行政 : 政府、NPOの介護移送を認める
3月16日、国土交通省と厚生労働省は、NPO法人などの民間非営利団体が要介護者を病院などに移送する「介護輸送サービス」について、道路運送法に基づく事業許可がなくても認めることを決定し発表した。
高齢者や障害者が通院に利用する「介護輸送サービス」(政府の用語による。以下同じ)で介護報酬を得るには、タクシー事業の許可が必要とする国土交通省と、必要ないとする厚生労働省の見解が対立し、自治体の取り扱いもまちまちで、現場では混乱が続いていた。
「介護輸送サービス」を行うNPO法人やボランティア団体にとって、道路運送法のタクシー事業許可を取得することや、運転者が二種免許を取得することは容易ではない。そのため事業許可が必要とされた地域ではサービスの継続ができなくなり、その結果、高齢者や障害者が、これまで利用していたサービスを利用できなくなるといった事態も生じていた。
こうした混乱を解消するため、2月12日、国土交通省と厚生労働省は、「介護輸送に係る法的取り扱い」を「中間整理案」としてまとめて公表し、2月29日までパブリックコメントを募集した。
両省には合計253件の意見が寄せられ、それらを踏まえて、両省は16日に介護輸送に係る法的取りについての方針をまとめ、国土交通省のホームページで公表するとともに、全国の自治体の関係部局、関連団体に対して通知した。
両省の発表した「介護輸送に係る法的取り扱い」によれば、NPO法人などの非営利団体がおこなう「介護輸送サービス」については、対象を事前に登録した要介護者らに限り、かつ、運賃をタクシーの半額以下とするといった要件を満たせば、道路運送法第80条1項による「自家用自動車による有償運送許可」により認めるとしている。
道路運送法第80条1項では、「自家用自動車は、有償で運送の用に供してはならない。ただし、災害のため緊急を要するとき、又は公共の福祉を確保するためやむを得ない場合であつて国土交通大臣の許可を受けたときは、この限りでない。」とされている。
このNPO法人などによる「介護輸送サービス」を対象とした「自家用自動車による有償運送許可」については、NPO法人などからの申請を受けて、地方公共団体が主宰する「運営協議会」によって判断され許可される。許可に当たっては原則として2年間の期限が付される。
また、NPO法人などによる「介護輸送サービス」では、運転者が安全運転・乗降介助などの講習を受けて安全に十分な能力と経験があると認められれば、2種免許が不要となる。
加えて、使用車両としてセダン型の一般車両を認めることについては、構造改革特区における措置として実施されている「NPOによるボランティア輸送としての有償運送可能化事業」の全国実施により対応するとされている。
この方針に基づく取り扱いは、平成16年3月31日以降に申請を受け付けたものから適用される。ただし、平成16年3月31日現に構造改革特区において道路運送法第80条1項の許可を受けている場合は、同日において改めて道路運送法第80条1項の許可を受けたものとみなされる。
「『介護輸送に係る法的取り扱いについて』に関する意見募集に対して寄せられたご意見についてとそれに対する両省の考え方」は、国土交通省のサイト内、下記を参照のこと。
http://www.mlit.go.jp/pubcom/04/kekka/pubcomk090212_.html
なお、厚生労働省では、3月19日に同省サイト内に同内容を掲載予定。