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2002年の報告

2007年08月29日 11:00

板橋区「中堅職員研修」報告

 2002年1月22日(火)午前10時半から、板橋区職員研修センターにて、松原による板橋区の中堅職員研修「協働事業の現状と課題」が行われた。この研修には板橋区の職員の約20名が参加した。

 以下に松原の講演の要旨を報告する。

(1)NPOの現状

 現在、NPOに2つの社会的変化が起こっている。

 第1に、経済的状況の悪化によって、NPOの収入のあり方が変化しているということである。

 NPOの収入構成は、メンバーからの「会費」、市民や企業からの「寄付金」、料金収入と行政の委託金による「対価」、民間の助成財団の「助成金」、行政の「補助金」から構成されている。

 しかし、不況によって、市民や企業からの「会費」や「寄付金」が減ってきている。民間助成財団の「助成金」は、学者・研究者を対象としたものからNPOへの助成へと徐徐にシフトしてきているけれども、助成金の全体額が減少しており、またそれの比べてNPOの数が増えてきているため、限られたパイの食い合いという状況にある。「補助金」に関しては、行政の財政難による削減とともに、従来の補助金の対象団体から新たなNPOへと補助金の組み替えが上手くされていないという問題がある。こうした収入源の限界の中で、NPOは「料金」や「委託金」などの「対価」に財源の活路を見出そうとしている。

 第2の変化は、行政側のNPOに対するニーズの高まりである。現在、NPOへの「支援」や「協働」が、行政にとって大きなテーマになっている。住民のニーズにより適した政策を行うために、また行政自身の財政難によってコスト削減の必要があるという面でも、NPOへの「委託事業(アウトソーシング)」に期待が集まっているのだ。さらに中央政府は、失業対策として雇用を創出する必要があり、雇用の担い手としてNPOが注目されている。

 この2つの社会的変化の中で、NPOと行政の双方による「委託事業」が期待を生まれている。しかし、「委託事業」がすなわち「協働」ではないことに注意しなければならない。また、住民・市民のニーズを考慮しない二者関係による「委託事業」に陥りがちな点も問題だ。

 現在、多くのNPOは財政基盤が弱く、組織も小さい。行政からの「委託事業」に依存しやすい状況にある。「委託事業」に依存し、寄付金や会費、助成金を稼げないNPOでは、NPOの自立性において危機的状況となる。NPOの存続のために行政が事業をつくり続けるという事態が生まれており、これでは「NPOバブル」ではないか。

(2)なぜNPOが重要か

 NPOへの理解が進んでいない中で、いくらNPOへの支援や協働を進めようとしても、期待する効果とは逆の結果を生むことにもなりかねない。大切なのは、NPOの特性を理解することである。

 第1に、「営利」と「非営利」の違いを理解することが重要だ。活動で得た利益を株主(会員)に配当するのが営利団体である企業であり、分配しないのが非営利団体=NPOである。NPOが有償サービスを行うことがあるが、それは「非営利」と矛盾しない。NPOをボランティアと同一視し、さらに無償サービスを行う団体であると捉える向きがあるが、それは大きな間違いであり、NPOの活動を阻害することになるので注意が必要だ。

 第2に、「NPO」と「ボランティア」を区別することである。NPOとは団体であり、ボランティアとは個人のことを指している。NPOは、1つの事業体として、継続的にサービスの提供を行えるよう組織運営をしていくことが重要だ。個人のボランティアとは違い、組織運営(マネジメント)やコストを稼ぐことが新しい課題として出てくる。

 第3に、企業とNPOのマーケットの捉え方の違いである。多くの人は、NPOを非営利ではあるが、企業と同じサービス・プロバイダーと理解している。しかし、企業にとって重要なのは、いかに利益を生むかであるのに対し、NPOにとっては独自のミッションをいかに果たすかが重要なテーマだ。NPOの特性は、利用者を利益の対象として見るのではなく、利用者のニーズに合わせてサービスを提供するという点である。そのため収入が見込めない活動でも行わなければならなくなってくる。この収入を得られない活動をしていくということから、NPOは、寄附や助成金、受益者以外の対象からの対価収入などを上げていく必要が出てくる。ここから、NPOは受益者以外のマーケットを持つことになる。そのようなNPOとその関係者・支援者との関係をきちんと理解することも重要である。

(3)NPOとの「協働」に向けて

 行政とNPOとの「協働」には、それぞれのNPOのミッションを理解することが不可欠だ。NPOと行政では良さが違う。互いの良さをマッチングすることが「協働」である。

 民間が民間に対してサービスを提供するという「民民関係」が、NPOの特徴である。行政は、NPOと市民の「民民関係」に対して、行政のニーズが合えば、その一部に補助金を出し、あるいは委託事業を出すことで、この関係を強化していくことができる。それが「協働」である。

 しかし、今多くのNPOは利用者との関係づくりを始めたばかりだ。さらに会員などの支援者との関係もまだ弱い。一方、行政は、「協働」する相手がいないために、自らNPOをつくるか、信用できるNPOを見つけ、委託事業をだすことをする傾向にある。

 これでは、その団体の存続のために行政は新たな事業をつくり続けなければならず、住民・市民のニーズからますます離れてしまう。これでは「行政の肥大化」と変わらない。

 日本でいう「民活」は、民間の活力を行政に入れるということであった。しかし、これでは「協働」とは言えない。「協働」には、行政もNPOも共にメリットがあるという「相互性」が必要なのだ。「協働」によって、NPOと行政のミッションに相乗効果が生まれ、受益者にとっても効果があるということ、これが社会を豊かにしていくのであり、「協働」の意義なのである。

報告: 大塚 謙輔

2002.02.18

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