行政 : 公明・浜四津氏「認定要件緩和は不十分」
10月15日の参議院本会議で、首相の所信表明演説に対して、公明党の浜四津敏子代表代行は代表質問で、「認定NPO法人の要件緩和はまだ不十分」と、首相の見解をただした。これに対し、首相は、認定要件の緩和については明確な回答を避けた答弁を行った。
国会は、10月15日の参議院本会議で小泉純一郎首相の所信表明演説に対する各党代表質問を行い、公明党からは浜四津敏子代表代行が質問に立った。
質問の中で浜四津代表代行は、若者の失業率が全年齢平均の2倍以上にのぼっており、加えて、ニートと呼ばれる若年無業者の増加が大きな社会問題になるなかで、よりきめ細かい雇用支援を推進する必要があり、そのためには国がNPOやボランティア団体などの力を最大限活用して協力して取り組むことが必要ではないか、と首相の見解を問うた。
これに対して、小泉首相は、若年者の雇用施策の推進にあたっては、NPOやボランティア団体を活用した専門的な相談援助の実施や労働体験を通じた社会参加意欲を喚起する取り組みなど若年者の働く意欲や能力を高めるための総合的な対策の展開に努めたいと答えた。
また、質問の中で浜四津代表代行は、「官から民へ」は首相の改革のスローガンの一つだが、NPO法人などを支援して、社会を担う第三のセクターとしてのシビル・ソサイアティーを育てることについて、とりわけ認定NPO法人の認定要件の緩和が不十分なことを指摘し、どのように考えているのかを問うた。
これに対して、小泉首相は、NPOは行政でも企業でもない第三の主体として国民の多様な要望にきめ細かく応え得る組織であり、これからの経済社会において大きな役割を果たすことが期待されており、政府としてはNPO税制の活用増進、情報提供の充実、NPOが十分に活躍できるような環境の整備に引き続き努めていくと答えた。認定要件の緩和については、明確な回答をさけた形だ。
15日に行われた参議院本会議での浜四津代表代行の代表質問と、それに対する小泉首相の答弁のなかで、NPOに関連するやりとりの詳細は、下記のとおり。
※質疑の詳細は、以下の「参議院会議録情報」から検索することができる。
http://www.sangiin.go.jp/japanese/frame/joho2.htm
第161回国会 本会議 第3号
平成十六年十月十五日(金曜日)
○浜四津敏子君
若者の就業支援のため、我が党はトライアル雇用やジョブカフェ、インターンシップ制度などを提案し、それらが実現された結果、一昨年から若者の失業率が少しずつ改善してまいりました。しかし、それでもまだ若者の失業率は全年齢平均の二倍以上に上っています。さらに、ニートと呼ばれる若年無業者の増加が大きな社会問題になっています。仕事をする意欲もなく、学校にも職業訓練にも行かず、社会とのつながりを持つことができないニートは五十二万人以上いると言われています。
そこで、公明党は以下の政策を提案し、それらは来年度の概算要求に取り入れられました。その一つは、合宿形式による集団生活の中で生活訓練や労働体験を行い、社会人としての基本的な能力や働く意欲を養う若者自立塾。二つ目には、ボランティア活動や職場体験が採用に反映される体制を作るためのジョブパスポート。三つには、中学生が五日以上職業体験をするキャリア教育実践プロジェクトなどです。こうした一つ一つきめ細かい政策を実施することにより、必ず効果が上がるものと思います。
若者がフリーターやニートになるには、それぞれ異なる理由があり、置かれた状況も異なります。それを理解し、一人一人に合ったきめ細かい雇用支援を推進する必要があります。そのためには、国が全力を挙げて取り組むことは当然ですが、NPOやボランティア団体などの力を最大限活用して、協力して取り組むことが不可欠と考えます。総理のお考えを伺います。
(略)
総理は、就任以来、改革のスローガンの一つとして官から民へを挙げてこられました。公明党も、無駄や非効率の多い官の在り方を抜本的に改革すべきとの信念を共有する立場から、その改革の方向性は支持してまいりました。しかし、官から民へというスローガンは、一見斬新に見えても、さほど新しい発想に基づいたものではありません。なぜなら、その背景にあるのは、社会は官と民の二つのセクターでしか構成されていないという旧来型の考えだからです。
この考えによると、公益を促進するのは官であり、私益を追求するのは民、すなわち企業で、国民も基本的にはこのどちらかの世界で働いているという前提があります。税金の無駄遣いを最小限に抑えるための官の改革は必要ですが、それを市場原理と効率性を追求する民へというだけでは公益を損なうリスクを伴います。
そこで、公益性の高い事業を目的としつつ、その形態は、官ではなく、また利益追求の企業でもない、効率性の高い民間組織である団体の存在が非常に大切になってきます。それは、NPO、NGOなどの非政府・非営利組織や独立した政策研究所、公共性の高い事業を行う非営利の財団やボランティア組織を意味します。
これらの活動は、例えば国際的には国境なき医師団やAMDA、難民を助ける会など、国内では先ほど述べた介助犬の育成やアニマルセラピーもその一例ですが、子育て支援や本の読み聞かせ、不登校や引きこもりの支援など、福祉、医療、環境、人権、教育、平和、人道支援など多岐にわたっております。その活動は、利用者のニーズからも共助の世界を作る上でも不可欠なものです。
これが今、社会を構成する第三のセクターとして先進諸国で注目を集めているシビルソサエティーであります。第一セクターとしての官と第二セクターとしての企業と並ぶシビルソサエティーが育っていない社会は、成熟した民主主義社会とは言えないとまで言われております。今や世界は官から民へではなく、官から民及びシビルソサエティーへという流れになっております。
日本でも、一九九八年にNPO法が成立し、今日まで数多くのNPO団体が創立されましたが、国際的に比較すると、日本のNPO団体などは財政基盤も弱く、人材育成や人材確保に難航しています。殊に、最も大事な寄附金にかかわる税制上の優遇措置も機能してきたとは言い難い現状です。現に、約一万数千あるNPOのうち、税の優遇控除を受けているのはわずか約三十団体にすぎません。認定NPO法人の要件は徐々に緩和されてきておりますが、なお十分とは言えません。
国、地方の財政難の中、また少子高齢化の中で、より心豊かな共助、共生の社会を築くためにも、NPOなどを力強く支援して、社会を担う第三のセクターとしてのシビルソサエティーを育てることが必要ではないでしょうか。総理の御見解を伺うとともに、今後、日本におけるシビルソサエティー育成に具体的にどのように取り組まれるのか、お伺いします。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
若年者の雇用問題についてでございますが、近年、フリーターに加えて、働いておらず教育も訓練も受けていない、いわゆるニートと呼ばれる若年者が増加しております。こうした若者に対しては、御指摘のとおり、個々の抱える問題に対応したとりわけきめ細やかな支援が必要であると認識しております。
今後の施策の推進に当たっては、NPOやボランティア団体を活用した専門的な相談援助の実施や労働体験を通じた社会参加意欲を喚起する取組など、若年者の働く意欲や能力を高めるための総合的な対策の展開に努めてまいりたいと考えております。
(略)
NPO支援についてでございますが、NPOは行政でも企業でもない第三の主体として国民の多様な要望にきめ細かくこたえ得る組織であり、これからの経済社会において大きな役割を果たすことが期待されております。このため、政府としては、NPO税制の活用増進、情報提供の充実、NPOが十分に活躍できるような環境の整備に引き続き努めてまいります。