【速報版】「市民公益税制プロジェクト・チーム中間報告」を読む~PT座長 渡辺周総務副大臣をお招きして~
「市民公益税制プロジェクト・チーム中間報告」を読む
~PT座長 渡辺周総務副大臣をお招きして~
2010年5月11日(火)午後7時~9時
於:研究社英語センター 大会議室
主 催:特定非営利活動法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会
共 催:NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会
5月11日、シーズ(代表理事:林 泰義)は東京・飯田橋にてNPO法人税制・寄付税制フォーラム「市民公益税制プロジェクト・チーム中間報告」を読む~PT座長 渡辺周総務副大臣をお招きして~を開催した。NPO/NGO関係者を中心に、研究者やマスコミ関係者、学生、企業関係者など当初の定員を上回る約130人が出席。市民公益税制PT座長の渡辺副大臣が中間報告内容について講演、その後大阪ボランティア協会の早瀬氏とケア・センターやわらぎの石川氏、シーズの松原とのパネルディスカッション、会場との意見交換などが建設的な議論が活発に行われた。渡辺副大臣は今後もこうしたNPOとの意見交換を引き続き開催し、制度設計を一緒に行っていきたいと述べた。
シーズ鈴木:ご参加ありがとうございます。司会はシーズコミュニケーションディレクター、鈴木です。本日は4月にまとまった市民公益税制PT中間報告を読むことがメインテーマです。どのような議論がなされたのか、今後どのように税制改正が進むのか、ディスカッションできればと思います。
●登壇者紹介
●渡辺副大臣講演
みなさん、こんばんは。圧倒されています。こんな大勢の方が参加されて、お話をすることになろうとは思っていませんでした。打ち合わせ会場に行きますと、椅子が8つほどで、ここでやるんだ、4人ほどおられて、集まりが悪いなと思っていました(笑)。お集まりの皆さんは個人ではできない、しかし、行政は手が回っていない、営利企業も参入していないところで活動されている方だと思います。皆さんの日頃の活動に心から敬意と感謝を申し上げます。
地域でいろいろなNPOの方とお会いします。私がお会いするのは福祉系の方が多いです。まちおこしの方は元々、伝統芸能を保存したり、行政とのつながりが強いことが多く、行政からの支援を受けていることが多い。そういう方は独立独歩でできるのですが、これから活動を始めようというところでは簡単ではない。
それまでNPOとは時間のある方がやっているボランティア活動というイメージがあったが、行政にとって代われるくらいの活動をされるようになり、そのイメージは変わってきました。
前政権では政府税制調査会は学者と有識者、有名な方などで構成されていましたが、今の政権では政治家だけで構成しています。私が担当している総務省は地方税を所管します。国の税制を所管する財務省と、両者で税制調査会を構成しています。そんな中、鳩山総理が「新しい公共」として、寄付文化を根付かせる1つのきっかけとして、寄付税制のあり方を考えるように指示をされ、座長を務めました。
今日ご説明するのは中間報告ですので、まだ生煮えの状況です。みなさんの意向を取り入れて、より良いものを作っていきたいと思います。ぜひ、提言型のご質問をいただければと思います。
(フォーラムの様子 講演する渡辺副大臣 5/11)
【市民公益税制PTの流れ】
私が就任してから、2月2日から3月31日まで、10回のPTを開きました。概ね1時間から1時間半くらいです。第1回は顔合わせですが、第2回は現状の把握ということで、財務省と総務省、内閣府が参加して、税制の現状、NPOの現状を伺いました。日本はNPOのGDPへの寄与度や個人寄付が欧米に比べて非常に小さいことをはじめ、文化的な背景も含めて議論しました。その中で、パブリック・サポート・テスト(PST)の条件、ハードルが高すぎるという話も出ました。民主党が野党時代もその議論はありましたが。国の考え方、党の考え方を出し合って、現状を把握しました。
