行政 : 新税制、認定の可能性は約2%
シーズの試算で、改正NPO支援税制のもとで認定の可能性が出てくるNPO法人は、法人全体の2.0%程度になるという数字が明らかになった。これは、シーズが昨年夏、実施したNPO法人実態調査で得たデータに、新しいNPO支援税制の要件をあてはめて算出したもの。
シーズの試算で、改正NPO支援税制のもとで認定の可能性が出てくるNPO法人は、法人全体の2.0%程度になるという数字が明らかになった。これは、シーズが昨年夏、実施したNPO法人実態調査で得たデータに、新しいNPO支援税制の要件をあてはめて算出したもの。 シーズ=市民活動をささえる制度をつくる会では、改正NPO支援税制のもとで、どのくらいのNPO法人が認定を受けることができるかについて試算を行った。これは、シーズが昨年実施したNPO法人実態調査で得たデータに、今年4月1日から施行される改正NPO支援税制の要件をあてはめて算出したもの。
認定要件の試算は、すべての認定要件ではなく、法人化して2事業年度経過していること、パブリックサポートテスト、共益性排除の要件、組織運営の要件といった代表的な4つの要件について行ったものである。
手順は以下の通り。
まず、昨年のアンケートでは、「法人化してから2事業年度経過した法人であること」という要件があることから、2002年6月時点で、2事業年度修了していると考えられる3800法人をピックアップ。そのうち、住所が分かる3591法人に調査票を送付した。
そして、8月12日までに746法人から回答を得た。
ただし、認定要件の試算が可能な法人はそのうちの704法人だった。
その704法人に、新しい認定要件の下でどれだけの法人が認定される可能性があるのかを、パブリックサポートテストなどの残り3つの要件について試算したところ、28の法人が認定される可能性があるという結果が出た。
これは、704法人を母数とした場合の約4.0%となる。
この4.0%をもとに、その時点で2事業年度修了していると考えられる3591法人を母数としてかけると、144法人が認定をうけられる可能性があるとなる。
2002年6月末時点に認証を受けたNPO法人の全体数が7375法人であったことから、この144法人をその7375法人で割ると2%となったもの。
つまり、新しい認定要件を、昨年(2002年)6月時点のNPO法人に適用した場合、全体の2%(144法人)が認定を受けられる可能性があるという結果となった。
ただし、実際には、さまざまな他の要因があり、この数字がどうなるかは分からないところも多い。
昨年のアンケートの試算において、決算数字だけをとると「認定を受けられる可能性がある」とみられる法人のうち、約半数の法人が「申請書類が煩雑」「20万円以上の寄付者名簿が公開される」「2年ごとの再申請が煩雑」などの理由で、認定申請をしないと答えている。これら問題は、まだ解決されておらず、これらの問題を理由に申請が半減するという昨年の試算の比率をあてはめると、試算結果の2%は1%へ、つまり72法人程度に減ることになる。
また、今回、アンケートに答えた704のNPO法人の年間平均収入金額は約2930万円である。これは、今まで行われているより母数の大きなNPO法人の実態調査の平均収入額約1900万円というデータよりもかなり高めである。
つまり、アンケートに答えた法人は、平均的なNPO法人より財政規模の大きな、しっかりした法人が多いと考えられる。そのため、平均的なNPO法人を対象にすると、この2%という数字はもっと下がると考えられる。
一方で、認定数が試算よりも増える可能性もないわけではない。
パブリックサポートテストの右辺が5分の1になったことにより、より寄付を集めれば認定を受けられる可能性が広がったとも言える。
また、直近の一事業年度だけ見れば、704法人中56法人(8%)の法人が認定を受けられる可能性がある。この傾向が次の年度も続けば、認定率は2%よりは上昇する可能性がある。
認定を受けられる可能性は、1~4%の間と推測できるが、NPO法人の意思によるところも大きく、改正されたからといって、現在の認定法人が10法人という状況から、そう激増するということにはなりそうもなさそうだ。
調査の概要と、試算結果は、以下を参照。
1.NPO法人実態調査(財政・寄附詳細・事業内容・組織運営など)の概要
●調査期間
調査票は2002年6月24日に送付。最終締め切りは同年8月10日。
●調査票を受け取った法人数 3591法人
2001年3月末まで認証の3800法人から、次の法人を除いた数。
- 解散法人等 7法人
- 認定NPO法人 6法人(2002年6月末時点)
- 住所不明で調査票が返送された法人数 196法人
●8月12日までに有効回答のあった法人数 746法人
●回答率 20.8%
● 認定要件に関しての有効回答法人数 704法人
(認定要件に直接かかわる設問については、前事業年度が12ヶ月であるものを有効とした)
2.改正NPO支援税制の要件をもとにした試算
■ アンケートの有効回答法人数
704法人(100%)
↓
■ 前年度の日本版パブリック・サポート・テスト(PST)をパスする法人
83法人(11.8%)
↓
■ さらに前年度「共益性の排除等」の要件をパスする法人
65法人(9.2%)
↓
■ さらに前年度と前々年度において「組織運営」の要件をパスする法人
56法人(8.0%)
↓
■ さらに、前々事業年度も「共益性の排除等」の要件もパスする法人
52法人(7.4%)
↓
■ さらに、前々事業年度においても日本版PSTをパスする法人
28法人(4.0%)
■ 上記28法人のうち、
- すでに申請準備中である法人
3法人 - 旧税制のままでも申請を検討すると回答していた法人
5法人 - 旧税制が改正されれば申請を検討すると回答していた法人
20法人
※ アンケート票を送付した3591法人(2001年3月までに認証を受けた法人)のうち、144法人が認定を受けることが可能であると推測できる。
※ 2002年6月末の発送時、認証を受けていた全国のNPO法人数は7375法人であることから、144法人の全法人数に占める割合は2.0%である。