「第3回特定非営利活動法人の会計の明確化に関する研究会」報告
6月28日、霞が関の中央合同庁舎4号館にて、「第3回特定非営利活動法人の会計の明確化に関する研究会」が行われました。これは昨年7月に策定されたNPO法人会計基準に沿って「手引き」を改訂するために実施されています。会計処理をより分かりやすくかつ正確にすることで、NPO 全体への信頼性を高めていくことを目指しています。
参考ニュース「内閣府、「手引き」改訂へ研究会をスタート」
/2011/06/その他-内閣府、「手引き」改訂へ研究会をスタ/
今回話し合われた議題は以下の3つです。
1.特定非営利活動促進法(NPO法)の改正について
先月国会で可決されたNPO法の改正と、会計に関して国会議員が行った答弁についての報告がありました。
2.「特定非営利活動法人の会計の手引き」の作成意義と現代的課題について
98年のNPO法スタート当時に「特定非営利活動法人の会計の手引き(以下:旧手引き)」が作られましたが、内容が現状にそぐわなくなっています。新しい「手引き」の制作に役立てるため、「旧手引き」が作られた経緯と改善点について話し合われました。
3.新しい会計の手引きの在り方について。
NPO法人会計基準協議会の最終報告(2010.7.20発行)の様式例などを引用し、事務局が製作したラフ案をもとに、「手引き」に盛り込むアイディアなどについて話し合われました。寄付金やボランティアの扱い、「事業費」と「管理費」の線引きなど、NPOならではの点を明確にし、現場の混乱を招かないような配慮が必要となります。
次回日程:7月12日 9時30分~11時30分
場所:中央合同庁舎4号館1214号室で行われます。
傍聴者に配布された資料と議事の要約が内閣府NPOホームページ( https://www.npo-homepage.go.jp/data/report28.html )に掲載されていますので、ご参照ください。
当日は丁(シーズ)が研究会を傍聴し、その模様をTwitterで発信しました。
そのまとめは以下の通りです。
〈研究会Twitter中継まとめ〉
◯議題1 特定非営利活動促進法の改正について
・野村氏(内閣府)から、NPO法人会計基準が盛り込まれたNPO法改正について、審議経過の説明。
NPO法の一部を改正する法律のポイントは、認証制度の見直し部分では、1.活動分野の追加、2.所轄庁の変更 内閣府→都道府県 3.簡素化・柔軟化 4.信頼性の向上(収支計算書→活動計算書)。
財政基盤の確立のための措置として、認定NPO法人制度について1.新認定制度の創設、2.仮認定制度の導入、3.所要の監督規定の整備。
6月8日衆議院内閣委員会において、民主・自民・公明・共産・みんなの党の共同提案により、NPO法の一部を改正する法律案の起草案を成案とし、同委員会提出法律案として決定すべしとの動議が提出。同日(6月8日)民主・岸本議員より趣旨説明、公明・遠山清彦議員より質疑、玄葉国務大臣より内閣意見の聴取が行われたのち、起草案を成案として衆議院内閣委員会委員会提出法案とすることを全会一致で決定。
6月9日、衆議院本会議において全会一致で可決。同日参議院内閣委員会に付託。
6月14日、参議院内閣委員会において、荒井聰委員長から趣旨説明、牧山議員(民主)・岡田議員(自民)・谷合議員(公明)から政府(玄葉大臣及び逢坂総務大臣政務官)及び提出者(岸本議員)に対して質疑が行われた後、全会一致で可決。各派からの附帯決議も全会一致で可決参議院本会議において、全会一致で可決・成立。法律の施行は、来年4月1日となる。検討条項:施行後3年を目途に認定制度・「特定非営利活動法人」の名称等について検討。
・研究会に関わる会計関係の国会質疑について経過説明。
6月14日の内閣委員会にて「
岡田氏(自民)質問「国で統一的な会計基準の整備を行うのか、それとも民間で策定した会計基準を追認するのか尋ねたい」
逢坂総務大臣政務官の答弁「国が民間主導の取り組みに協力する中で、会計基準を明確化してはどうか。5月に内閣府に研究会を発足したが。民間がつくったNPO法人会計基準の成果をとり入れ、『手引き』を秋ごろまでに策定したい。」