第3回は有識者として、大阪大学の山内先生に来ていただきました。新しい公共の概念整理、個人寄付の推移や歴史などについて伺いました。阪神淡路震災の時は、多くの団体に寄付が集まったが、その後は低調なこと、日本の場合は金銭寄付よりも時間の寄付が多いことなどをご説明いただきました。これは議論したいところです。政策提言として、寄付控除の対象団体を増やすべきであるということを提案いただいた。
第4回は公益認定等委員会の雨宮孝子さんに事業型NPOが認定を受けにくい点や、イギリスはチャリティ委員会だが、日本は国税庁が所管で、親しみにくい点などを指摘いただきました。また、税制改正だけで、寄付が飛躍的に増えるわけではないというご意見をいただきました。例えば、日本の家計簿のフォーマットに「寄付」の欄がないということでした。
また、その日は松原さんにも来ていただきました。NPO法人の現状と「資金不足、人材不足、参加不足、信頼不足」という課題を、NPOの現場の方からご指摘をいただきました。一般の方の認識に、NPO法人への認知度が低い。また、もちろん知っているんだけれども「時間のある人がやっているボランティアサークル的なもの、未来永劫やってくれるのだろうか、頼りになるんだろうか、という思いがあるようだ」というお話をいただきました。具体的には、PSTなど認定基準の改正や立ち上げ時の支援として「仮認定」制度の導入、みなし寄付の拡充などを提案いただきました。所得控除ではなく税額控除にすべきだという提言をいただきました。政権の認識しているところと一緒です。
第5回は首相官邸を会場に開催している新しい公共円卓会議座長の金子郁容さんに来ていただきました。仮認定制度、認定基準の緩和、企業寄付の促進、自治体の活用などを提案いただきました。ふるさと納税がありますが、あまり活発ではありません。公の信頼を得ているという意味で、自治体が地域のNPOを見ることで、自治体を経由して行き渡るようにする。NPOをウォッチしている自治体をかませるべきではないかという議論がありました。
第6回はNECのCSR推進本部、日本経団連政治社会本部から来ていただきました。寄付税制について企業からのご要望を伺いましたが、特に強い要望はありませんでした。そのため、個人の寄付税制に特化することにしました。NECさんは非常に進んでいるようです。社会貢献の部署はスペシャリストを採用しているわけではなく、一般の社員が人事異動で社会貢献を担当し、また異動していくのが現状です。商品開発・製品開発が最大の貢献と言われればそうなのですが、我々としては、何らかの形で企業が社会貢献をする形をもう少し幅広くできないかと思っています。今後の検討課題です。
第7回は田中弥生先生、少し辛口の意見をいただいた。NPOは市民とのつながりを作りきれていない。また、NPOは行政の下請け化しているのではないか。NPOの自助努力、政府からの自立ができているのか。量から質に変化していかないといけない。PSTの基準は一定程度の厳しさを保っておかないと、質の面でばらつきが出てしまう。質を下げずに、裾野を広げることが重要だというような厳しいご指摘でした。PSTの寄付金比率やガバナンス(統治)の要件を下げるべきではない。ただし、手続きは簡素化すべき。また、ボランティアを金銭換算して計上してはどうか、というお話でした。しかし、時間を換算するとなると、客観的にそれを図る術がないのが現状です。時間給に換算するとしても地域によって平均賃金にばらつきがある。また、時間は自己申告制度となるので、事務所で1時間雑談をしていて、これが貢献したことになるのか、といったことがあり、なかなか難しく検討課題となりました。
また、難民支援協会の石井さんにも来ていただいた。認定NPO法人になるには準備期間も含めて1年間近くかかるようです。認定NPO法人を1つのブランドとして、一生懸命寄付を集めておられます。それでも中々厳しい状況のようです。
