行政 : 地方分権会議、中間報告発表
政府の地方分権改革推進会議は、17日、国と地方自治体の事業見直しに関する中間報告をまとめ、小泉首相に提出した。報告では、社会保障に関して、NPO等のさまざまな主体との連携強化に向けた取り組みを行うべきとしている。
地方分権改革推進会議(議長・西室泰三東芝会長)が、この日発表した中間報告「事務・事業の在り方に関する中間報告~自主・自立の地域社会をめざして」は、関係省庁からのヒアリングを経てまとめた。国は多くの分野でナショナルミニマム(国民の最低居住水準)を達成したとして、「地域住民のニーズにこたえ、地域に最適な施策(ローカル・オプティマム)の実現に転換すべきだ」との方向性を打ち出した。
また、「地域における公共サービスは、教育、福祉、都市計画、環境等の分野に分けられているが、今後は、地方公共団体が、地域住民のニーズに応じて最適の組合せで、総合的かつ柔軟に政策を立案し、事業を実施していくためには、可能な限り行政の総合化を実現できることが望ましい」ともしている。
NPOに関しては、「II 事務事業の分野別の基本的見直し方針」の社会保障の分野において、以下のように言及されている。
(2)民間企業、NPO等の多様な主体の幅広い参画による共助社会の構築
社会保障の各種サービスは、既に多様な主体によって供給されているところであるが、利用者の利便向上や各地域の多様な取組みが可能となるよう、一層の民間活力の活用や、NPO等の様々な主体との連携強化に向けた取組みを行うべきである。
近年におけるNPO活動の盛り上がりは、「公は官のみのものにあらず」ということを国民に実感させるに到っている。我が国においてNPOが今後どこまで発展、成熟していくかは別としても、かつてのように官と民の境目に拘っていては、社会保障行政は立ち行かない。
この問題は「官から民へ」という規制改革の流れの中で多くの検討がなされているが、分権改革の立場からも、国による地方への関与が民間主体の参画を妨げていないかとの観点、さらに、単に民間や市場へ委ねるということではなく地方公共団体と多様な民間主体、そして地域住民の協働による共助社会の構築を進める観点から、見直しを進めていくべきものと考える。
既に近年、保育所、ケアハウスといった社会福祉施設の運営が民間企業等の社会福祉法人以外の主体にも解放され、また、それを前提としてそれら施設の公設民営化も進められつつあるところであるが、国は、事例の積み上げを踏まえつつこの流れを一層推進していくべきである。また地方においては、措置から契約への大きな流れの中で、利用者の視点に立ってサービス多様化のための環境整備を図るとともに、客観的な評価や情報提供によって、利用者自らの選択を通じたサービス水準の確保が図られるよう努力すべきである。
また、参考資料として、「社会保障分野における具体的見直し案等」として、以下の施策が言及されている。
II 民間企業、NPO等の多様な主体の幅広い参画による共助社会の構築
・保育所の公設民営の促進【措置済み】
平成12年3月に保育所の設置主体の制限を撤廃し、NPO、株式会社等による保育所の運営を可能にするとともに、平成13年11月に児童福祉法の改正により公設民営を促進する旨を児童福祉法に規定し、国庫補助、起債等について公設民営を行う場合の促進策を講じている。
・公設民営型ケアハウスの整備促進【措置済み】
民間企業等によるケアハウスの設置・運営を可能にするとともに、平成13年度第1次補正予算においてPFI法に基づく選定事業者が公設民営型ケアハウスの設置を行う場合の買い取り費用について国庫補助の対象としている。
・水道事業に関する業務委託【措置済み】
平成14年4月から、浄水場の運転管理や水質管理等、高い技術力を要する業務を他の水道事業者又は当該業務を実施できる経理的・技術的基礎を有する民間事業者等に委託することを可能としている。
○公設民営に関する周知【一部措置済み】
公設民営を行っている自治体の事例を自治体に対して紹介するなどして、公設民営を行おうとする自治体の取組みを支援する。
○民間主体の一層の事業参入【今後の課題、将来的な課題】
地方からの要望も踏まえ、NPO、株式会社などの民間主体の参入の促進のための方策について検討を行う。
この中間報告の全文は、以下の総務省のホームページでみることができる。
http://www8.cao.go.jp/bunken/