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2008年の報告

2008年08月07日 12:06

ファンドレイジングセミナー2008 第1回「はじめよう!戦略的ファンドレイジング」

ファンドレイジングセミナー2008(全6回)
~より戦略的なファンドレイジングのために~

第1回 はじめよう!戦略的ファンドレイジング

ファンドレイジングセミナー第1回の動画はこちら(ファンドレイジングネット)

【設立のご報告】
皆さまのご支援のおかげで、寄付文化の革新を目指す「日本ファンドレイジング協会」を、全国47都道府県の580人の発起人・360人の当日参加者の方と共に、2009年2月18日設立できました!
ご参加・ご支援ありがとうございました!

日本ファンドレイジング協会に関する今後の情報は、「日本ファンドレイジング協会オフィシャルブログ」をご覧ください!

日時:2008年7月28日 18時半から20時半
会場:日本財団ビル2階会議室

このセミナーは、シーズが日本財団の助成を受けて取り組んでいる、「NPO等のファンドレイズ推進ネットワーク構築事業」の一環。NPOがファンドレイジングを行ううえで重要な、「コミュニケーション」をテーマに全6回の連続セミナーとして企画された。

第1回目のセミナーの講師は、株式会社ファンドレックス代表取締役の鵜尾雅隆氏。鵜尾氏は、人気ブログ「ファンドレイジング道場」の主宰者でもあり、当初50名の定員で開催する予定が、事前告知への反響が大きく、申し込み多数により、定員150名(先着順)に拡大して開催。当日は、定員を超える160名の参加者を得た。

総合司会はシーズの徳永洋子。

【開会挨拶】

はじめに、シーズの徳永洋子が、
「シーズは、1994年に設立。市民側に立って運動を展開して、1998年にはNPO法の立法を果たしました。さらに、2001年には寄付税制である認定NPO法人制度の創設を実現し、その後は毎年改正に取り組んできました。NPO法ができて今年で10年、その数が3万4千を超えた現在、昨今のNPOの資金開拓の困難さが新たな課題となっています。そこで、シーズは、NPOの資金開拓、ファンドレイジングについてみなさんと一緒に考え、そしてその力を向上させる取り組みをはじめました。今回の連続セミナーもその一環です。テーマは「コミュニケーション」。よりよいファンドレイジングを行うには広く活動を伝える、あるいは支援者の期待をくみ取る、そういったコミュニケーション能力が欠かせません。今日はその第1回目。NPOがファンドレイジングを行う上で、このセミナーが意義あるものとなれば幸いです。」
と、セミナーの趣旨を述べて、開会の挨拶とした。

【日本財団からのメッセージ】

続いて、日本財団常務理事の三浦一郎氏が登壇し、
「ファンドレイジングの理念は賛同者をふやすこと。それにより、NPOの事業効果や社会的なインパクトが深まります。また、一般的に助成財団では、人件費などの管理費に対してはあまり助成をしませんが、団体がファンドレイジングで得た資金は自由に使えることから、NPOにとって基盤の安定化をはかるうえで重要なものとなります。しかし、現実には、NPO側では、自分たちはいいことをやっているのだから、お金はもらって当然だという傾向が散見され、それではファンドレイジングはうまくいかないでしょう。ファンドレイジングに対する意識を高くもつことが大切です。

そこで、今回の連続セミナーで、ファンドレイジングに関する戦略を、ぜひ学んでいただきたいと思います。日本財団としても単に助成するだけでなく、ここ7~8年の間は、全国各地でセミナーを開催し、ファンドレイジングの大切さについて訴えかけてきましたが、今回はこの道の先駆者であるシーズと協働する形で、このようなプログラムを組んでみました。
シーズとのファンドレイジングに関する事業は、今年度で3年目。我が国にファンドレイジングという、大きなうねりを起こすために一石を投じてみようというのが狙いです。さらに、ファンドレイザーの人たちに社会的な地位を与えて、そしてネットワーク化を推進していくことも大きな狙いの一つです。このセミナーが実りあるものとなるように願っています。」
と、このセミナーに対する日本財団の期待を述べた。

【連続セミナーの初回にあたり】

続いて、連続セミナーの初回にあたり、主催者であるシーズの事務局長松原明が、以下の挨拶をした。
「シーズは、1994年からNPO、市民活動の基盤づくりにむけて、NPOに関する諸制度、会計のあるべき姿などを実現する活動を行ってきました。1995年からは、市民活動が発展するためには資金開拓が大切だということで、寄付金集めの講座を断続的に行ってきました。
3年前から日本財団の助成のもと、ファンドレイジングに関するセミナー、シンポジウムなどのイベント、冊子やウェブサイトを通じた情報提供などを行ってきました。今回の連続セミナーはコミュニケーションに焦点をあてています。ファンドレイジングのポイントは、基本的には関係づくり。いかにして、会員、それ以外の見込みのある方と関係をつくり、関係を深め、発展させていくか、その基本となるのがコミュニケーションということでテーマにしました。