8回、9回は我々がまとめを行い、それが今回の中間報告です。
(フォーラムの様子 講演する渡辺副大臣 5/11)
【中間報告の内容】
◇税額控除の導入、PSTなどの見直し◇
一定金額以上寄付者がいればクリアするなどです。ただし、具体的にどれくらいの数値なのか、いくらぐらいの額が妥当なのか、まだまだこれから議論が必要な状況です。記者さんからもお尋ねいただきますが、これは今後NPOの方々と一緒に考えていきます。客観的なデータは総務省も財務省も内閣府も持っていません。1世帯あたり平均3000円というのが家計調査では出ていますが、はっきりしない。ふるさと納税でも、はっきりしない。「篤志家」という言葉があるように、寄付したことはあまり言わないという美徳があるので、誰がいくら寄付したのか分からないことがあります。絶対数で判断するといっても、寄付していないのに名前だけ連ねているという、偽装献金のようなことになってもいけない。しっかりしようと思うと、匿名性も損なわれる可能性があり、議論が必要です。
◇仮認定・認定事務の地方移管◇
認定については、認定基準は国と地方が一緒になって統一的なものを定めるが、認定の窓口や事務を国税庁から地方自治体にお願いしようという議論がある。自治体の担当の方には、現地に行って、ちゃんと事務所があって活動をしているのかをウォッチしていただかないといけない。
仮認定の「一定期間」とはどれくらいなのか。仮認定のメリットはもちろん「税額控除」の対象となる。ただし、仮認定と本認定で優遇内容の差異をどうするのか、例えば控除率やみなし寄付限度額などで差を付ける。また、営利企業とのバランスや仮認定の悪用対策などについて今後の検討していかなければいけません。
◇事後チェック型の制度◇
性善説に立つか、性悪説に立つか。私たちは新しい制度を定着させたいと思っています。しかし、一部でも節税や脱税に利用されるなど制度が悪用されると、制度の信頼性が問われ、見直すようにという意見が出るかもしれない。それにより、せっかくの制度がご破算になってはいけない。悪用されないよう、自治体の窓口などで厳しくチェックをする必要があると思っている。また、仮認定を受けて3年間だけ商売をして、やめてしまうなど、悪意があった団体には全額没収・返還させるなどペナルティを与えないと、制度自体に影響が出る可能性もある。かなり厳しいペナルティが必要だと思う。
また、NPO法人だけではなく、社会福祉法人、学校法人などをどうするかということもある。NPO法人は50%税額控除なのに、なぜ社会福祉法人はそうではないのか、という意見は必ず出てくるだろう。みなし寄付金の割合に差をつけるなどのバランス・差別化が必要だろう。また、認定NPO法人は130法人ととても少ない。認定NPOが一つもない県もある。制度を根付かせるためにメリットを大きくして、社会福祉法人や学校法人の方には、現状維持で少しお待ちいただくということになるだろう。全国に同窓生が多い学校や甲子園に出るような学校は多額の寄付を得られます。しかし、我々としては地域のフリースクールなどに、より沢山の寄付が行って欲しいと思っています。そういう意味では、時間差を設けるなどは必要だろう。
◇地方団体によるNPO法人支援◇
自治体が条例で定めて、独自の地方税の寄付税制が作れるようにしたり、ふるさと寄付金を活用した制度なども必要だろう。
日本では確定申告はよほど所得の高い人しかしません。寄付をしたという領収書を取っておいて、申告をして、初めて帰ってくる。数千円のために煩雑な手続きはしないと思います。企業の経理の方にはご負担をおかけしますが、年末調整のときに控除できるなどの制度を導入しないと根付かないと思います。
