行政 : 有識者会議が最終報告、NPOは切離し
公益法人制度改革について議論してきた政府の有識者会議が、11月19日、現行の公益法人制度と中間法人制度を廃止し、新たな非営利法人制度を創設することなどを盛り込んだ最終報告書を、村上誠一郎行革担当大臣に提出した。NPO法人制度は、新制度とは別に「存置」すべきものと明記された。これを受け政府は、12月下旬の閣議決定を経て、2006年の通常国会に関連法案を提出したいとしている。
公益法人制度改革について検討してきた、村上誠一郎行革担当大臣の私的諮問機関である「公益法人制度改革に関する有識者会議」(座長・福原義春資生堂名誉会長)が、11月19日、26回の会合を終え、新たな非営利法人制度の法人制度部分に関する最終報告書をまとめた。
創設される非営利法人制度は、現行の公益法人(社団・財団)制度を廃止し、公益性の有無に関わらず、準則主義(登記)により簡便に法人格取得ができるというもの。このなかで、「公益性」があると認められた法人には何らかの優遇措置を与えるという、いわゆる2階建ての方式。
中間法人制度は、この1階の制度に法制上包含される関係となることから、独自の存在意義を失うとされており、廃止されることになる。
公益性の判断は、特定の大臣の下に設置された民間有識者からなる合議制の委員会が行う。
特定の大臣の下に置かれることから、一般に補佐的な位置づけとされる国家行政組織法でいう8条委員会となるが、公正取引委員会などの「行政委員会に期待されるような機能を発揮し得る判断主体とすることが必要」と提言された。
注目されていたNPO法人制度の今後については、新制度に必ずしも包含される関係にはなく、社会的要請も乏しいことから、「引き続き存置されるものと考えられる」と結論づけている。ただ、この改革により、NPO法人制度に「当然には影響するものではない」と微妙な表現を使い、なんらかの影響がある可能性については一定の含みを残した形となっている。
この報告書を受け、政府は、12月下旬の行革大綱のなかに公益法人制度改革を盛り込んで閣議決定し、2006年の通常国会への関連法案提出をめざす。
この報告書で税についてはほとんど触れられていない。
税に関しては、唯一、「民間非営利部門による公益的活動の発展を促進する観点から、新たな非営利法人に対する税制上の取扱いについて専門的検討が進められることが重要であるとの意見があった」という言い回しで触れられており、会議の総意としての表現とはなっていない。
新制度に対する税制度は、基本的な枠組みが具体化されたうえで、所管省(財務省の政府税制調査会内に設置されている非営利法人課税ワーキンググループ)が検討することになっており、そのテリトリーを犯さないことを最後まで配慮したものとなった。
この税制の議論は来年にはいって開始されるものとみられている。
最終報告書の全文は以下のURLを参照のこと。
http://www.gyoukaku.go.jp/news/h16/news1119.html
NPO法人に関する部分は、以下のとおり。
特定非営利活動法人制度との関係
特定非営利活動法人制度は、特定の公益性を有する非営利活動を行う法人を認証という簡易な仕組みで設立させるものであり、今回の一般的な非営利法人制度とその下での公益性を判断する制度からなる新たな仕組みに必ずしも包含される関係にはない。すなわち、現行民法に基づく公益法人制度を改革することにより、こうした特定非営利活動法人制度に当然には影響するものではない。また、特定非営利活動法人制度は、平成10年の制度発足以来、法人数が大幅な増加傾向にあり、抜本的に見直すべきとの社会的要請も乏しいこと、さらに、公益性を判断する新たな制度は、規律のしっかりした公益性を有する法人による公益的活動の健全な発展を図るものであることからも、特定非営利活動法人制度は引き続き存置されるものと考えられる。