日本では、なかなか寄付が集まらない、文化がないと言われていますが、世界全体では、いかにしてファンドレイジングを広めていくかが大きなムーブメントです。海外では、ファンドレイザーのネットワークがあり、スキルを磨き、発表し、集まる場となっています。それに比べて、今の日本の状況がそれから取り残されているという危機感を抱いています。

そういう中で、世界のファンドレイジングの状況を知っている鵜尾さんにファンドレイジングのノウハウをご紹介していただいて、我々自身の技能、そして寄付市場をどう再構築していくか、また団体がノウハウを切磋琢磨していくか、情報交換をどうしていくかを考えていく場となればと願っています。」

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そして、第1回セミナーの講師、株式会社ファンドレックス代表取締役で、人気ブログ「ファンドレイジング道場」の主宰者である、鵜尾雅隆氏が登壇して、以下の講演を行った。

【講演】「はじめよう!戦略的ファンドレイジング」

今日お話しする中身は大きくわけて3つ。ファンドレイジングの考え方と取り巻く環境の変化、そして7つのステップをご紹介します。

戦略的ファンドレイジングとは何でしょう?もともと戦争のときは、いかに勝つか?ということを戦略的といいますが、私がファンドレイジング使うときには3つのキーワードをイメージしています。まず、「ゴールから逆算する」。いくら集めるかをきめて逆算する。第二は「いろんな状況を分析して積み上げてものごとを考える」。第三は「それを複合的に動員して実施していく」。この3つの要素を大事にして考えていきたいと思います。

そもそも、ファンドレイジングとは、何でしょう。私は、ファンドレイジングは単なるお金集めだとは思っていません。ファンドレイジングは社会を変革する手段だと思っています。このプロセスを通じて、社会に新しい価値・事業を説明して理解してもらう、そのこと自体が、結果としてお金が集まらなくても社会を変革する手段だと思っています。

もう一つ、ファンドレイジングは組織が社会と対話し成長するきっかけです。いいファンドレイジングをすると組織が育ちます。スタッフのモチベーションが上がります。そういう意味では社会とコミュニケーションして自分も相手も変わっていくというプロセスだといえます。

「日本に寄付文化がない。」と言うのをやめましょう。あきらめに近いメッセージだと思います。日本社会には、寄付の成功体験と習慣がないだけです。日本社会は必ず変わります。日本社会は基本的にコミュニティ型社会なので、みんなが思ったら一気に変わります。日本型のコミュニティ、人の輪を活かしたモデルがあると思っています。人に好きになってほしかったらどうしますか?まずその人を好きになる。日本社会はみなさんを支援する素敵な人たちです。まず、それを信じることです。

次に、ファンドレイジングを取り巻く環境の変化をお話します。いくつか統計的なものをご紹介します。日本社会は変わってきているなと思います。これは、「あなたにとって一番大切なものは?」という調査ですが、その中で「家族」と答えている人が増えている傾向があります。これは、NPOにとっては基本的にプラスになります。家族に帰っている人たちが、即、NPOのボランティアするわけではありませんが、NPOを支援することにつながる社会的な変化のひとつでしょう。

もう一つは高齢者がNPOについて感心を持ち始めたという統計です。80歳以上では、25%くらいの方が「関心ある。」と答えています。60~64歳になると6割。年々関心が高まっているという事実があります。

企業の社会貢献度調査をみていきましょう。職場に募金の仕組み(会員制や定期的)があるのは、32.2%、プラス緊急支援などの単発的な取組みがあるのは、85.4%、マッチングギフトは、44.6%、過去3年間にNPO等と協働した社会貢献があるのは、64.3%。確実に増えています。企業もこういう社会貢献に関心を持ちはじめています。

所得格差の拡大もあります。貧富の差が出ている社会では、その社会の安定を取り戻したいという思いが働きますから、寄付が出やすい傾向があります。野村総研の去年の12月の記事でしたが、遺産相続が年間75兆円。2020年には109兆円。子供に残したい人は69%。残りの31%は違う目的で使おうと思っている。この3月に生命保険会社で遺言診断できるようになりました。生命保険に加入した人が、これをどこそこに、入ったお金を回してください、と言えるようになりました。生保レディが潜在的なファンドレイザーになるかもしれません。

ここで何が言いたいかというと、寄付を取り巻く状況が混乱期に入ってきているということです。変化して、新しいものが生まれる状況になってきています。ただ、寄付先は、依然として特定のところに偏っているのが事実です。共同募金、日本赤十字社などに偏っているのは事実で、NPOは下のほうです。これを何とかしていかないとなりません。

そのためにはNPOだけが、がんばればいいわけでなくて、税制の問題もあります。あるいは資金を仲介したり助成する機関も、また教育も必要です。でも、何よりもまず、NPO自身のファンドレイジング力を高めていかなくてはなりません。

そこで、具体的なステップの話をご説明します。ファンドレイジング7つのステップです。1.寄付の目的・ニーズ・潜在能力の明確化、2.理事・ボランティア・支援者の巻き込み、3.既存・潜在的寄付者の分析、4.ファンドレイジング方法(コミュニケーションの内容と方法)の選択、5.ファンドレイジングプランの作成、6.ファンドレイジングの実施、7.寄付者・支援者への感謝・報告。この7つのステップです。