欧米ではチャリティをします。プロスポーツ選手などが、自分達が活躍できるのは天から授かったギフトなんだと考え、チャレンジドの方々や家庭が恵まれない人々のため使うべきという日本でもそういう文化を創りたい。寄付税制で、急にこのような寄付文化が広がるとは思っていません。しかし、それがスタートになると思います。NPOに公開性と信頼性を高めていただいて、地域のNPOがどんな活動をしているかを伝えていただいて、市民のお眼鏡にかなった場合は、きちんと寄付が集まる社会を作りたいと思います。ご清聴ありがとうございました。
●パネルディスカッション
パネリスト
・渡辺 周総務副大臣
・早瀬 昇氏(大阪ボランティア協会常務理事・事務局長)
・石川 治江氏(ケア・センターやわらぎ代表理事)
・松原 明(シーズ 副代表理事)
松原:副大臣、ありがとうございました。今のお話を聞いて、石川さん、早瀬さん、ご感想とご意見を。
石川:皆さま、こんばんは。ケア・センターやわらぎの石川です。副大臣、ありがとうございました。大変力強いお話と中身でした。画期的なことです。ケア・センターやわらぎをやりながら、ある時、障害を持った人と出会う前は、いくつかの商売をしていまして、いかに税金を払わないようにするかということを税理士とずっと考えていました。ところが、ある時から「立川駅でエレベーター設置を要求する会」というのを立ち上げたきっかけが、ある障害者と出会ったことなのですが、「僕たちは納税者になりたいんだ。働いて税金を納めたいんだ。」とおっしゃいました。その時、私はそうなのか!とびっくりしました。それから33年間、私は実に清く正しく税金を払ってきました。働いて税金を納めよう。障害を持っていようといまいと、税金を納めるということが生きる証の1つであると思いつつ、頑張ってきました。
ただ、問題は「民主党、大丈夫か」というのが1つです。「頑張れ」という意味ですよ。今度選挙がありますが、私は何党であろうと、私たちの国がやらないといけないことはやらないといけないと思います。寄付税制はその1つです。しかし、振り子が触れると、逆方向に触れる可能性があります。これを実現する方向で進めていただきたい。しかし、仮に、万が一、民主党が政権を取れなかったとしても、これを進めていこう。進めていかないといけないんだ、ということを声に出していきましょう。この会場にいらっしゃる人の後ろには、1人につき100人がついています。私は強く民主党を推している人ではないですが、寄付税制に関しては大きな成果であると思います。ぜひ声に出していきましょう。
また、都道府県・政令市に認定を、というのは、私はぜひ進めていただきたい。市町村や都道府県の人たちにもNPOについて学んでいただきたいし、参加して認識していただくいい機会になると思います。
(フォーラムの様子 石川氏 5/11)
早瀬:大阪から参りました早瀬です。私は社会福祉法人の人間です。税額控除が社会福祉法人にも認められればと期待していたんですが、そう甘くはないですね(笑)でもNPO法人の制度を先に整備するのは重要だと思います。我々は社団法人から社会福祉法人になりました。行政の補助金は26万、委託は2000万、残り8000万は寄付と事業収入という珍しい社会福祉法人です。
4万あって130しかないというのは、全然ダメですよね。だから、新しいPSTを導入するのは重要。そこで、「一定金額以上の寄付者の絶対数で判定する基準を」とありますが、だいたいどれくらいの想定でしょうか?ここだけの話でいいので(笑)それがわかるとイメージしやすいので応援しやすいので、ぜひ。
また、松原さんと私と雨宮さんでアメリカの寄付税制を調べに行ったことがあります。その時にアメリカの国税庁の人に言われたことが忘れられない。アメリカには日本で言う認定NPO法人は非常に多い。どうやってチェックするのかと聞いたら「それは寄付者がチェックする」というのです。PSTの面白いのは、「この団体はアカンな」と思われると寄付が減り、認定から外れるんです。寄付者こそが自分のお金の行方について、一番関心を持つわけだから、そこに信頼を置いていただかないと、いつまでも官僚がチェックする方法を考えていては前に進まないと思います。
