行政 : NPO法人申請の現状
全国のNPO法人化の申請は、12月1日~2月末日までで全国で352件にのぼった。
各都道府県を比べてみると、やはり東京都がダントツで、82件。続いて、大阪30件、神奈川20件、北海道18件、福岡16件と大都市を擁する都道府県が続いている。経済企画庁も30件となっている。
大都市を擁しているのに以外と少ないのが、愛知の5件だろう。NPO関係のイベントやNPO法の立法運動においても、名古屋市などでは一定の盛り上がりがあっただけに少し意外である。
2月末時点で、まだ申請がない県も4県ある(福井、和歌山、鳥取、鹿児島)。しかし、これらの県でも相談に来ている団体はあるといい、3月中に申請受理を予定している県もあるようだ。
経済企画庁によれば、昨年12月初頭と年末にまとまった数の申請があった他は、平均して毎週20件づつ全国で申請があるという。分野別でいえば、全体の約7割が福祉分野に関係する団体となっているとしている。
一方、統計の数字には出てこないが、いったん申請した後、申請を取り下げている団体もかなり出ているようだ。
北海道庁では、12月1日に8件の申請があったと報道されたが、現在12月1日付受理となっているのは、1団体だけである。7団体が申請を取り下げたことになる。
このような申請の取り下げは、申請した後に書類の不備や記載ミスなどが発見され、申請団体が取り下げてから再提出を行っているようだ。
■法人認証出る
法人認証第一号は、北海道の「ふらの演劇工房」である。北海道庁が、2月23日付のプレスリリースで発表した。
北海道富良野市に事務所があり、法人の目的は、『演劇文化の創造と発信に関する事業を行い、「演劇のまち富良野」として地域文化の形成に寄与する』(プレスリリースから)となっている。
法人として成立するためには、認証書受取後に登記所に登記をする必要があるので、まだ特定非営利活動法人成立とはいえないのだが、ほぼこれでNPO法人という存在が社会に現れたといっていいだろう。
北海道に続いて、2月25日には岡山県で3件、茨城県で2県の法人認証が出ている(別表参照)。
3月中に認証を出す県も確実にあることから、NPO法人は、3月末までにはもう数件でる見込みである。
しかし、経済企画庁や東京都をはじめとする大半の都府県では、4月以降に認証を出すとしており、まとまった数の法人が誕生するのは、5月以降であると予想されている。
■都道府県の対応
都道府県の対応も、申請が少なかったり、定常化してきたりしており、ほとんど落ちついてきたといえるだろう。
一方で、市民団体からの法人化に関する相談内容が多様化しており、かなり担当者が苦慮する状況も増えてきているようだ。
窓口の対応も所轄庁(都道府県)によって様々で、申請にいくと丁寧に申請書類を2~3時間かけてチェックする所轄庁もあれば、書類の枚数や形式だけ整っていることだけを10~20分でチェックして終わりという所轄庁もある。
シーズでは、2月初めに、全都道府県に対して、申請状況に関するアンケートを実施した。
結果のダイジェストは、加盟団体宛のニュースレターに掲載しているので参照していただきたい。
■市民団体の対応
市民団体の側の法人化の動きも落ちついてきている。
法人化をまっていたグループの間では、この2~4月くらいが設立総会の時期にあたるようだ。
決算と予算の時期なので、ちょうどいいのだろう。シーズの周りでも設立総会が相次いでいる。
制度に関して言えば、まだまだ知っている人が少ないのが現状だ。
市民団体関係者でようやく、各団体が法人化する、しない、といった議論が交わされるようになってきている。
シーズに寄せられる相談でも、12月初旬にあったような「どうしたらいいのか分からないので助けてほしい」的な内容はめっきり減っている。
むしろ「定款を作ったので見てほしい」といった具体的な内容のものが増えている。
■法人化の新たな問題点
申請した団体のうち、どれだけの団体が認証されるのかは不明である。
筆者が東京都で申請書類を縦覧したときの印象では、2~3割の団体が不認証になる可能性があると思えた。
一番大きな理由は、書類内容の不備が多いことだ。本来事業と収益事業の区分を間違えていたり、収支予算書の計算が合っていない、定款の絶対的記載事項が欠けているなどのきわめて初歩的なミスが目立った。
