行政 : 緊急雇用、NPOへの委託は計21億5千万円
「緊急地域雇用特別交付金」で、平成12年度末までの実績では1330億円が使われ、そのうちNPOに委託された金額は21億5千万円であることがわかった。民主党の公開ヒアリングで主催者が説明した。
2001年11月21日(水)午前9時から、「NPOに関る『平成13年度補正予算&平成14年度予算概算要求概要』公開ヒアリング」という催しが、東京永田町の民主党本部で開催された。厚生労働省から担当者を招いてのヒアリングで、主催は民主党組織委員会NPO局。
平成13年度の補正予算が決定したが、そのうちの63億円以上はNPOも使える予算であり、かつ平成14年度予算について各省が概算要求した中には、NPOが使えるものが合計で1500億円を超えるという。ところが、こうした情報がNPOに行き届いていないことから、各省のなかでもとりわけNPOに関係の深い厚生労働省から担当者を呼んで、NPOに関連する予算内容などを公開で聞こう、というのがこの催しの主旨であると、主催者から説明があった。
朝早くからの催しだったが、高齢者や障害者、また子ども関連のNPOからの参加者が目立っていた。
会は「子育て」「雇用」「介護」の3部に分けて進められた。
第1部の「子育て関連事業」では、厚生労働省の雇用均等・児童家庭局少子化対策企画室の担当者から、平成14年度の予算概算要求のうち、NPOが関係する予算として「つどいの広場事業」と「子育てNPO等に対する支援の実施」について説明があった。
「つどいの広場事業」とは、公民館などの公共施設や商店街の空き店舗などの社会資源を活用して、育児に不安や悩みを抱える親などが気軽に集い交流できる場を提供し、ボランティアの子育てアドバイザーによる相談などを実施するもの。実施主体は市区町村だが、市区町村からNPO法人や株式会社等への委託もできるという。この事業への予算概算要求額は、約1億5千9百万円とのことだった。
一方、「子育てNPO等に対する支援の実施」は、(財)こども未来財団が以下の者の育成と資質向上のための研修を行うもの。
(1) 子育てNPO指導者(子育てNPOの代表者等)
(2) 子育てサークルリーダー(子育てサークルの指導的立場にある者等)
(財)子ども未来財団が行うこれらの研修に、約3500万円が予算要求されている。
第2部の「雇用」については、まず厚生労働省の職業能力開発局から、平成13年度の補正予算および平成14年度予算要求で「民間活力を活かした多様な能力開発機会の確保・創出」に係る部分で、NPOが関連することなどが説明された。
具体的には、13年度の補正予算では、中高年ホワイトカラー離職者等に対する職業能力開発の強化について、総額では63億円が決定しており、対象となる離職者は5万6千人だという。このうち、予算でいうと約5千万円程度(約1千人の離職者が対象)が、NPOを起業したり、既存のNPOで管理部門を担うなどするプログラムに使われる。ハローワークから斡旋を受けた離職者が、NPO法人で受講(座学や実習)する内容とのことだ。NPO支援団体などの関係機関と連携して、いわゆる職業訓練の委託先をNPO法人とするモデルの実施ということである。(文末「会場配布資料」の一部を参照)
同省の職業安定局雇用開発課の担当者からは、「緊急地域雇用特別交付金」について説明があった。現行の「緊急地域雇用特別交付金事業」は、平成11年度から平成13年度末までのもので、交付金総額は2,000億円。平成12年度末までの実績では1330億円が使われ、そのうちNPOに委託された金額は21億5千万円という。
また、平成14年度から16年度末までの、「緊急地域雇用創出特別交付金」も決定している。これは、3年間で総額3500億円を都道府県に交付。都道府県は交付金を財源として基金を造成し、都道府県と市区町村がこの財源で事業を実施する。このときに、NPOも委託を受けることができる。担当者からは、「地域で必要なこと」を「人を雇い入れて、つまり人件費を払って」やって欲しい、ということであった。また、現行の交付金の13年度末までの分と、14年度分については、現在、各地で企画が進められているところなので、自治体の窓口にアプローチして欲しい、とのことである。
第3部の「介護」については、厚生労働省老健局総務課の担当者から説明があった。
まず、ケアハウス(介護利用型軽費老人ホーム)の設置主体を、NPOを含めて民間企業等に拡大し、PFI制度を活用した公設民営型による整備を促進することが、来年度に向けて、すでに今年度の補正予算でも先だおしで認められたという。
PFI(Private Finance Initiative)制度とは、簡単にいうと、民間が建設した施設の1/2を国が、1/4を都道府県が負担するもの。PFI法に基づく選定を受けた事業者(十分な経済的基盤があるなどの要件を満たし、県知事が許可した事業者)に途が開けるという。
また、ケアマネジメントの地域のリーダーを育成する事業には、平成14年度は3,5億円が予算要求されている。これは、全国に1800人のリーダーを養成して、ケアマネジャーの支援を行うもの。
平成15年度4月からの改定を睨んで、介護報酬見直しに向けた実態調査や、システム改修にも40億円の予算要求がされている。
「介護予防・生活支援事業」には、500億円が要求されている。この事業は、高齢者が要介護状態にならないよう、外出支援サービスや転倒予防教室、また家族への支援などを行うもので、実施主体は市町村だが、そこからNPOへの委託も有り得るとのことであった。
以上の説明を受け、参加したNPO関係者との質疑応答があった。その中で目立ったのは、「補正予算が通ってすぐに自治体の窓口に行っても、すでに使途は決定していると言われて、けんもほろろである」「社会福祉法人があるからNPOの余地はないと言われる」などという訴えであった。
司会者からは、せっかく国の予算があっても、自治体によっては仕事が増えるので申請しないところもある。NPOから揺り動かしていく熱意が必要だろう、というコメントがあった。また、厚生労働省だけではなく、今後、他省庁の担当者も呼んで公開ヒアリングを実施することも検討するとのことだった。
【会場での配布資料の一部】
厚生労働省
平成13年度補正予算による職業能力開発局
NPO関係事項の概要
○ 中高年ホワイトカラー離職者等に対する効果的かつ多様な職業能力開発の強化
中高年ホワイトカラー離職者等の職業能力開発を通じた再就職の促進を図るため、専修学校等の民間
教育訓練機関に加え、NPO法人、大学・大学院等を新たに活用した委託訓練を実施するとともに、
早期就職支援を推進する(対象者数計5万6千人、うちNPO法人に係るもの約1千人。中高年ホワ
イトカラー等のNPO起業等による就業を支援するため、NPO支援センター等の関係機関との連携
の下、NPO法人等を活用した委託訓練を新たにモデル的に実施する。)。
平成13年度補正予算額(事業全体) 6,311百万円