な援助の実施していくと述べている。
(1)貧困削減 (ミレニアム開発目標(MDGs)達成への貢献)
(2)平和への投資
(3)持続的な経済成長の後押し
多様な関係者との連携も重要だとして、外務大臣下の「NGOアドバイザリー・グループ」の設置やNGO・外務省定期協議会の充実などNGOとの対話強化を打ち出している。
他にもNGOとの連携強化として、人材交流や財政基盤強化支援が盛り込まれている。NPO・寄付税制についても、
問題意識の中心でもあった国民の理解・共感・参加を重視。ODAに関する情報公開を強化したり、国民のボランティア参加を促進することなどが盛り込まれている。
構成は以下の通り。
1.政府開発援助(ODA)を巡る現状の分析
2.ODA を見直した結果の概要
3.「開発協力」の概念とその中核としてのODA
4.開発協力の理念
5.開発協力の3本柱
6.戦略的・効果的な援助の実施
7.国際社会におけるリーダーシップの発揮
8.開発人材の育成
9. 国民の理解と支持の促進
10. 企画立案機能と実施体制(JICA)の強化
11. 開発資金の動員
12. 政府開発援助大綱(ODA大綱)の改定
今回発表された、ODAのあり方に関する検討 最終とりまとめ「開かれた国益の増進―世界の人々とともに生き、平和と繁栄をつくるー」の詳細は、外務省サイト内、下記ページを参照。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/arikata.html
NGO/NPOに関連する主な項目は以下の通り。
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●6.戦略的・効果的な援助の実施
6-5.多様な関係者との連携
官民の「人」、「知恵」、「資金」、「技術」を全て結集した「オール・ジャパン」の体制で開発協力に取り組むためには、我が国の民間企業やNGO をはじめとする関係者との一層の連携が不可欠である。そのため、多様な関係者との対話を強化し、より良い開発協力に活かす。また、実施面において具体的な協力を進め、日本の優れた技術・システムの活用や、NGO の能力強化と開発協力への国民参加の促進を図る。
6-5-1.日本の関係者との対話の拡大
① 開発協力フォーラム(仮称)の創設
経済界、NGO、有識者等のあらゆる関係者が参加する、開かれた対話の枠組みを新たに立ち上げる。東京のみならず、地方でも開催する(当面、東京・地方で年1~2回ずつの開催を目途としつつ、その時々の開発協力の課題等に応じて柔軟に開催する)。
② 経済界との対話の活性化
官民連携の更なる推進に向け、経済界との協力関係を強化するため、意見交換を活性化する。外務省政務レベルの参加の下での対話の機会を確保するとともに、関係省庁も含めた枠組みの下での対話を定期的に実施する。
③ NGO との対話の強化
開発協力について、現場の知見を有するNGO の意見を参考とするため、外務大臣の下にNGO アドバイザリー・グループを設置する(第1回実施済)。NGO・外務省定期協議会(全体会議、ODA 政策協議会、連携推進員会)については、特定のテーマを議論する分科会を必要に応じて設置するとともに、外務省政務レベルが対話に参加する機会を確保する。また、地方のNGO が自主的に開催するフォーラム等を積極的に支援するとともに、外務省との対話の場として活用する。
④ 途上国現地における対話の拡大
現地ODA タスクフォースのワークショップのスコープを拡大し、NGOや企業との対話ができる形で実施する(地域毎に集まるワークショップ開催も検討する)。
⑤ 研究機関の活用・連携
JICA 研究所が核となって開発協力に関係する我が国及び海外の大学や研究機関と連携し、最新の国際的援助潮流、開発ニーズ等を把握し、援助政策の立案及び援助実施段階での改善に活かす。
6-5-2.民間企業等との連携:日本の技術・システムの活用
② 民・民のマッチング支援
民間企業のCSR 活動やBOP ビジネスとNGO の連携を促進するため、官民連携に草の根・人間の安全保障無償資金協力を活用し、民間企業と連携するNGO による草の根・人間の安全保障無償資金協力案件用の優先枠を設定する。また、そのような連携を促進する他の援助手法の整備を検討する。