渡辺:1世帯あたりの平均は3000円。1人あたり700円~800円程度。それではあまりに安い。「1万円から3万円の間で、50人から100人くらい」という話は出ていました。統計がないので、1人当たりの寄付額の平均と、1団体の平均寄付者のデータがあると議論しやすいかと思います。
石川:そういうデータはないと思う。基本の考え方として、面で展開しないと文化は作れないと考えている。金額はできるだけ低く、2000円以上とか。1万円の寄付をする人はなかなかいない。会場では、「1万円寄付できるという方」どれくらいいますか?おぉ、1/4程度はいますね。
早瀬:ただ、鳩山総理は5割税額控除と言っている。1万円の寄付をすると、2000円が引かれ、8000円のうち4000円が返ってくるということになります。1万円の寄付をする人はなかなかいないが、この制度が実現すれば6000円で1万円寄付できることになるので、かなり変わるのではないか。
石川:介護保険法で言うと償還払い、立替払いになる。後で帰ってくるが、その瞬間は1万円出さないといけない。そういうことも含めて、文化は広く多くの人が参加して形成していく。どのように面で展開するか。データも大事だが、「哲学」として押さえておく必要がある。また、PSTは厳しい方がいいと田中さんがおっしゃったようだが、私は反対です。厳しくすればするほど、どのように抜けようとするかを考える人が増えるだけ。悪い人がいくらいるかという議論をいくらしても意味がない。どんなところにも2割から3割は悪い人がいる。警察官さんにも弁護士さんにも学校の先生にも。そういう2割とか3割に着目した制度にしない方がいい。チェックは寄付者がすればいいのであって、官僚など特殊な人がチェックする仕組みを作る方がしんどいと思う。
(フォーラムの様子 早瀬氏と石川氏 5/11)
早瀬:寄付者の一定数という話になると、名前を出さないといけないことについてです。大阪ボランティア協会は会員制度を作っています。社会福祉法人にとっての会員は実質寄付です。ウェブサイトや事業報告書に名前を載せていいのかというのを聞くのですが、80%の人がOKしてくれています。それほどに名前を出すことについてネガティブかというと、それは疑問です。
石川:やわらぎにいただく寄付も堂々と会報誌に出します。それを断る人はいないです。
渡辺:石川さんからいただいたご質問から。政権はあまり早くに終わってはいけないので、頑張りますが(笑)これは必ずやります。いかなる政権になろうと日本の税制として根付かせます。政権が変わったらなくなったということにしてはいけないと思います。
地方の自治体だと、NPO専門のセクションがなくて企画課のようなところで、兼任でやっているので、専門性がありません。しかし、内閣府から専門家を派遣するなどして育っていかないといけない。
また、寄付を進めるというのは、補助金依存をやめる」ということでもあります。補助金などの口利きの依頼はたくさん来るが、それをやっている限りは役所の下請けから脱却できません。それを卒業して、役所依存をやめないと新しい公共にはなりません。
厳しくすればするほど変なところが抜けるというのについては、どれくらいのハードルが妥当なのか、霞ヶ関や永田町にいるとどうしても性悪説になってしまうのかもしれませんが、少し制度が悪用されるとマスコミなどが一気に報道して、抜本的見直しが必要だという話になりやすいです。
また、寄付名簿についても、法人の場合は抵抗がないかもしれませんが、個人の場合は特に寄付額など気をつけないといけないと思います。
面としての展開という点では、NPOの中にオンブズマンのような団体が必要だろう。互いにサポートしあってより良いものに。寄付者がチェックすることが寄付者を増やすという話があったが、NPO同士がケアしあうような制度になればいいと思いました。
(フォーラムの様子 渡辺副大臣と松原 5/11)
松原:私からも数字の話で、所得控除と税額控除の選択制とあるが、税額控除のパーセンテージについては議論がありましたか?
