シーズ総会報告
2004年6月3日19時より、中野サンプラザに於いて2004年度シーズ総会が開催された。今回は、シーズの総会について報告する。
はじめに、武者小路公秀代表から、「今年シーズは10年目の節目を迎える。NPOの法的な制度は整備され、シーズは一定のミッション達成を果たしたが、NPOが支援者に支えられてしっかりとした活動を展開していくための新しい取り組みが必要になってきている。今日は、今後どのような活動を展開していくべきか議論していただきたい。」との挨拶があった。
総会では次のようなシーズの2003年度活動概況と、2004年度の活動方針などが報告された。
1 2003年度の活動報告
松原事務局長から、下記のNPOの現況説明と、2003年度の活動報告がおこなわれた。
NPO法施行5年で16000以上のNPO法人が設立されたが、支援税制としての認定NPO法人制度は、3月末時点での認定法人数22法人にとどまり、今後も改正が必要だ。
また、NPOの組織基盤については、収支規模1000万未満の小規模団体が過半を占めており脆弱である。支援税制が十分に機能していないため、NPOの資金源は会費・寄付ではなく、行政の補助金や事業収入に頼り勝ちだ。このことが、NPOの自立性と企業とは違うという独自性を揺るがしている。また、昨今、問題のあるNPOがマスコミを賑わせ、NPOの信頼性の確保も大きな課題になっている。
2003年度のシーズの活動の一番の成果は公益法人制度改革への対応。政府原案では改革対象に含まれていたNPO法人を、ロビー活動、キャンペーンなどによって対象からいったん外すことに成功した。ただし、これは緊急避難的措置である。
その他、研修活動では、法人化セミナーや寄付集めに関するものを実施。調査研究活動としては、寄付に関する日米比較プロジェクトなどを行った。情報提供活動については、NPOWEBの充実を目指し、昨年10月からはニュースを土日も含めて毎日更新するようにした。
2 シーズの今後について
シーズ運営委員の辻利夫氏(東京ランポ)が、次の検討内容を報告した。
シーズは、1994年に、NPO法や認定NPO法人制度、NPO法人の情報公開などの創設を目的として設立された。NPO法、認定NPO法人制度が制定され、設立当初の目的は一定達成をみたように思う。しかし、認定NPO法人制度の改正や公益法人制度改革など、引き続き制度面での改善運動がシーズには期待されている現状から、この制度への取り組みをここで辞めるわけにはいかない。
一方、民=民関係での市民活動を支える仕組みの構築の必要性が高まっている。この市民活動を支える仕組みの構築として、「寄付」に注目する戦略をとりたい。それは、NPOの3つの「危機」への対応でもある。
「独立性の危機」に対しては行政に頼らない自立的な財源をつくらなくてはならない。NPOの自立的な財源とは、会費、寄付金、事業収入の3つだ。
「独自性の危機」から考えると、事業収入のためのビジネスに積極的になると、なぜNPOであって企業でないのかと問われてしまう。企業との違いを示すには、会費や寄付金集めに積極的になる必要がある。
寄付を募り、支援を拡大する中で得られる信頼関係が「信頼性の危機」の克服にもつながる。2004年度は、寄付者とNPOをつなぐ仕組みづくり、すなわち寄付市場は、日本でどうすれば実現できるかを検討していく。
3 2004年度活動方針
松原明から、下記の活動方針が示された。
まず認定NPO法人制度の要件緩和に取り組む。次に公益法人制度改革への対応は、昨年度から本格化した公益法人側の動きと連携をとりつつ、NPO法人制度がより発展する形での提案や働きかけ、世論喚起を行う。認定NPO法人制度の改正とともに、11月が山場となるだろう。
NPO法に関しては、行政の監督を最小限にするとした立法精神に基づいた運用がされるよう働きかけていく。
また、寄付市場づくりのための基礎調査を行う。
4 今年度の役員
今年度の役員体制は次の通り。
代表は武者小路公秀(大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター所長)。副代表は伊藤道雄(国際協力NGOセンター理事)。監査は水口剛(公認会計士・高崎経済大学)。事務局長は松原明。
運営委員団体は次の15団体。愛隣舎、アスク、国際協力NGOセンター、ケアセンターやわらぎ、玉川まちづくりハウス、東京消費者団体連絡センター、東京ランポ、日本国際ボランティアセンター、日本コンチネンス協会、日本ナショナルトラスト協会、ピースボート、ピースウィンズ・ジャパン、ブリッジ エーシア ジャパン、ヘリテイジ・トラスト、難民を助ける会。
最後に、伊藤道雄副代表から、「NPOとしての独立性、独自性の担保のために、寄付市場の創設といったシーズの新たな取り組みに期待したい。」との挨拶があり、2004年度の総会は終了した。10周年の節目を迎えたシーズに対して、会場からは「市民活動のための社会的基盤の整備に、より一層がんばってもらいたい」とのエールが送られた。
シーズ:徳永洋子
2004.06.22