第1のステップ、「目的やニーズの明確化」が重要です。ゴールをみせる。何を実現したいのか語ることです。ファンドレイジングの成功に必要なものって何ですか?ときかれたら、私は3点セットで「夢と物語と場」だと答えます。こういう状態を実現したいという夢があって、今やっていることをストーリーで説明できて、共有する場がある。今までのストーリーをつむぎだすことが大事です。

「2.理事・ボランティア・支援者の巻き込み」、はある程度最初の段階からしなくてはなりません。

「3.既存・潜在的寄付者の分析」については、多くの団体で支援者の分析がされていません。寄付者の金額のカテゴリーに合わせて、それぞれ何人いて、それがどれくらいの割合なのかを洗い出す。それを組織内できちんと共有する。把握することが大事です。それを踏まえたうえで、それぞれのカテゴリーに応じて、例えば寄付キャンペーンやるときに事前に個別の感謝をやろうとか、イベントで巻き込もうとか、そういうことを戦略に組み込んでいくことが考えられます。

「4.ファンドレイジング方法」については、NPOがファンドレイジングを考える上で社会とどうコミュニケーションをとればいいか、ということです。配布資料のチェックリストでは、コミュニケーションの6つの要素を、その頭文字をとって、「ACTION」と表しています。

まず、Aは「アテンション」。最初のつかみ。これが第一です。次にCの「チェンジ」、その団体がもっている解決策で何を変えようとしているのか、とうこと。そして、Tは「トラスト」。寄付はどこまでいっても信頼性がなければだめです。次が、Iの「イマジネーション」。これは、夢物語です。これで受益者のイメージとか想像力を広げます。そしてOの「オンリーワン」。この団体の唯一。日本初とか、日本一とか言われると人は惹かれます。最後にこれを広げていくネットワークのN。いろんな人が応援しています、このようなネットワークをもっています、というのは信頼性につながります。こういうものがコミュニケーション上は必要になってくるということです。この「ACTION」は一つの切り口にしかすぎません。一つの切り口として、団体について「たな卸し」をしてみましょうというのがポイントです。

この中では、Cの「チェンジ」が難しいかもしれません。これを考える時にメッセージの三階層化をよく言います。NPOが事業をやって受益者がどう変わります、というのが第一の階層です。これをしっかりとなりません。ただ、ここだけで終わっていると社会から幅広い支援は難しいです。これに関心のある人しかこない。もう一つ上の階層、この活動の分野とか地域によってどういう意味があるのか?ということを伝えないとなりません。例えば、耳の聞こえない子供たちへ手話の学校通学のキャンペーンがありますが、これは耳の聞こえない子供たちが手話の学校にいけるというのが、一番目の階層。二番目の階層は、日本のろう教育に新たな切り口を設けるというメッセージです。第三の階層は、社会とか国とかに風穴あけるという、より社会的な意義を訴えることです。世の中の関心はいろんなレベルがあるけれど、どこでひっかかるかわからない。一番下の階層がすでにしっかり伝わっているのであれば、二番目、三番目のメッセージを出す。相手に応じてどの階層からも説明できることが大切です。

ファンドレイジングの5番目のステップは、「ファンドレイジングプラン」。大事なポイントとしては、どうやって寄付者としてステップアップしてもらうかをプランに組み込むことです。例えば、会員収入を増やしたい場合。スタディツアーの参加者は自動的に会員になるというケース、このボトルネックは2年目の継続率をいかに高めるかということです。そこで、ツアーの報告会に去年に行った人たちを招いて、その場で会員継続ができるようにするといった工夫が必要です。

「6.ファンドレイジングの実施」では、理事会にも責任をもってもらうのが大切です。理事会にファンドレイジング担当、資金調達委員会などを設けることも大事です。

最後のステップが、「7.寄付者・支援者への感謝・報告」。国際日本文化研究センター所長が、日本社会は債務至上主義だと言っています。日本の人間関係が「貸し借り」にこだわるのは事実です。それは、債権を持っている人、すなわち寄付者が、債務を負っている側、すなわち寄付先が何かを返してくれるのを期待するということです。感謝のお返しがあることを期待しているということです。

最後に、ファンドレイジングの大原則。直感を受け持つ右脳への働きかけを考えてください。何かを訴える場合、右脳にパーンと入ってから理論的な左脳にストーンと落とす。これが効果的です。

ファンドレイジングに関しては、他の団体から学べることも多いです。私が3月に参加してきたアメリカのファンドレイジング協会では、25カ国から4000人が参加してファンドレイザー同士がノウハウを紹介し合っていました。ファンドレイザーがNPOと社会をつなぐパイプラインである誇りを持とうという盛り上がりがありました。ここまでの規模でなくても、同じような組織が日本にもできればいいと思っています。

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鵜尾氏の講演には、途中、参加者同士が自分の団体をアピールし合う、団体のファンドレイジングの取組みを紹介するといった場面が盛り込まれており、参加者同士の交流も深まり、セミナー終了後も会場内では談笑の輪が広がっていた。

2008年8月7日 文責:徳永 洋子(シーズ)

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