渡辺:税額控除は50%という議論になっている。個人が半分、政府が半分。お互いが負担をし合って、その真ん中に個人ができない、政府もできない、企業もできないところの公共空間を作るということから、半分半分となっています。ただ、上限がいくらまでなのかはこれからの議論です。気を付けないといけないのは財務省です。自社さ政権時代の武村さんが大蔵大臣として取り組んだ時は、大蔵大臣でも徹底的につぶされました。今回、トップ主導とはいえ、10回の会合で財務省がこれを飲んだ裏に何を考えているのか。実質使えないものにしようとしているのか、もしくは「どうせ日本では寄付は集まらないだろう。何千億とか兆単位で税収が減ることはない。」と考えているのか。いずれにせよ、財務省の鼻を明かすくらいにしたい。寄付文化が根付いてくれば、皆さんも税の恩恵を受けているのだから、補助金は減らしますよということになってくるかもしれない。個人的にはこれは良いかと思う。
松原:後は、自治体の役割について。都道府県と政令市ということになっています。所轄庁の中には内閣府もあるが、それはどうなるのか?
渡辺:内閣府は複雑の象徴です。実に多様な問題をやっています。制度を作る上では国税庁や地方にも入っていただいて全国統一のルールを決めます。内閣府はNPO法人の所管ではあるが、今回の税関係についてはその後は地方自治体がやります。いずれはNPO自体を内閣府にお願いするよりは、地方にお任せして、さらにNPOが自治体をリードするくらいになるのが良いと思う。
松原:お話を伺うと、かなりの抜本改正だが、スケジュールは来年4月1日~ということでしょうか?
渡辺:6月から、地方の方とお話を始めます。同時並行の中で、細部について詰められることは税調のPT内で始めます。秋にはだいたいの目途を立てて、他の税制の議論が始まるときには骨子が固まっているくらいまで持っていきたいと思っています。
石川:その点だと、例えば13ページ。「地方自治体が国税庁長官の認定を受けていないNPO法人への寄付金を条例に基づき指定」などの、こういう点のやり取りはすでに地方と始めている?
渡辺:実務担当者レベルでは既に始めています。ただ、濃淡があって、どうしても首都圏は積極的だが、東京から遠くなるとイメージが湧かないところも多いです。既にこういう制度にしますよ、ということは伝えています。
松原:認定NPO法人制度は国税庁が認定していますが、今の副大臣の話ですと、都道府県と政令市が認定する仕組みに変える。また、条例で指定したNPO法人に関しては国税庁の認定がなくても地方税の減免が受けられる。なおかつ条例で指定されたNPO法人は国税でも認定の扱いをするという話だと思います。従来の国税庁の認定を受けるルート、仮認定を受けるルート、都道府県・市区町村の条例によって指定されるというルートの3つになるということですね。
石川:それはいいと思う。地方で「このNPOがないと困るよね」ということであれば、一方でPSTは厳しくてもいいかなと。
(フォーラムの様子 早瀬氏 5/11)
早瀬:だからといってPSTが厳しくてもいいということにはならないと思う。現実として、社会福祉法人制度も新しい公益法人制度も、都道府県が税制優遇を受ける法人の認可・認定をしているので、不可能な話ではないと思いますが、公益法人制度でも2年以上かかっていますので、大変かなと思います。
渡辺:認定をするのは都道府県と政令市。市はできません。市がやると同じ活動に寄付をしていてもある市の人は優遇を受けられるが別の市の人は受けられないとなる。それは一定で同じように保ちたい。
松原:今の認定要件はある程度生かすのでしょうか?
