行政 : 自然再生でNPOの参加を
与党3党は、5月28日、政策責任者会議で、開発などで損なわれた自然環境を取り戻すことを目的とした「自然再生推進法案」を了承した。地域住民やNPOが事業の立案段階から参加することを法的に位置付けていることに特徴がある。与党三党は議員立法として今国会に提出する考え。
自民、公明、保守の与党3党がまとめた「自然再生推進法案」は、以下のような概要(とりわけNPOに関係する部分を中心に抜粋)となっている。
1.目的
自然再生についての基本理念を定め、実施者の責務を明らかにするとともに、自然再生基本方針の策定その他の自然再生を推進するために必要な事項を定めることにより、自然再生に関する施策を総合的に推進し、もって自然と共生する社会の実現と地球環境の保全に寄与する。
2.自然再生についての定義
「自然再生」とは、過去に損なわれた自然環境を取り戻すことを目的として、関係行政機関、関係地方公共団体、地域住民、特定非営利活動法人、自然環境に関し専門的知識を有する者等の地域の多様な主体が参加して、河川、湿原、干潟、里山、森林などを保全し、再生、維持管理することをいう。
3.基本理念
自然再生は、関係行政機関、関係地方公共団体、地域住民、特定非営利活動法人、自然環境に関し専門的知識を有する者等の地域の多様な主体が連携しつつ、自主的かつ積極的に取り組んで実施されなければならない。
4.国及び地方公共団体の責務
国及び地方公共三体は、地域住民、特定非営利活動法人その他の民間の団体等が実施する自然再生事業について、必要な協力をするよう務めなければならない
5.自然再生基本方針
政府は、自然再生に関する施策を総合的に推進するための基本方針「自然再生基本方針」をおおむね5年ごとに定めなければならない。
6.自然再生協議会
自然再生事業を実施しようとする者(実施者)は、地域住民、特定非営利活動法人、自然環境に関し専門的知識を有する者、土地の所有者等、自然再生事業に参加しようとする者、関係地方公共団体、関係行政機関などから、自然再生協議会を組織しなければならない。
自然再生協議会は、自然再生基本方針に即して、自然再生全体構想を策定し、自然再生事業実施計画を検討し、必要な連絡調整を行う。
7.自然再生事業実施計画
実施者は、自然再生基本方針に基づき、自然再生事業実施計画を作成しなければならない。
自然再生事業実施計画を作成するときは、あらかじめその案について自然再生協議会において十分に協議しなければならない。主務大臣は、この計画および全体構想の写しの送付を受けたときは、公表しなければならない。
8.財政上の措置等
国及び地方公共団体は、自然再生を推進するために必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう務める。
9.自然再生推進会議
政府は、環境省、農林水産省、国土交通省その他の関係行政機関の職員をもって構成する自然再生推進会議を設け、自然再生の総合的、効果的かつ効率的な推進を図るための連絡調整を行う。
10.主務大臣
この法律における主務大臣は、環境大臣、農林水産大臣、国土交通大臣とする。
自然再生事業は、01年7月、小泉首相の私的懇談会「21世紀”環の国”づくり会議」で提唱され、平成14年3月「新・生物多様性国家戦略」に盛り込まれた。
農水、国交省は、従来合同で再生事業を行う体制が出来ていなかったことから、議員立法で法案作成が進められたもの。
これまでは、NPOなどが公共事業に参加する明確な法的根拠がなかったが、法案が成立すると、農水、国土交通省の合同体制が出来るほか、行政委託で里山や森林の草刈り等の維持管理するNPOや地域住民に助成金を出す根拠になるとされている。
内閣府のホームページには、「環の国づくり会議」と「新・生物多様性国家戦略」の詳細がある。
環の国づくり会議
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/wanokuni/dai4/4siryou4.html
新・生物多様性国家戦略
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kankyo/kettei/pdf/0.pdf
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kankyo/kettei/020327tayosei_s.html