新寄付税制でNPOが変わる!—新制度活用の課題とポイント:黒田かをり氏インタビュー
黒田さんが見つめてきた、シーズの歩み
—黒田さんは、シーズ設立当初からの旧知だそうですが・・・。
1994年から、アメリカの民間非営利組織であるアジア財団というところの東京事務所に務めていました。シーズと知り合ったのはその頃です。アメリカの次は2001年から2003年までイギリスに滞在し、そののちに今のCSOネットワークに勤務しはじめました。
CSOの目的は、持続的な社会づくりの担い手を、国境を超えてつなぐことです。NPOセクターが、企業セクターや、政府セクターとも関わり合いを持つことが大事、という考えのもと、市民社会組織(NPO、NGOのこと)のさまざまなネットワークと連携しながら、セクターや国境を超えて各ネットワークをつないだり、必要に応じて新しいネットワークの立ち上げを行ったりしながら、活動しています。
シーズには、事務局に近い外部サポーターという形でボランティアとして関わってきました。その他、シーズが米の法制度等を調査する米国視察に同行したり、シーズが主催したアカウンタビリティ研究会や昨年成立したNPO法人会計基準の策定委員会にも関わりました。
このように、私は、シーズと一緒に苦楽を共にしてきたメンバーというより、少し距離はあれども共に歩んできたという感じです。
最近では「新しい公共推進会議」の震災支援制度等ワーキンググループ(震災支援をやっているNPO等が効果的に支援ができるような制度になるような見直しを行う会議)などでも、シーズのメンバーとは組織を越えてお付き合いしています。
—黒田さん自身、シーズの変遷を間近で見てきたんですね。
シーズは1994年の設立以来、市民社会社会的基盤を強化するために目標を掲げてきました。
・NPO法の設立
・寄付税制の整備
時間をかけて、これらの目標を成し遂げたことは本当にすばらしいと思います。
NPO法の設立を成し遂げたのは、阪神淡路大震災を機に市民運動やボランティア活動の普及に拍車がかかったと言うこともできますが、シーズのひたむきな姿勢、とくに、ロビー活動における松原さんの「食いついたら離さない」という姿勢に共感し、一緒に走ってきた多くの市民団体をはじめ、国会議員、経済界などの力も大きかったんじゃないでしょうか。
また、シーズは内部の議論にとどまらず、広く開かれた形で議論をしてゆくことが多いので、その姿勢も尊敬します。なかなかそれってできないことなんですよ。会計基準作成の時も、全国のNPO支援センターを中心に構成された協議会での議論をベースに、多くのNPOセクターの方々の意見を集めながら、会計や税務の専門家の人たちとともに具体的な基準案をまとめあげました。いろいろなセクターの声や意見をまとめあげて、ひとつの目標に向かって何かを作り上げるという難しい技をやってのけたと思います。
このように、徹底して活動を市民に開こうという姿勢を貫いて今日まで来ている、その一本筋が通った姿勢はシーズらしさになっていると思います。
制度を変えるという仕事は、現場のある市民活動に比べると、一見地味で活動内容が見えにくいので、寄付が集まりにくいと思います。そうした特殊な仕事ですが、ぶれることなくひとつのビジョンに向かって進んできたシーズの大きな目標が達成され、私としても非常に誇らしい気持ちでいっぱいです。