震災復興・関係省庁とNPOとの6回目会議開催
2015年5月20日、復興庁一階会議室にて「第6回東日本大震災の復旧・復興に関する関係省庁・NPO等定期会議(以下、定期会議)」が開催された。
定期会議には、NPO側から、東日本大震災支援ネットワーク(JCN)やDPI(障害者インターナショナル)日本会議、全国移動サービスネットワーク、シーズ・市民活動を支える制度をつくる会の7名が参加。省庁からは、復興庁の他、内閣府、環境省、文部科学省、総務省、厚生労働省、国土交通省から約20名の担当官が参加した。
今回の定期協議では、11月~12月末まで募集したJCN参加団体のNPO等からの16の要望・意見についての回答を得た。
省庁側からの回答は別紙のとおり。
(資料)東日本大震災関連要望20150520(PDFが開きます)
一通りの説明を受けた後に、NPO側からの追加の質問や要望、意見交換が持たれた。
DPI(障害者インターナショナル)日本会議の佐藤氏は、「寝台型ホールボディカウンターによる内部被ばく検査および情報提供について、昨年6月の福島県議会で方針を検討するとされたが、12月時点では県からの情報提供はなかった。環境省からの回答で、『まずは県立医科大学に設置している寝台型ホールボディカウンターの活用ができるように、大学側で検査対象者の移動時および測定時に容体急変等の緊急事態が発生した際の対応について検討している』とされたが、昨日時点でもいまだ連絡はない。検討は進んでいるのか?」と質問。これに対して、環境省は、「県民健康調査課に情報共有を密にするように伝える」とした。
また、「病院までは行かれない障害者のために車載式の寝台型ホールボディカウンターの導入を要望しつづけているが、検討状況はどうか?」と質問。これに対して、環境省は、「現行の車載型はすべて立位型である。寝台型ホールボディカウンターについては検討をしてきているが、子供用のものであっても本体が6トン弱の大きさになり、障害者の方の伸長に合わせた拡大版を考えても、車に乗せるには少し難しい。このようなことから、まずは県立医科大学の利用ができるよう検討している」とした。
全国移動サービスネットワークの伊藤氏は、「移動支援について、地域公共交通の活性化および再生に関する法律の改正により、地域公共交通網形成計画等を自治体で活用されれば、多様な交通サービスが可能とされたが、住民が主体となって自ら車両を運行、外出支援をすることで移動支援をしているNPOがいることが周知されていない。相談窓口があるとのことだったが、住民発意のものも相談の対象になっているのか」と質問。これに対して、国土交通省は、「地方公共団体が主体だが、運用においてはいろんな主体があっていい。必要に応じて相談頂きたい。NPOが主体となった取り組みとしては富山県魚津市の事例もあり、国土交通省でも好事例として紹介もしている。いろんな方の取り組みは応援したいと思っている」とした。
次に、伊藤氏は「福祉有償運送の利用者の範囲の拡大について、合理的で簡単な手続き・要件設定を要望した。交通が著しく不便なところについての範囲が広がったとの説明があった。判定委員会は実際のところ、年に2回ぐらいしかなく、利用したくても1年待たされるのが現状である。また、権限移譲のあり方検討会が一昨年開催され、最終とりまとめによると、健康上の理由、ひきこもり等被災地特有の移動が困難になる要因も勘案して、利用者の範囲を広げるとあったが、このたびの説明には入っていなかった。旅客の範囲の拡大の解釈についての最新状況はどうなっているのか?」と質問。これに対して、国土交通省は、「旅客の範囲についての制度改正の拡大となったのは、地域において交通状況が著しく不便であると認められる場合に、来訪者や観光客など実施主体の旅客名簿に載ってない人にも拡大できるという改正である。様々な状況について移動が困難になっている人については、従前どおり、運営協議会の中で、福祉有償運送で定める通り、他人の介助によらず移動することが困難であると認められ、かつ、単独でタクシーその他の公共交通機関を利用することが困難な方に該当するかの判断をもって、該当するかどうかを判断することになっており、これは変わっていない」と回答があった。
伊藤氏はまた、「心の復興」事業について、「被災3県の移動支援やカーシェアは、出かける行為を通じて日頃のお困りごとを助け合うコミュニティ復興に直結している。「心の復興」事業は、心のケア、サロンや会食などがメインになっているように見受けられるが、移動支援は範疇に入るのか」と質問。これに対して、復興庁は、「サロンの取り組みなどを申請頂くことが多いが、移動支援の良い取り組みがあるなら提案いただいて検討させていただきたい」とした。
JCNの栗田代表世話人は、今回は、NPO側で12月までに集めた要望についての回答の会が5月となったことについて、この会議のタイムリーな開催を要望した。
被災地の課題はだんだん個別化、具体化してくるが、要望への回答について、市町村に相談しろといった回答ではなく、この制度なら利用可能であるという回答がNPO側にとって理解しやすいとした。
そして、災害公営住宅の集会所の備品を整備する財源を用意してほしいという要望について、単なる備品にとどまらず孤独死防止にもつながる効果が見込まれるとした。コーディネーター事業については、JCN側からの要望もあり作られた制度であり、要望の趣旨に合った制度になるのか、相談されたいとした。
最後にシーズの松原代表理事から、丁寧な回答を頂いたことにお礼を伝えると同時に、NPO側は制度の中身を熟知していない場合もあり、なぜ使えないのかの理由や利用可能な制度などが提示されると理解しやすい。今後も分かりやすく詳しい回答をお願いしたいとして、閉会した。
定期会議とは、支援・復興活動を継続する上で望ましい政策等の実現を図るために、東日本大震災の復旧・復興事業に携わるNPO等からの提案をもとに、各関連省庁とNPO等が定期的に協議する会合。会合では、①支援・復興活動に関わるNPO等からの提案、②各提案事項に対する省庁からの回答、③情報提供・情報交換を持つ場、を設けている。
なお、シーズはこの定期会議を日本NPOセンター タケダ・いのちとくらし再生プログラムの助成を受けて実施している。この場を借りて御礼申し上げます。