谷合氏(公明)質問。「その他の事業に関する会計は特定非営利活動にかかる事業に関する会計から区分し、特別の会計として経理しなければならない。」とあるが、活動計算書においては当然区分するが、貸借対照表上まで区分することは求められないということでよいのか。」
逢坂総務大臣政務官答弁「貸借対照表を分離するというのは骨が折れる作業。今後、この法の目的がちゃんと達成されるよう、分離しなくてもよい方法があるのかどうかを、研究会での検討課題とし、方向性を探りたい。」
立法者として岸本周平議員(民主)よりコメント「その他事業から、特定非営利活動事業への繰入が適切に行われているということが活動計算書のフローの方でわかれば、貸借対照表でまで明らかにする必要は全くないと考えている。」
以上、報告終わり。
以下研究会でのやり取り
会田委員(慶應義塾大学総合政策学部教授):活動予算書については、特に説明はないという理解でよいのか。第十条の八。
野村氏:法律の要綱参照。3の(2)により、7月20日策定のNPO法人会計基準を踏まえて整備すべしと読める。
渡邊委員(東京都生活文化局都民生活部事業調整担当課長):経過措置についてご説明いただきたい。
野村氏:仮認定については、制度が定着するまで、多くの門戸を開き、定着させたいという趣旨が国会の質疑でも出た。
◯議題2 「特定非営利活動法人の会計の手引き」の作成意義と現代的課題について
川村座長(早稲田大学商学学術院教授):この研究会の趣旨は、新しい会計の「手引き」をとりまとめるということ。それには旧「手引き」が作られた経緯や意図についての理解が必要。今日は旧「手引き」の制作に関わった会田委員より説明してもらう時間を設けた。
・会田委員による解説
旧手引きについては、平成10年3月にNPO法が成立し12月に施行された当時、会計について法人が参考とするものがなく、規模の小さな市民団体にも参考にしてもらうために研究会ができた。当時、どういう法人があるのかということがよくわからず、実態に合うかどうかは疑問を感じながら作ったというのが正直なところ。だから今回こういう研究会ができてホッとしている。NPO法人には会計報告の作り方を知らない人がたくさんいることを踏まえると、旧「手引き」の内容が実態と合っていたのかどうか。
法で決まっているものに限定して作成し、費用と財源との対応が大事ということは重々承知しているが、収支計算書に加え、費用と財源との対応はできないということになった。収支計算をまず行って、正味財産の増減に影響を与えるものを折り込んだ。以前の公益法人会計基準ができた計算構造にそっくりと批判もされた。収支計算書において、収支を中心に正味財産の増減を貸借対照表との連携を図った。
非営利組織を巡る環境も変化した。民間の総力を結集してNPO法人会計基準が策定された。またNPO法の改正によってフロー情報が、「収支計算書」から「活動計算書」へ移行することになった。会計の目的はこれまでと変わり、法人の社会的インパクトを与えるものにしながら「手引き」を見直すべきだ。
認定・認証の主体が所轄庁(都道府県)に移ることも踏まえることも必要。
NPO法人制度の成熟化への対応として、1.簿記一巡の手続きの省略 2.計算書類の区分・表示方法 3.管理のための情報と開示すべき情報との 連携 4.規制内容の具体化と会計情報(「事業費」と「管理費」)5.表示科目の統一性と独自性のバランスを考えたい。
川村座長のコメント:貴重な報告に感謝。論点メモにも反映させていきたい。「事業費」と「管理費」の区分の問題。会計基準だけを考えると神経質にならなくてよいが、各種規制に使われると客観性が求められる。会計基準の内容を規制の面から補完するなど、「会計基準」と「手引き」の役割分担が合意形成されるべき。
会田委員:旧「手引き」をまとめた時にはそこまで考えていなかった。事業費・管理費の区別についてあまり議論された記憶がない。
瀧谷委員(特定非営利活動法人エーピーアイジャパン代表):事業費・管理費を明確に決めることが可能かという点も理論的にはあるが、NPO法には市民による監視ということで信頼性を担保するということがあり、その趣旨に従って、行政がどうフォローするかという順で議論したい。