6-5-3.NGO との連携強化
① 外務省・JICA とNGO との人的往来の促進
NGO で経験(特に途上国の現場での経験)を積んだ人材を外務省・JICAにおいて採用し、その知見をODA 政策の企画立案や実施に活かすよう努める。具体的には、外務省・JICA においては、中途採用や任期付き職員の募集に当たりこの点に留意する。NGO から外務省・JICA への人材の流れのみならず、その逆方向の人材の流れについても実現できないか、その方策を検討していく。また、NGO に関して知見を有する外部人材を非常勤職員等の形で外務省・JICA に招来することで、常勤の職員としてではなくともその知見を活用できるよう工夫する。これらの方策により、NGO等外部の視点を我が国の開発協力政策の企画立案と実施の双方により反映させ、関係者との連携を深める。
② NGO の独自財政基盤強化支援
開発協力における「新しい公共」の担い手であるNGO に対して民間からの資金の流れが拡大するよう、基盤づくりを支援する。具体的施策については、NGO とも十分意見交換の上で企画・実施する(資金調達のためのアドバイザーによる指導やウェブサイト等を活用したNGO 事業の「見える化」等。)。
我が国における寄付文化の定着を図るため、NPO 税制に関する「新しい公共」円卓会議がとりまとめたNPO 税制改正案の実現を目指し、税制調査会における議論を注視しながら、国際協力NGO の意見が適切に反映されるよう関係省庁と連携する。
NGO から要望が寄せられている官民の合同資金による途上国の市民社会支援のための基金設立のアイデアについて、NGO と意見交換しつつ検討する。
③ NGO に対する支援の規模・内容の抜本的拡充
NGO の諸活動及び基盤強化を柔軟に支援できるよう外務省・JICA の既存の協力スキームについても予算規模・支援内容を拡充する(平成22 年度より運用開始)。
日本NGO 連携無償資金協力の予算を大幅に拡充する(29 億円→50 億円)。NGO の自己負担要件の撤廃、一般管理費の導入(一部事業)等の支援対象経費の拡充、複数年事業の導入(一部)、平和構築事業の支援対象分野への追加を行う。
JICA 草の根技術協力の支援期間、上限額を見直す(3年間、5千万円→5年間、1億円)。採択(内定)事業の調査・評価を拡充する。我が国のNGO によるアフガニスタン支援と連携強化(ジャパン・プラットフォーム加盟NGO の活動支援として、初年度15 億円規模の資金協力)。
④ NGO と連携した援助の手法を新たに創設
現地のプロジェクトにおけるPDCA サイクル(案件形成、実施、評価、改善)全体を通じ、NGO と共同して取り組むことができる新たな援助手法の創設を検討する。
●8.開発人材の育成
8-1.育成プログラムの充実による開発人材の裾野の拡大
③ NGO による人材育成への支援
NGO が開発協力に携わる人材の育成を行えるよう、NGO が採用するインターンの費用(研修指導経費等)を外務省が負担する「NGO インターン・プログラム」を導入し、20 のNGO に対し、各1名のインターンを10 ヶ月間受け入れ、育成するための費用を支援する。
●11.開発資金の動員
11-3.革新的資金調達
① 国際開発連帯税に対する取組
開発のための追加的財源として、国際開発連帯税を、内外の関心を喚起し、議論を深めながら中期的に促進する。
② 自発的貢献による資金調達
開発に関連した募金や寄付の制度について、国際開発連帯税と並ぶ資金調達手段となり得るか検討する。
既に行われている取組(災害発生時の国際機関・NGO を通じる募金等)をJICA のウェブサイト(HP)等で積極的に紹介する等、情報流通を促し、国民による自発的貢献を促進する。
③ その他の革新的資金調達メカニズムも検討
国際的に議論・実施されている税制以外の公的な取組を踏まえて検討する。
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