行政 : 自民党NPO特委、認定要件緩和を
自民党のNPO特別委員会は、20日、会合を開き、21日より始まる自民党税制調査会に対して、認定要件の緩和を働きかけていくことを決めた。NPO法の改正に関しても、今国会での提出を目指す。
自民党のNPO特別委員会(加藤紘一委員長)は、各省庁やNPO団体からの要望を受けて、「平成14年度税制改正要望(案)」をまとめた。
20日の委員会では、この(案)について検討が行われた。
この会合では最初に、認定NPO法人の申請は10月末までで2件、認定は0件となっていることや、所轄庁の証明書(認定のための)の発行は12件にとどまっている現状が報告された。
報告を受けて、熊代昭彦委員長代理は「認定NPO法人は10月1日から施行が申請が2件しか出ていないと言うことだが、米国並のおおらかな寄付文化を確立したいするのが我々のねらいだった。アメリカに比べて厳しすぎる要件になっているので、米国並にしたい。」と述べ、認定NPO法人の認定要件緩和の要求案について参加議員の意見を募った。
出席した鴨下一郎衆議院議員は、「2件では話にならない。認定要件がややこしいと聞いているが、最低でも認証されたNPOの10%ぐらいが認定NPO法人になれるようにしないと話にならない。」と述べた。
熊代委員長代理は、認定要件の1つである、日本版パブリックサポートテストの「広域性」の要件にふれて、1市区町村内だけに限った活動ではだめで、うち2割は2つ以上の市区町村にまたがって寄付者や受益者がいないとだめという要件を問題視した。
これに対し鴨下議員は、「地域でいい仕事をすることもある。活動地域を限定することで出来るNPO活動の良さもある。」と述べた。
「2割は他の地域をいれてくれというのは、どんな経緯で入った要件だったのか。」と加藤委員長が質問し、内閣府担当者は「国税の減免措置だからそれにふさわしいある程度の広がりをもった活動が望ましいことから、このような要件が入った」と答えた。
これについて、会場から「1市区町村でもうけても、税金は取られるのに。」と要件の妥当性を疑う声が議員からあがった。
奥谷通衆議院議員は、「主税の論理から言うと税調での議論をふまえることが必要になるが、結果的に自治体も国も小さな政府をめざすという大目標を見据えてもらいたい。NPOが結果的に節税に貢献してしたというケースは全国にいくつでもある。」と述べた。
塩崎恭久衆議院議員は、「今回のケースは、かつてSPC(スペシャル・パーパス・カンパニー)の法律ができた後に全く使えない法律であることが分かったのに似ている。大蔵省は1年後に珍しく全面改訂した。ペーパーカンパニーとはそもそも悪であるという発想があったために、使えない法律になっていた。何のためなのかということを分かってもらわないと使えるようにならない。何のために立法者がNPOを認めるのか、哲学を徹底していかないといけない」と述べた。
これらの討論の結果、NPO特別委員会は「平成14年度税制改正要望(案)」の内容で、自民党税調に要望することとなった。
また、NPO法の改正については、「特定非営利活動促進法の改正案・要綱(案)」を検討し、委員長に一任することとなった。
法律改正については、今週22日にNPO議員連盟の会長・事務局長・次長会議で議論をし、合意がとれれば今国会提出を目指すとしている。
閉会にあたり、加藤委員長は、「今、5000ぐらいのNPO法人が認証されていて、10%(500)ぐらいは認定を受けられるようにしてほしいと鴨下先生がおっしゃったが、その通りだ。認定NPO法人制度の案について5、6月ごろ論議したときに、私は会合で、せめて2002年3月下旬には控えめな数として100位の認定がないといけないのではないかと述べた。この現状では(最終的な数は)500どころか、100もいかないという、心配が的中しつつある。塩崎先生がスペシャル・パーパス・カンパニーに例を挙げたが、そのことを思い出した。役所的には来年の3月までやってみて改正案を出すという論理かも知れない。しかし、それまで待っていたのでは、我々の熱意に疑念が疑われるかもしれない。10月から12月までの状況だけででも、改正に向けて政治的に動いていかないといけない。そういう位置づけで税調に望んでいきたい。」として、自民党税調に対して、認定要件の緩和について、第一に要望していくことを決めた。
自民党のNPOに関する特別委員会の「平成14年度税制改正要望(案)」の全文は下記の通り。
平成14年度税制改正要望(案)
非営利組織(NPO)
に関する特別委員会
平成13年11月20日
第一 国税に関する部
I 認定NPO法人の活動を支援するための税制措置
1.寄付金の損金算入枠を公益法人並みに拡大(法人税)
認定NPO法人は、各事業年度において支出した寄付金の額の損金算入限度額を公益法人等と同