NPO法の問題点として、申請書類の種類が多いことと、その書式が難しいことがよく話題になる。確かに、無駄な書類が多いのは事実だが、一方で、収支予算や事業計画、定款などがきちんと作れないのも法人となる以上は問題に思える。無駄な書類を今後無くしていくことも重要だが、一方で、これくらいの書類ならばすぐ作ってしまえるという程度の経営力を養うことも重要だろう。
法人化に際しては、不動産などに関する譲渡課税の問題も発生している。(新聞記事参照)。任意団体で土地を所有していたりする場合、法人化したら、譲渡税が課税されるというものだ。
このため、土地や建物を持っている団体が法人化するのに大きな障害となることと予想され、一刻も早い改善が要望される。
【 別表 】
認証された日付、所轄庁、団体名
定款に記載された目的&事業
99.02.23、北海道、ふらの演劇工房
富良野地域の人々また富良野を愛する人々に対して、
演劇文化の創造と発信に関する事業を行い、地域の恵まれた自然環境を舞台として、演劇の持つ「癒す」「育む」という可能性に着目しながら、演劇活動から生まれる感動を共有し、「演劇のまち富良野」として地域文化の形成に寄与することを目的とする。
(事業略)
99.02.25、茨城県、おおぞら
この法人は,知的障害者の社会的自立活動の増進を図るため、知的障害者及び当該主旨に賛同する協力者で事業を行い、より多くの知的障害者が社会参加できる場を増やす事を目的とする。
- 知的障害者の社会的自立に向けた教育訓練事業及びその指導者育成事業
- グループホーム、レスパイトサービス等の事業
- その他、この法人の目的を達成するために必要な事業
99.02.25、茨城県、ジュース
この法人は,競技スポーツ,生涯スポーツ及び学校体育(以下「スポーツ」という。)に関わるすべての人々に対して,男女共同参画社会の形成の促進を図る手段として,スポーツにおける女性の参加促進,女性がリーダーの地位に就く機会の増加を促すとともに,女性の資質と社会的地位の向上を目指し,スポーツの教育・振興に関与する国内的および国際的な組織との連携によって,啓発および支援活動を行い,もって社会全体の利益の増進に寄与することを目的とする。
- スポーツにおける女性指導者・研究者等への支援事業
- 男女共同参画社会とスポーツをテーマとした啓発事業
- 女性スポーツに関する国際会議等の開催事業
- 国内外の女性スポーツ活動の情報ネットワーキング事業
- 女性スポーツに関する調査研究事業
- 前各号の事業を達成するために必要な事業
99.02.25、岡山県、B.L.L
この法人は、社会的不平等や基本的人権の侵害を受けているものに対し、社会的・経済的権利の確立のための支援活動と人的交流を行い、自立を達成するという成果を得ることを持って、人権の擁護又は平和の推進を図る活動、国際協力の活動に寄与することを目的とする。
- 南アフリカ共和国及びインド等のマイノリティーに対する支援活動と交流事業
- 前号に掲げる事業を推進していくための日本国内における人材育成事業
99.02.25、岡山県、岡山県仲人連合会
この法人は「結婚は家庭をつくる」という基本的考え方のもと、身体障害者・再婚者・高齢者の結婚推進につとめ、不特定かつ多数の幸福の増進に寄与することを目的とする。
- 身体障害者、再婚者、高齢者の結婚相談コーナーを開設しその推進活動を行う
- 未婚者を対象に結婚セミナーを開催
99.02.25、岡山県、ホープ就労・生活支援センター
この法人は、当センターに所属する会員(知的障害者・精神障害者等)及び地域の心身障害者に対して、生活支援に関する事業等を行い社会福祉に寄与することを目的とする。
- このセンターは、当センターに所属する人達及び地域に住む心身障害者の人達の生活を支援することを目的とする。
- 障害を持つ人達が、親なき後も安心して暮らせるよう生活の支援をしていくことを目的とする。
- 進路・就労に関する相談及び指導、助言を行う。
- 生活支援事業:生活相談、生活支援等
- 進路相談事業:進路相談、就労相談
- 余暇活動事業:レクレーション、料理教室等