川村座長:私もどちらかというと「規制」の面からとなりがちだが、バランスをとって議論を進めたいと考える。「手引き」は、法律や会計基準など、すでにあるルールをわかりやすく書くもの。今後の検討の中で、今の指摘の点を踏まえて検討していきたい。
野村氏:「手引き」はNPO法人会計基準に基づいて、計算書類の作成ポイントや、見方などを示すもの。ここでは、市民・特定非営利活動法人・所轄庁の三者にとって分かりやすい会計の在り方を検討したい。
◯議題3 新しい会計の手引きの在り方について。
・内閣府越尾氏から、川村座長が提出した研究会の資料3「今後の検討に当たって(https://www.npo-homepage.go.jp/pdf/report28_3_shiryo_3.pdf)」について説明。
「活動予算書について」を追加。また、NPO法人会計基準については継続して改正が行われるとあるが、「手引き」についても継続して見直しができるようにすることが必要でないかということを追加した。
総論として、1.NPO法における会計委に関する規定、2.新しい会計の手引きの必要性(旧手引きとの関係)、3.新しい手引きの位置付け・役割、4.「NPO法人会計基準」との関係がある。
NPO法における会計原則の規定と企業会計原則との関係について(資料5※https://www.npo-homepage.go.jp/pdf/report28_3_shiryo_5.pdf)について説明。
検討資料[抄](活動計算書及び貸借対照表):資料6(https://www.npo-homepage.go.jp/pdf/report28_3_shiryo_6.pdf)の説明。様式例は、NPO法人会計基準協議会の「NPO法人会計基準策定プロシェクト」最終報告(2010.7.22)から抜粋したもの。
川村座長:新しい「手引き」について、期待など意見があれば。資料6なども参考に、「手引き」「会計基準」の適正な守備範囲を定めたい。
瀧谷委員:会計基準というのは、NPO法人会計基準協議会が策定したものを既成の事実として取り入れて議論したいと考えている。都道府県担当もパーフェクトに理解していない中、見解にばらつきがあってもいけないので、会計基準に対する所轄庁の解釈の統一というものがよいのでは。
川村座長:バランスだと思う。知っておいて欲しいが、がんじがらめな規制になってもよくないので、そういう中で「手引き」をまとめていきたいと考える。
松原委員(特定非営利活動法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会副代表理事):現在3つある「手引き」と、その連動について。認定NPO法人の手引きも改正があり気になる。認定NPO法人の会計の書類も「手引き」に近い現金主義で作成を求められている。その書類が違うというのではおかしな話になるので、どのようにして整合性をとっていくのか。
野村氏:成立して間もないが、4月以降は変わるので、円滑な事務の移行に努めたい。国税庁と所轄庁に対し、責任をもってやりたい。認定基準に関しては、指摘を踏まえて所轄庁によりばらつきが出ないように明確に示せるよう対応したい。
松原委員:認定NPO法人に関してはもちろん、NPO法人も情報開示が重要になってくる。認定NPO法人制度のしくみに、会計処をどう連動させるかについて、事務方で検討いただく他、研究会の成果などを踏まえて対応をお願いしたい。
越尾氏:重要なご指摘。研究会の中でも、どこかでとりあげていただきたい。
松原委員:使途指定の寄付金、賛助会費の扱いなど、ルール化が必要。混乱を避けるためにも。
梶川委員:行政にも参考になるように、という観点で意見を言ってもよいのかどうか。
野村氏:認定を受けるための書類と情報開示のための書類が同じ物であるべきかどうか、「会計のあり方」としてどうあるべきかということ。適切に新制度がスタートできるためには、ここでぜひ智恵をお借りしたい。
川村座長:どうしても連動することが出てくる。大変な作業となるが、まずは会計の立場から示すのではないかと思う。
以上
報告者:北川貴英氏