行政 : 政府税調中期答申、NPO税制に慎重姿勢
政府税制調査会(首相の諮問機関)は14日、21世紀初めの税制のあり方を展望した中期答申「わが国税制の現状と課題~21世紀に向けた国民の参加と選択」を発表した。
中期答申は、全体で400ページ近くある膨大な報告書となっており、租税の意義と役割から、電子商取引と税制や、環境問題など、広範囲な税制に関する問題を扱っている。
公益法人およびNPO法人に関しては「二 法人課税」の章の「1. 法人税」で、「(6)公益法人等」「(7)NPO法人」
としてそれぞれ独立して扱われている。
NPO法人の税制については、
「NPO法人に関する税制上の措置については、その実態を見極めた上で、相当の公益性を担保するための基準や仕組みをどのようにするかを含め、広範な観点からその検討を進めていかなければなりません。」
と慎重な姿勢を崩していない。
関連部分の全文は以下の通り。
(6)公益法人等
現行法人税法は、財団法人、社団法人、宗教法人、社会福祉法人、学校法人などの公益法人等、人格のない社団等、NPO法人などについては、その営む事業が一般法人の営む事業と競合する場合については、課税の公平性・中立性の観点から、その収益事業から生じた所得に対しては法人税を課税することとしています。現在、収益事業として物品販売業、請負業をはじめ33の事業が定められていますが、近年公益法人等の各種団体の行う事業内容が次第に拡大し、かつ多様化してきている中で、民間企業が行う事業内容との間に大きな違いがなくなってきているのではないかと考えられます。
したがって、現在収益事業とされていない事業であっても民間企業と競合するものについては、これを随時収益事業の範囲に追加していくことが適当です。しかし、そうした対応に限界があるとすれば、公益法人等が対価を得て行う事業については、原則として課税対象とし、一定の要件に該当する事業は課税しないこととするといった見直しなどを行うことも考えられます。いずれにしても、公益法人等が行っている事業には様々なものがあることから、公益法人課税についての見直しを行う場合には、まず、その実態を十分把握する必要があります。
また、本来収益事業に該当する事業であっても、特定の公益法人等が営む一定の事業については、その法的位置付けなどに着目して、課税の対象とされていないものがあります。しかし、課税の公平・中立の観点からは収益事業課税の原則に則ることが適当であり、この制度については、一般法人の営む事業との競合の実態などを踏まえ、そのあり方について検討していくことが必要ではないかとの意見があります。
公益法人等の利子・配当などの金融資産収益については、収益事業に属するものを除き、法人税が非課税とされています。金融資産収益については、会費や寄附金収入とは異なり、公益法人等の段階で新たに発生した所得であって経済的価値においては現在収益事業とされている金銭貸付業から生じた所得と同じであることなどから、公益法人等に対しても一定の税負担を求めてもよいのではないかとの指摘もあります。
なお、一部の公益法人等の活動について批判がなされることがありますが、当調査会としては、公益法人等が課税上の特典を享受していることを十分自覚するとともに、主務官庁が適時適切にその業務運営などの適正化を図ることを強く期待します。
(注)公益法人等に対する課税については、近年の税制改正において、収益事業課税の適正化の観点から、収支報告書制度の導入や寄附金の損金算入限度額の特例に係る限度額の引下げが行われています。
(7)NPO法人
近年、ボランティア活動・非営利活動の重要性についての認識が高まってきたことなどを踏まえ、平成10年3月にNPO法(特定非営利活動促進法)が成立しました。同法は同年12月に施行され、その附則などにおいて、税制を含めた制度全体の見直しを早期に行うこととされています。
NPO法人は、非営利活動の担い手の一つとして、21世紀に向けて活力のある経済社会を構築していく上で今後その役割を果たしていくことが期待されています。
現在、NPO法による法人格の取得が進み、またNPO法人としての事業初年度を終えたものも出てきており、今後、まずはその活動の内容や業務運営などの実態を十分見極めていく必要があります。
NPO法人制度は、そもそも公の関与からなるべく自由を確保するという制度となっています。NPO法では、行政の裁量を極力排する観点から、申請内容が形式的な要件を満たす場合には、所轄庁は申請団体をNPO法人として認証しなければならないこととされています。一方、税制上の優遇措置を設ける場合については、課税の公平を確保するため相当の公益性を担保する必要があり、それを判断する基準と仕組みが必要です。諸外国においてもそうした基準や仕組みが備わっています。
例えば、アメリカやイギリスでもNPO法人と同様の非営利団体に対する税制上の優遇措置が講じられていますが、その対象となる団体については、法令などにおいて、その行う事業が慈善・科学・教育などを目的とすることや収入金額のうち一定割合以上の寄附を受けていること、本来目的の活動に実質的にすべての所得が充てられること、活動内容や寄附金、役員に関する詳細な情報を公開することといった様々な基準が定められており、さらに、政治活動、内部関係者との取引や役員の報酬などに厳しい規制が設けられています。また、このような基準に基づいて、アメリカでは内国歳入庁(IRS)が、イギリスではチャリティ委員会が内国歳入庁(IR)などと協議しつつ、審査を行っています。
また、NPO法人に関する税制の問題は、NPO法人制度や公益法人制度のあり方、寄附金税制のあり方、さらには補助金制度のあり方などにも関連する問題であることに留意しなければなりません。
NPO法人に関する税制上の措置については、その実態を見極めた上で、相当の公益性を担保するための基準や仕組みをどのようにするかを含め、広範な観点からその検討を進めていかなければなりません。