「NPO支援税制セミナー」報告
2002年3月1日(金)、午後7時より中野サンプラザ(東京都中野区)11階研修室において、シーズ主催の勉強会「NPO支援税制セミナー」が開催された。
講師はシーズ事務局長の松原明。
支援税制の概要と施行後5ヶ月の現状を報告した。
参加者は約20名と低調で、施行前の同種セミナーの活況とは対照的。早くも支援税制に対するあきらめムードが蔓延していることの兆候か。
しかし、参加者はほぼ全員が設立準備中を含めNPO法人関係者。随所で質問が相次ぎ、熱心にメモをとる姿が見られるなど、関心の高さをうかがわせるには十分であった。
内容は、非常に複雑で難解なパブリックサポートテストを中心に、支援税制の概要説明、質疑応答、今後のNPO税制の方向性についてなどで、約2時間。
パブリックサポートテストは、認定NPO法人になるための要件で、NPOの収入にしめる寄付の割合が3分の1を超えていることを求めている条項。「3分の1要件」ともいわれる。
説明の途中で、松原が、参加者にこの要件を満たすことができるか尋ねると、当初、数名程度がクリアできると挙手。
その後、3000円未満の寄付は算入できないこと、基準限度額(寄付金総額の2%)があることなどを説明した後、再度クリアできるかどうか尋ねたところ、誰からも手があがらなかった。
手続きの煩雑さに手間がかかることを理由にあげる人もいた。
また、今年4月から改正される条項として、パブリックサポートテストの「役員・社員からの寄付が寄付金総額に算入できない規定が削除されること」を紹介したが、それだから申請できるようになるとした団体はなかった。
施行5ヶ月たった今でも認定NPO法人となれたのは2団体のみ。申請はこの2団体を含め10団体で、うち3団体は自ら申請を取り下げているという現状には、会場からため息が出ていた。
「こんなこととは思ってみなかった」と参加者はがっかりした様子。
現在6000を超えるNPO法人のうち、認定されたのがわずか2団体とはいかにも少ない。厳しすぎる認定要件を緩和する必要があることは明らかで、シーズでは、12月の与党税調に向けての交渉データとして、今年もNPO法人の財務状況に関するアンケート調査を実施する方針。
国税庁に、このままではNPOの実態とはかけ離れたものであり、改正に対する切実な要望があることを示すためにも、ぜひご協力いただきたいと訴えた。
主な質疑応答は以下のとおり。
Q.企業からの寄付が受けやすくなることがメリットとしてあげられていたが、現段階でも寄付でなく、企業が経費として落とせる広告費として受ける方法があるのでは。
A.確かに、ニュースレターに広告を載せるなどの方法で受けることはできるが、その質と頒布数などによっては、認められないケースも生じよう。そのNPOが広告をとれるだけの媒体をもっているかどうかだ。
Q.全員が、議決権をもち、寄付に算入できない正会員費を払う正会員なのですが。
A.正会員会費は寄附とはみなされない。そのため、総収入金額が膨らみ、パブリックサポートテストをパスすることは難しいだろう。全員が議決権をもち、民主的な運営をする団体ほど不利になる。きわめておかしな要件である。
Q.これから法人化しようと考えているが、認定をうけやすくするために、会費を3000円以上とした方がいいか。
A.現法律に合わせて定款を作るのではなく、団体としてどうしたいかを考える方がいい。3000円未満の寄付はカウントできないなど、この法律は実態にあっていない。この規定は引き下げの方向で交渉していくつもりであるし、内容は今後変えていく。
Q.今後どのような方向に変えていこうとしているのか。また、海外ではどのような基準になっているのか。
A.主に米国を例にあげる。米国では、申請した団体の95%が認定されるが、日本は99%が無理だろう。米国にもパブリックサポートテストはある。しかし、助成金は、基準限度額なしに受入寄付金にカウントできるし、少額寄付金の切捨て条項も存在しない。また、本来目的の事業からの収入は総収入金額に算入しなくてもよい。これは、団体が自立していくうえで非常に重要な要件となる。さらに、仮認定という制度があり、5年間の仮認定期間中に基準をクリアすればよい。結果としてクリアできなくても、遡ってその間の税控除が無効になることもない。事務負担の軽減も重要なポイントである。法人の事業規模によって、申請様式や情報公開の形式・内容をイギリスでは5段階、アメリカでは3段階に分けている。小さな団体は負担が少なく、大きな団体は厳しくといった柔軟な対応が求められている。
シーズではこのほか、地域密着型のNPOも認定が受けやすくなるように、広域性の要件の撤廃を、また、親族要件緩和、海外送金の事前届出制の緩和などを求めていく。
詳しくは2001年10月、NPO制度連絡会が各党に提出した要望書を御覧いただきたい。
/2001/10/行政-npo制度連絡会、各党に要望書提出/
報告:安部嘉江
2002.03.05