認定NPO法人制度改正のための全国キャンペーン「熊本勉強会」
「認定NPO法人 制度改革で変わるNPOの環境」
平成16年12月11日の13時半から、「認定NPO法人 制度改革で変わるNPOの環境」と題する勉強会が、(特活)NPOくまもとの主催で開催された。会場は「くまもと県民交流館パレア」の会議室。参加者数は55名。進行役は、NPOくまもとの代表理事上土井章仁がつとめた。
勉強会の概要は下記のとおり。
<国会議員からの報告>
この勉強会には、坂本哲志衆議院議員、松野信夫衆議院議員、野田毅衆議院議員(代理出席吉岡秘書)の3名が参加。参加議員からは、次の発言があった。
○坂本哲志衆議院議員
NGOが外務省改革の風穴を空けた。NPO活動を通じ、また今日のような勉強会を重ねて行くことで、官僚が作文したものを一部政治家がやり取りをすることで政策が決定されていくという現状を打破しなければならない。
○松野信夫衆議院議員
認定NPOの数は全国で26団体であり、大変ハードルが高い。民主党は要件緩和についての法案を出し続けているが廃案になっているのが現状だ。自民党、官僚にはNPOへの不信感が根深くあると思われる。こうした現状を変えていくために多くの声を国政の場に持ち込まなければならない。
○野田毅衆議院議員(吉岡秘書代読)
有意義な勉強会だと思う。ぜひともがんばって議論していただきたい。
加えて、松岡利勝衆議院議員、園田博之衆議院議員、保岡興治衆議院議員、木村仁参議院議員、陣内孝雄参議院議員からは、熊本での勉強会と全国キャンペーンに対する激励のメッセージが寄せられた。
また、松岡利勝衆議院議員には、第161回国会に「認定NPO法人の改善に関する請願」をしていただいた。
<現在の取組み状況について>
要望書への賛同署名(全国のNPO法人役職者2,593名(うち熊本県30名))を、平成16年11月17日に国会へ提出したことが報告された。
<講演-1>
「NPO法人をとりまく社会環境-資金循環と認定NPO法人制度の意味を考える-」
勉強会では、特定非営利活動法人日本NPOセンターの副代表理事山岡義典氏が、認定制度について講演した。講演概要は以下のとおり。
行政、企業の財源はそれぞれ、税収、売上げであり、NPOの財源に比べ会計的に単純である。NPOの多様な財源をどう捉えるかが問題である。
NPOの財源を縦軸に内発的財源、外発的財源、横軸に支援性財源、対価性財源と捉え、4つのマトリクスを描くと、どの分野の財源が多いかでNPOの性格が変わってくる。
内発的財源(安定的)
会費、小口寄付等 自主事業収入等
I-(1) ↑ II-(1)
支援性財源(運動性)←―――――――→対価性財源(事業性)
I-(2) ↓ II-(2)
助成金、大口寄付、補助金等 受託事業収入等
外発的財源(変動的)
安定的財源を確保しながら、大きな、短期的な財源を得る必要がある。対価性ばかりの財源であれば、売れる商品・サービスしか提供しなくなり、有限会社と変わらない。
I-(1)から始め、II-(1)、若しくはI-(2)を経由する過程でマネジメント力をつけ、II-(2)の財源を得るという過程を踏むべきだ。いきなりII-(2)として受注をするケースもあるが、マネジメント力が弱ければ業務遂行ができない。しかし、I-(1)、I-(2)の財源確保が、昨今の景気低迷により少なくなっている。よってII分野に財源を求めるケースが多いようだが、一度対価性財源を確立してしまえば、地道なI分野での財源確保を怠る傾向が見られる。
II分野は現在のニーズに応えるものであり、I分野は未来のニーズに応えようとするものである。I分野がしっかりとしていなければ、ミッションを軸としたNPOの運営は難しい。認定NPO法人制度は、I分野を増やすための制度である。
公益性の高いNPO法人を認定NPO法人とし、税の優遇処置を講じるためには、まず、公益性があるかどうかの判断を公平に判断しなければならない。アメリカでは公益性があるかどうかの判断基準を行政職員の裁量ではなく、また事業分野、内容ではなく、多くの人が支援しているかどうかという基準で判断することにした。これがパブリック・サポート・テストであり、日本版が運用されている。
行政職員の裁量を徹底的に排除し、誰が見ても公平なものとなるようなシステムを目指したため、現在の使いにくい制度となってしまっている部分がある。
今回のキャンペーンでは、主な要望事項として、次のパブリック・サポート・テストの計算式の改正を挙げている。
- 会費収入も寄付金と同じ扱いにする
- 公益法人からの助成金も計算式の分母・分子の両方に全額算入する
- 特定非営利活動からの事業収入は、計算式の分母から除外できるようにする
<講演-2>
「認定NPO法人になる可能性は」
つづいて、特定非営利活動法人IOBスポーツ推進事業団理事長の福島貴志氏が下記の講演を行った。講演では、パブリック・サポート・テストの計算式の主な改正3点の具体例をIOBスポーツ推進事業団で検証。認定要件緩和によって、認定されることが検証された。
IOBスポーツ推進事業団は、高齢者・障害者をはじめとする地域住民に対してスポーツを通じた健康づくり、障害者・高齢者の自立支援・社会参加に関する事業及び選手育成事業を行いスポーツ振興、障害者福祉、高齢者福祉に貢献することを目的としている。平成11年4月にIOB設立、平成14年6月にNPO法人認証(熊本県)を受けている。また、平成15年9月には訪問介護事業所認可を受けた。最初は水泳を教えるという事業のみであったが、ニーズが多様化して新しい事業が必要となった。今までに3回の定款変更を行い9つの事業を実施している。
パブリック・サポート・テストの要件緩和が実現すれば認定NPO法人になれる可能性が出てきた。
緩和(1):会費収入も寄付金と同じ扱いにする
ミッションに対する思いは寄付をしていただく方も会員も同じである。しかし、この条件化での計算結果は 1/14.3 ≦ 1/5である。
緩和(2):公益法人からの助成金も計算式の分母・分子の両方に全額算入する
公募による審査を受けているために要件緩和してもらいたい。しかし、この条件化での計算結果は 1/12.5 ≦ 1/5である。
緩和(3):特定非営利活動からの事業収入は、計算式の分母から除外できるようにする
現行の要件では、受益者のニーズが大きく、これに応えるべくマネジメント力をつけ、活動を拡げていけば行くほど要件から遠ざかっていくことに理不尽さを感じる。緩和(3)が実現したと仮定した上の計算結果は 1/1.16 ≧ 1/5で、認定NPO法人に該当することがわかった。
<質疑応答>
会場からは、事業の共益性と公益性を証明する資料の具体例についてなど、具体的な質問がたくさんあがった。
それらの質問を受けて、山岡氏からは、「現在、2万近いNPO法人が認証されている。その一方で休眠に近いNPO法人の数も多い。ミッションに忠実な本当のNPOは1万もあればいいのではないかと考えているが、ごく一部の悪質なNPOによりイメージ形成がされてしまっているのも事実だ。NPOはどうあるべきかを『信頼されるNPO7つの条件』としてまとめたので参考にしてもらいたい。」との発言があり、勉強会は16時半に終了した。
報告:NPOくまもと
2004.12.22