CSRからCSVへ!企業が社会に影響力を持つために、必要なマインドとは?ー藤沢烈氏インタビュー
今回の震災で見えた、NPOと企業の連携が抱える課題
―では、これから持続的な復興支援活動を行うには、何が課題でしょうか?
一つ目は先に述べたような情報の偏り、二つ目は、支援先の偏りもあります。
これまでは、寄付や援助となると、どうしても今までの実績が大きいか、事業規模が大きい団体さんに集まりがちになり、小さな団体へはなかなか支援が回りづらかった。今までは、義援金が主なつなぎ役でしたが、今回、日本赤十字社さんに、3000億円の義援金が集まりました。しかし、日赤さんは自治体を通じてお金を配分するシステムでしたから、被害が大きかった市町村が配分上のボトルネックになってしまい、スピーディにお金が配分されませんでした。一方で、現地には、借金をしながら活動しているような団体もありますが、そういったところほど、PRする余裕もないですね。
またボランティア希望者も、ボランティアセンターさんに大量に集中した結果キャパシティオーバーとなり、人材を十分供給できなかった。せっかくたくさんのお金と人材が集まっても、スムーズに全体に行き渡らないと、その力を100%活かせません。企業も今回、そのことに気づいたのではないでしょうか。
電話線が一本しかない状況より、インターネットのように自律分散的に各自が回線を持つことでスピーディに支援が行き届く。日本赤十字さんやボランティアセンターさん以外にも、支援金や人を届けていく場を持つことがNPOに求められています。
同時に企業が気になるのは、NPOが果たして自分たちの資金を有効に使ってくれるのだろうか?という事。
NPOの側も、託されたお金をきちんとマネジメントし、有効活用できるかの不安もあります。その準備ができていなかった団体も、今回見受けられました。
―その課題を解決するには?
従来のNPOは、自分たちがやれることをやるというプロダクトアウト型が多かった。これからは、NPOもまず現状把握し、それに基づいた支援のプロセスを組み込み、問題解決する必要があります。お金をいただくからには成果を出さなければいけない。「がんばりました」じゃ済まないんですね。
―出資する側の企業も、姿勢を変えなければならなそうですね。
そうですね。企業にも、なぜこのNPOに支援したのか、株主に対する説明責任が問われます。そのためにも支援する側の実態を理解する必要があります。それにはまず、お金を出す側という上から目線で寄付先を見ていては始まりません。同じ目線で、対等なパートナーとして協働してゆく必要があります。NPOを通じて自分たちが社会の課題を解決していく姿勢が必要です。
―つまり、企業とNPOのパートナーシップ、対等さが重要ということですね。
例を上げると、ETIC内に「ソーシャルベンチャー・スタートアップマーケット」というプログラムがあります。これは、社会問題を解決しようという意志のある若者が事業を創造するのを支援する事業です。
このプログラムの優れている点、それは「マーケット」を重視している点です。お金を出すだけ、教えるだけではなく、市場環境を提供し、それに共感するメンターが支援するという場所です。社会起業に関心の高い人びとが集まる事で、お金の代わりに「思い」を交換するマーケットができてゆく。そうしたマーケットを、今後社会に作ってゆくこと、社会起業家、企業、行政が、平等にその場で思いを共有してゆく場ができることが必要だと思います。