等の取扱い(当該事業年度の所得の金額の20%を限度として損金の額に算入することができる)と
する。
(参考:現行)
+----------+---------+---------+
| 認定NPO法人 | 公益法人等 | 学校法人 |
| | | 社会福祉法人 |
| | | 更生保護法人 |
+----------+---------+---------+
|所得の金額の 2.5%の|所得の金額の20%の|所得の金額の50%の|
|範囲内で損金算入可 |範囲内で損金算入可|範囲内で損金算入可|
+----------+---------+---------+
2.「みなし寄付金」制度を公益法人と同様に適用(法人税)
認定NPO法人がその収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業のために支出し
た金額は、公益法人等と同等にその収益事業に係る寄付金の額とみなす(損金算入限度額は、公益
法人等と同等の所得の金額の20%とする。)制度を導入する。
(参考:現行)
+---------+--------+--------+
| 認定NPO法人 | 公益法人等 | 学校法人 |
| | | 社会福祉法人 |
| | | 更生保護法人 |
+---------+--------+--------+
| 適用なし | 適用あり | 適用あり |
+---------+--------+--------+
3.「収益事業」に対する課税についての公益法人と同様の軽減措置(法人税)
認定NPO法人の各事業年度の「収益事業」から得た所得のうち、800万円を超える部分の課
税税率について、「公益法人等」と同様に、22%(現行30%)にする。
・介護サービス事業・地域助け合い活動を行うNPO法人に関する税制上の支援の拡充
4.利子等の所得の公益法人と同様の非課税措置(所得税)
認定NPO法人が支払いを受ける所得税法上の利子、配当等について、「公益法人等」と同様に、
非課税扱いとする。
・国際ボランティア貯金の寄附金充当分の利子非課税措置の創設
国際ボランティア貯金にかかる寄附金充当分の利子について非課税とする。
II その他の公益法人の活動を支援するための税制の改善
1.特定公益増進法人制度の改善(所得税、法人税)
1) 認定期間の延長 2年 → 5年
2) 認定基準の客観化及び明確化
3) 認定基準及び手続きの改善
ア 認定基準自体を改善し、分かりやすく法定化するとともに、情報を十分公開する方
策を講じる。
イ 申請書類の統一化と簡素化
ウ 審査期間の短縮
(ア) 新規6ヶ月以内
(イ) 更新3ヶ月以内
(ウ) 不決定の場合は、文書によりその理由を交付
(エ) 法令の解釈の統一
4) 損金算入の限度額の改善
当該年度の法人の所得金額の5%相当額以内とする。
(現在は、資本金の0.125% + 所得金額の1.25%相当額。資本金のない場合は
所得金額の2.5%相当額。一般寄附金の限度額も、現在は、特増法人に係る限度額と
同じ。)
2.特定公益増進法人の範囲の拡大(所得税、法人税、相続税)
・ 地球温暖化の防止、循環型社会の形成等についての優れた環境保全活動を行う者に対する助成
金の支給を主たる目的とする法人(環境NPO)
・ 環境の保全に関する普及啓発を主たる目的とする法人(環境NPO)
・ 犯罪行為の発生後速やかに被害者を援助することにより被害の早期の軽減に資することを目的
として設立された営利を目的としない法人で、都道府県公安委員会の指定を受けて、相談、直接
的支援、犯罪被害者等給付金の申請補助等の事業を行う犯罪被害者等早期援助団体(指定制度は、
今年の犯罪被害者等給付金支給法の一部改正により新設され、来年4月から施行)
3.その他の民法公益法人(財団法人及び社団法人)に寄附金控除制度を創設
(所得税、法人税、相続税)
認定NPO法人と同一の基準で認定民法公益法人を決定し、認定NPO法人と同様の寄附金税制
を創設する。
第二 地方税に関する部
I 認定NPO法人の活動を支援するための税制措置
1.寄附金の損金算入枠を公益法人並に拡大(法人住民税法人税割、法人事業税)
認定NPO法人が各事業年度において支出した寄附金の損金算入限度額について、「公益法人等」
と同様に、当該事業年度の所得金額の20%(現行:所得金額の2.5%)を限度として、損金算
入することができるようにする。
2.「みなし寄附金」制度を公益法人と同様に適用(法人住民税法人税割、法人事業税)
認定NPO法人が「収益事業」に属する資産のうちからその「収益事業」以外の事業のために支
出した金額は、「公益法人等」と同様に、その「収益事業」に係る寄附金の額とみなす(損金算入
