新寄付税制でNPOが変わる!—新制度活用の課題とポイント:黒田かをり氏インタビュー
社会的責任から信頼へ―NPOの活動、どう変わる?
—今回の制度ができたことで、NPO活動はどのように変わってゆくと思いますか?
あくまでも制度は器。それに盛る料理は、NPO自身が作っていかなければならない。
どんなに便利な制度ができても、多くの人たちの共感や支持を得るのはけっきょく中身です。いい中身のNPOにすること、結局そこに尽きるのかな、と。
今回の改正は、NPOそれぞれにとっては、団体の理念に向かって大きく前進するチャンスですが、一方で、いかにこれをうまく使ってゆくかという課題でもあります。時が経てば、うまく使っていけるところ、使い切れないところと、団体によって差が出てくると思う。ですが、せっかくシーズのような支援団体もあるのですから、出来る限り活用しようという意気込みで、ポジティブに捉えてほしいですね。新しいパブリックサポートテスト「3k×100」は、これまで寄付を募っていなかった団体でもけっこう達成可能だと思うので、多くの団体にそれを目指してほしい。そのためには、NPO自身が、一般の方々に制度について知ってもらう機会を作ることも必要です。
—NPOが、この制度を利用してうまく寄付を集めるには何が必要なのでしょうか?
今まで寄付集めに苦労していた団体は、より仕組みがシンプルになったぶん、活動理念や活動内容自体に対する信頼を得ることに注力できるようになるのではないでしょうか。
まず、自分の団体がなにをしているのかとか、何を成し遂げたいのか、とか何をもっているのか、強みはなにかを関係者も交えてじっくり見つめることが大事かもしれません。その上で、必要な情報は開示していくことも大切でしょう。
シーズが発足した199年代半ばに比べたら、NPOは、日本の社会の中にきちんと位置づけられる存在へと、格段に進化してきました。そのぶん、どんな小さな団体でも社会的責任を果たさないといけなくなってきている。
アカウンタビリティや透明性、それから「ステークホルダーエンゲージメント」(多様化してゆくステークホルダー、つまり会員さんだけでなく、地域の方、政府、自治体、活動の対象者などの重層的な利害関係者の方々と関わり、彼らの意見に耳を傾ける事)が必要とされてきます。
それは、「えっ、こんなことまでやらなければいけないの」というような、予想以上に骨の折れる作業かもしれませんが、それも一定程度は果たしてゆかなければならない。社会が成熟し、NPOにとってやりやすい環境が整備してきたことで、NPO活動の責任や真価が問われる。それをチャンスと捉え、より一層社会の中で認められ、活躍できるNPOへと発展してゆく団体が増えてくれたら嬉しいですね。
黒田かをり氏 略歴
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民間企業に勤務後、米国コロンビア大学ビジネススクール日本経済経営研究所、アジア財団(現アジア・ファンデーション)を経て、2003年から国際協力・開発分野での市民社会組織のグローバルなネットワークを進める「CSO連絡会(現一般財団法人CSOネットワーク)」に勤務。2010年4月より事業提携により(特活)アジア・ファンデーションのジャパン・ディレクターも兼任。
ISO26000(社会的責任の国際規格)の策定に日本のNGOエキスパートとして関わった。現在同規格のJIS化本委員会委員をはじめ、BOPビジネス支援センター運営協議会、「新しい公共」推進会議の委員などを務める。CSOネットワークは社会的責任向上のためのNPO/NGOネットワーク(事務局:特定非営利活動法人日本NPOセンター)の幹事団体。
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