渡辺:その通りです。
●会場との質疑
参加者A:新しいPSTの1万円から3万円は高いと思います。年会費はだいたい3000円から5000円です。統計はないということだが、会費を調べることはできるのではないかという提案です。
渡辺:なるほどと思いました。手分けしてネットで調べてみます。
参加者B:全国のNPO支援センターの願いが取り入れたことに感謝したいです。年末調整はぜひ実現してほしい。確定申告は基本だが、年末調整でもできる方向を実現していただければ進むと思う。また、地方自治体との関係で、条例で決めるということだが、ふるさと納税は香川県など特定のNPO法人を指定して寄付を集めている事例があります。
渡辺:ふるさと納税で集まっているところは目的がはっきりしているもの。花いっぱい運動や桜並木づくりなどは見えやすいので集まりやすいと聞きました。漠然とした「こういう活動に」というイメージで、条例に制定されていないがお眼鏡にかなった法人に寄付が行くようにしたいと思っています。
八王子市で「ふるさと納税で使い道を決めてNPOに寄付をできます。」という話が報道されていました。これは良いと思って調べたら、5000円しか集まっていないという。漠然としたメッセージでは集まらないんですね。奄美市ではふるさと納税の半分程度は全く島と縁もゆかりもない人とのことだ。ひたむきな姿勢や情熱があるところに寄付が集まるのかなと思いました。
年末調整についてはぜひ実現したいと思っています。よほどの収入がないと確定申告はしません。保険料を書くのと同じように、寄付額と領収書を出せば会社がやってくれるというようにしたい。事務量が膨大になるという方もいるが、私はそこまで膨大になるかなと思う。ぜひ導入したい。
(フォーラムの様子 会場の参加者との意見交換 5/11)
参加者C:手弁当でやっています。しかし、足代もでないようでは定着しません。ようやく文化庁が支援してくれるようになったが、活動をして1年後にしか入らない。専門性という意味では寄付も受けやすい環境にいる。導入時の入り口はぜひ広く取っていただきたい。
また、仮認定を本認定をするにあたっての基準が議論されているというが、本認定後も5年に1度くらいの定期的な認定、チェックも入れるのが良いと思う。補助金に頼らない文化作りというのはその通りだと思いました。
渡辺:定期チェックの話はまさにその通り。国税庁が認定をしても、国税庁も認定後のことはよく分からないのが現状です。これからは裾野が広がりますから、自治体がいくのか、NPOオンブズマンのようなところが行くのか、定期的にチェックして、改善する必要があるならば改善できるような制度へPTの中で検討していきます。
参加者D:年末調整はぜひ実現していただきたい。また、現物寄付について中間報告では触れていないが、土地、建物、株式などについても改善が必要です。租特法40条関連はぜひ検討いただきたいと思います。
渡辺:現物給付、不動産の話も出ていました。税制PTでは相続税の議論も行います。生前贈与をしたときにどうするかは相続税と合わせて検討することになっています。政治主導での「検討」は「結論を出す」ということです。ある方から「四国の山の中にすごい山林を持っている。寄付したい。」という相談を受けたことがあるが、山を1つもらっても何をしていいかわからないこともある。寄付する人も受け取る人にもメリットがあるように考えたいと思います。
参加者E:障害者団体です。NPO法人の使い勝手も議論しながら活動してきました。都道府県や政令市に認可を下ろすのもいいのですが、役人の通知通達・運用のレベルで法の趣旨を捻じ曲げて、真逆のことをやっていることも多くあります。政治主導で通知通達を見直してほしいです。
渡辺:NPO法人のスタッフの年収を聞いてびっくりした。200万円でも多い方でした。生活基盤もないのに、心意気だけではいつか必ずひずみが来て長続きしないでしょう。いいスタッフを揃え、モチベーションを下げないためにも間口を広げることが必要だと思います。
通知通達の話はその通り。役所の通達は法律と同じ効力を持っている。地方はそれに震え上がるわけです。法律は国会で審議がないといけないが、通知通達は役所が恣意的に行うことができます。我々も全ては知りません。そして、これが官僚の力の源です。我々としても厳しく見直すべきものは見直すつもりです。
