CSRからCSVへ!企業が社会に影響力を持つために、必要なマインドとは?ー藤沢烈氏インタビュー
今、一番グローバルなのは東北?!責任を負う側から、価値を創造する主体へ
現在、一企業が責任を負うだけでは足りないほど、社会問題が複雑かつ世界規模に広がっています。
今回の震災は、多くの日本人はローカルな話だと思っていますが、これはグローバルな問題だと考えるべきです。福島の原発事故も、東電と政府の判断だけでは社会が納得できない事態になっています。テロ、原発、環境問題…すべて、それに直接関わる一企業だけが解決するべき問題ではなくなってきている。地球規模で、全体の問題として、それらをどう解決するか、全員が考えなければいけない。
今、もっともグローバルな人間は東北に目が向いているはずですよ。海外に行くことが必ずしもグローバルというわけではない。これまでは、CSR(企業の社会的責任)という意味合いで、社会貢献活動を行っている企業が多かったと思いますが、これからは、CSV(Creating Social Value)の時代と言えます。
―CSVって、なんですか?
CSVとは、社会価値の創造のことです。企業自身が『社会にとって、どんな価値を創造したいか』を見極め、そのために、どうやって行政やNPOと連携し、なにをするかを考える、というのが企業にとって重要になってくるのです。
CSRとCSVは、主語が違います。CSRは企業が主語で、企業がどんな責任を負うか、に焦点が当たっていますが、CSVは、社会が、(企業やNPOの手で)どう変わるか、に重きを置いています。
また、CSVは、担い手となる人達の規模も違います。CSRは業務の一環として、企業のCSR部門というごく一部の方が活動する内容でした。CSVでは、社会と事業を経営者自身が考えて、会社全体に広めてゆく必要がある。経営方針に近い概念です。
CSVを実現するには、企業も、NPOから「いかに選ばれるか」、という観点が必要になります。
―お金を出す側の企業が、ですか?
たとえば、商品をいかにお客様に選んでいただくかを気にするように、どこのNPOに選んでいただけるか、を気にしてゆく。企業全体で、こんな価値を創造したいので、こんなNPOに選んでいただきたい、という明確な社会スタンスと意思表示をすること。そんな姿勢に切り替えられるかが、その企業が社会にどれだけインパクトを与えられるかの一つのカギになります。
―企業の姿勢をシフトしてゆくには、何が必要なのでしょうか?
組織と組織の枠を超えて活躍できる、「組織内個人」を増やすことです。今回、世界中から、優秀なNGOが支援活動に来てくれましたが、それでも現場のニーズとのマッチングがうまく行かず、力を使い切れませんでした。そのことにも、日本での組織同士の連携のしづらさが表れています。一方で、組織として動く人より、個人として動く方のほうが、行動が早かった。これからは、企業の中にいる自由人だったり、個だけど組織とつながっているような人が、思いを持ちながら情報発信してゆくことが重要になります。
―企業内で、そのような個人を増やすにはどうしたらいいのでしょう?
昨年のイギリス視察で驚いたことがあります。イギリスでは、NPOの出身者が企業で働いていたり、行政に入っていたりだとか、また逆に、企業で働いていた一流ビジネスマンがNPOに入って働いていたり、そんな事がごく当たり前に起きているんです。会った中で、NPOの方がもっともビジネスライクだった、なんてことが起きる(笑)。
NPOセクターも企業セクターも行政も、流動的に人材が行き来し、個人的な思いを持った方が、それを動力に、一定期間限定でも、組織と組織の枠を越えて活躍する。そんな流れを意図的に作ってゆくことが、日本の企業にも求められます。
社会全体で、どう復旧してゆくか、どんな価値を社会に創造するか。
それを企業ひとつひとつが考え、その上でそのために必要な人材を育ててゆく事。
そんな、CSVマインドを持つことが、今後、企業がどれだけのインパクトを社会に与えられるかの鍵になると考えます。
―ありがとうございました
藤沢 烈 @retz
外資系のコンサルティングファームから独立し、企業や政府のコンサルタントを行うコンサルティング会社、株式会社RCF(Revolutionary Consulting Firm)を立ち上げる。
2000年から、社会起業家の支援活動に力を入れ、ETICのフェローを勤め、NEC社会起業塾(カタリバやフローレンス、かものはしプロジェクトを支援してきた社会起業支援プログラム)の立ち上げをサポート。また、地域活性を行うNPOの立ち上げをバックアップするチャレンジ・コミュニティ・プロジェクトを立ち上げた。
今回の震災を機に、それまで行っていた一般のコンサル業務はいったん休止し、自社内に「RCF災害支援チーム」を立ち上げ、以来、復興支援に尽力している。