限度額は、「公益法人等」と同様に所得金額の20%とする。)制度を創設する。
3.「収益事業」に対する課税の公益法人と同様の軽減措置(法人住民税法人税割、法人事業税)
認定NPO法人の各事業年度の「収益事業」から得た所得のうち、800万円を超える部分の課
税税率について、「公益法人等」と同様に、22%(現行30%)にする。
・介護サービス事業・地域助け合い活動を行うNPO法人に関する税制上の支援の拡充
4.利子等の所得の公益法人と同様の非課税措置(法人住民税利子割)
認定NPO法人が支払いを受ける所得税法上の利子、配当等について、「公益法人等」と同様に、
非課税扱いとする。
5.個人が認定NPO法人へ寄附した場合の所得控除の創設(個人住民税)
個人が認定NPO法人に対して支出した寄附金の額について国税と連動して、地方公共団体、住
所所在の道府県の共同募金会及び日本赤十字社支部に対する寄附金とは別に、総所得金額の12.5%
相当額から1万円を控除した額を限度として所得控除の対象とする。
+------------------------------------------+
|(現行)個人住民税において寄附金の控除が認められている対象は、都道府県、市町村、特別|
| 区、住所所在の都道府県にある赤十字社、住所所在の都道府県にある共同募金に限定|
| されている(公益法人等も控除の対象とならず)。 |
+------------------------------------------+
6.図書館等の設置を主たる目的とする認定NPO法人に対する非課税措置の創設
図書館、博物館の設置を主たる目的とするような認定NPO法人に対して、公益法人に準じて法
人住民税の均等割及び法人税割、固定資産税並びに不動産取得税の非課税措置を講じる。
II その他の公益法人の活動を支援するための税制の改善
1.特定公益増進法人制度の改善(法人住民税)
1) 認定期間の延長 2年 → 5年
2) 認定基準の客観化及び明確化
3) 認定基準及び手続きの改善
ア 認定基準自体を改善し、分かりやすく法定化するとともに、情報を十分公開する方
策を講じる。
イ 申請書類の統一化と簡素化
ウ 審査期間の短縮
(ア) 新規6ヶ月以内
(イ) 更新3ヶ月以内
(ウ) 不決定の場合は、文書によりその理由を交付
(エ) 法令の解釈の統一
4) 損金算入の限度額の改善
当該年度の法人の所得金額の5%相当額以内とする。
(現在は、資本金の0.125% + 所得金額の1.25%相当額。資本金のない場合は
所得金額の2.5%相当額。一般寄附金の限度額も、現在は、特増法人に係る限度額と
同じ。)
2.特定公益増進法人の範囲の拡大(法人住民税)
・ 地球温暖化の防止、循環型社会の形成等についての優れた環境保全活動を行う者に対する助成
金の支給を主たる目的とする法人(環境NPO)
・ 環境の保全に関する普及啓発を主たる目的とする法人(環境NPO)
・ 犯罪行為の発生後速やかに被害者を援助することにより被害の早期の軽減に資することを目的
として設立された営利を目的としない法人で、都道府県公安委員会の指定を受けて、相談、直接
的支援、犯罪被害者等給付金の申請補助等の事業を行う犯罪被害者等早期援助団体(指定制度は、
今年の犯罪被害者等給付金支給法の一部改正により新設され、来年4月から施行)
3.その他の民法公益法人(財団法人及び社団法人)に寄附金控除制度を創設
(法人住民税、個人住民税)
認定NPO法人と同一の基準で認定民法公益法人を決定し、認定NPO法人と同様の寄附金税制
を創設する。
第三 認定NPO法人の認定要件の緩和
1.「広域性」要件の削除
直前2事業年度における寄附者、受益者、特定非営利活動実績のいずれかに、一市区町村(指定
都市の区を含む。)を超える広がりがある(一市区町村内は最大で80%)との要件を削除する。
2.国際機関・公益法人からの助成金の不算入
国際機関・公益法人からの助成金についても国及び地方公共団体からの補助金と同様に総収入金
額・寄附金総額いずれにも不算入とする。
3.日本版パブリックサポートテストの計算式の修正・緩和
(1) 総収入金額等(いわゆる分母)に占める受入寄附金総額等(いわゆる分子)の割合を、初回の
認定においては5分の1以上に緩和し、2回目以降は現行の3分の1以上とする。
(2) 総収入金額等の計算においては、総収入金額から特定非営利活動に係る事業収入のうち対価を
得て行った事業収入の収入金額を控除できるようにする。
(3) 役員・社員からの寄附金が分子に算入できないという規定は撤廃し、役員・社員の寄附金も算
入できるようにする。
+----------------------------------------+