参加者F:寄付者による監視が一番というお話がありましたが、NPO法人のディスクロージャー(情報公開)については議論されているのでしょうか。ディスクロージャーを義務付け、基準となる額を下げる方が市民オンブズマンによる監視よりも効率的なのではないか。また、この市民公益税制PTや「新しい公共」などの議論が参院選の争点になっていないと思います。党としてどう考えているのでしょうか。
渡辺:ディスクロージャーのお話がありました。活動のディスクローズは当然です。それによってたくさんの寄付者の賛同を得ることにもなるでしょう。しかし、個人情報の問題がある。参考になるのは、政治資金規正法課と思います。インターネットで公開すると悪用する人が出てくるのではないか。正当な理由があれば見られるようにするべきだろうとは思います。公開の基準についてはまだ議論が必要と思っています。
参院選の争点については、これは選挙のためにやっているのではないので、争点になるものではないと思います。個人的には人が善意でやっているものを政治の争点にしたくないというのもあります。ただ、理念の中で何らかの形で分かりやすくアピールしたいとは思っております。
参加者G:感謝を申し上げたいのは山々だが、提案を。最初の一歩を踏み出すのはとても大変です。一定程度の気合と努力、知恵がないと認定は取れません。踏み出す勇気がないといけません。うちの団体が認定にチャレンジしたときは私自身が大きな責任を負いました。また、内閣府のホームページなどで認定NPO法人に寄付をすることを役所として進めるようなメッセージを発信していただきたいと思います。
●まとめ
松原:では最後に一言ずつ。
早瀬:我々自身が税制に関する関心を広げ、制度づくりに後押しすることが必要だと考えました。ありがとうございました。
石川:副大臣が寄付は善意とおっしゃったが、その捉え方では広がらないと思う。「寄付は社会に参加するツール」なのです。「社会にコミットメントしていきましょう」という思いが伝わることが大切だと思いました。
松原:今日のフォーラムで、実はまだまだ議論しないといけないところが多いというのが分かったと思います。方向性は決まりましたが、どのように良いものにするか、これからが勝負です。この議論にはいろいろと意見が欲しいとおっしゃっている。我々も提案をしていかないといけない。我々も頑張ります。
渡辺:具体的な提言をいただいたので、肉付けをできると思います。1回限りではなく、ぜひ2回、3回と開いていただいて、呼んでいただきたいと思います。日本で寄付の土壌をつくる歴史の転換点にいたんだ、という共同作業をさせていただきたいと思います。霞ヶ関にいると狡猾な役人にだまされて違うものになって行きがちだが、そうならないよう、みなさんと議論をしながら進めていきたいと思います。
石井さんがおっしゃっていたが、寄付してください、寄付しましょう、ではなくもう少し自然にできるように、例えば新聞社に呼びかけて、無料で広告を出せるようにするなど、そういうものも進めていきたい。ぜひ、みなさんと一緒に作り上げていきたい。今日は本当にありがとうございました。
(フォーラムの様子 会場の様子 5/11)
●閉会挨拶
・子どもNPO・子ども劇場全国センター 理事 名越 修一氏
名越:シーズ主催、連絡会共催ということで実施しました。渡辺副大臣にも来ていただき、ありがとうございました。今日の議論を聞いて、いかがでしょうか?私は抜本的、画期的なものになると感じました。これまでも認定NPO法人制度は毎年のように改正されてきました。財務省は片方のフタを開けると必ず片方のフタを閉じるようです(笑)。私たちは全国のNPO支援センター39団体でNPO/NGO連絡会というものを組織し、政策提言をしています。こちらにもぜひ加わって、意見を出していただきたいと思います。
いずれにしても政権が変わった今が絶好のチャンスです。新しい公共を担うのは我々NPO法人が中心だと思います。力を合わせ、英知を合わせて、使いやすいものに制度設計していきたいと思います。今日は本当にお疲れさまでした。
※当日のアンケート結果は、下記PDFファイルをご参照ください。
https://www.npoweb.jp/pdf/20100511Questionnaire.pdf
(文責:シーズ・市民活動を支える制度をつくる会 関口宏聡)