|(現行)寄附金総額のうちに役員及び社員から受け入れた寄附金の額の合計額の占める割|
| 合及び社員の数の占める割合がいずれも50%以下である場合には、社員から受|
| け入れた寄附金を寄附金総額から控除する必要なし。 |
+----------------------------------------+
(4) 寄附金の算定対象外を1,000円(現行3,000円)未満とし、寄附者の氏名等は抜き取
り検査を行うこととする。
(5) 基準限度額の計算は、総収入金額等の2%(現行、受入寄附金総額の2%)とする。
(6) 社員からの会費に関しては、総会での議決権は、会費の反対給付とはみなさないこととし、寄
附金的な性格の場合には、分子に算入できることとする。
+----------------------------------------+
|(現行の認定要件・基準) |
| 直前2事業年度における総収入金額のうちに占める寄附金及び助成金の額(寄附金総 |
|額)の割合が1/3以上 |
| |
| 「総収入金額」・「寄附金総額」の主な算定方法 |
| 〇 1者からの寄附金及び助成金は、寄附金総額の2%を超える分は寄附金総額の計|
| 算上不算入 |
| ○ 役員又は社員から受け入れた寄附金は寄附金総額の計算上不算入(注:上記(3))|
| 〇 国又は地方公共団体の補助金等は算定の対象外(総収入金額・寄附金総額いずれ|
| にも不算入) |
| 〇 1者につき年間3,000円未満の寄附金、寄附者の氏名又は名称が明らかでな|
| い寄附金は算定の対象外(総収入金額・寄附金総額いずれにも不算入) 等 |
+----------------------------------------+
4.共益団体等の排除の規定の緩和
(1) 会員等に対価を得て資産の譲渡等を行う活動や会員等への連絡・交換を行う活動に関する制限
については、会員名簿に掲載されている人に限定する。
+----------------------------------------+
|(現行)会員に関しては、「継続的に若しくは反復して資産の譲渡等を受ける者又は相互|
| に交流、連絡若しくは意見交換に参加するものとして、NPO法人の帳簿書類等|
| に氏名又は名称が記載された者であって、そのNPO法人から継続的に若しくは|
| 反復して資産の譲渡等を受け、又は相互の交流、連絡若しくは意見交換に参加す|
| る者」。(措置法規則22の11の2(6))。 |
+----------------------------------------+
(2) 特定者や特定の著作物の普及・宣伝活動に関する制限は、「地域おこし」などについては適用
除外とする。
5.役員・社員の親族要件等の緩和
(1) 親族等や特定の法人の従業員等の役員・社員に占める割合に関する制限を課すのは役員に限定
し、3親等(現行、6親等)までとする。
(2) 親族等の範囲に「役員(社員)と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあ
る者」も入っているが、これは除外する。(他の要件でも親族等の範囲から除外する)
6.宗教・政治活動の制限の緩和
(1) 宗教活動・政治活動の全面禁止となっている要件を「主たる事業活動を行っていないこと」と
する。
7.海外の送金に関する届け出の緩和
(1) 海外に送金する場合の事前届出は一定金額以上(200万円以上)にする。
(2) それ以下の金額の送金の場合は、一年間まとめて事後届け出とする。
8.情報公開の内容の緩和
(1) 役員・従業員の給与は全員の給与金額を公開することとなっているが、従業員に関しては上位
5名までとする。
(2) 20万円以上の寄附をした者の名簿を公開することとなっているが、この金額を引き上げる。
9.単年度主義の撤廃
(1) 認定要件で、単年度でチェックする方法を、2事業年度(延長した場合は、4~5事業年度)
の合計でチェックする方法に変更する。
10.法人の規模による認定要件の緩和
(1) 法人の事業規模によって、認定要件のハードルの高さに段階を設け、小さな法人でも認定が受
けやすくする(情報公開、届け出などの難度を減らすなど)。
11.申請書類の簡素化
(1) 認定要件の緩和と平行して、申請書類の簡素化を行う。
(2) 法人の事業規模などにより、情報公開の内容の程度を変える。
12.認定の有効期間の延長&認定審査期間の明確化
(1) 認定期間を2年間から5年間に延長する。
(2) 認定申請に係る期間を明文化する。(原則的に6ヶ月~3ヶ月以内程度)
13.認定に更新の仕組みの導入
(1) 認定NPO法人の認定が切れる前に、更新の申請ができるようにして、認定期間がとぎれない
ようにする。