行政 : 政府税調、非営利法人税制の検討開始
政府税制調査会(首相の諮問機関)は、4月15日、基礎問題小委員会と非営利法人課税ワーキンググループの合同会議を開き、公益法人改革後に創設される新しい非営利法人制度に関する税制検討をスタートさせた。6月21日までに、一定の方向性をまとめる予定だ。
政府の税制調査会で、新しい非営利法人に関する課税が議論されるのは、2003年3月以来2年ぶり。
それまでは、総会の下にある基礎問題小委員会のさらにその下にある非営利法人課税ワーキンググループで検討されてきたが、今回は、基礎問題小委員会と非営利法人課税ワーキンググループとの合同会議で検討を進めることとなった。
合同会議は、6月21日までに計6回開かれる予定となっており、それまでに改正の方向をまとめ、年末の2006年度税制改正で詳細を決めたい考えだ。
検討項目としては、以下のものがあげられている。(税調の配布資料から)
「非営利法人」に対する課税の取扱いについて(主な論点)
1 「非営利法人」に対する課税の基本的考え方
- 「公益性を有する非営利法人」の取扱い
- 公益性の判断
- 課税ベース(非課税範囲)
- その他の「非営利法人」の取扱い
- 多様な実態への対応
- 課税ベース(非課税範囲)
- その他(公益性判断の変更があった場合の取扱い等)
2 公益法人等に共通する課税上の諸論点
- 収益事業課税方式
- 軽減税率及びみなし寄附金制度
- 金融資産収益に対する課税
3 その他(他の法人との関係等)
寄附金税制のあり方について(主な論点)
1 寄附金税制の見直しの基本的方向
2 寄附金税制の仕組みのあり方
- 寄附金の優遇対象となる法人(要件、認定方法等) 等
3 寄附金控除の取扱い
4 その他(指定寄附金等)
合同会議終了後、石弘光会長は、記者会見を行い、議論に関して、会議の内容について語った(要旨)。
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(公益法人制度改革の目的について)
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民間のほうでの公共活動、これを第三セクターとして今後どれだけ、パブリックとプライベートの間に置いて、21世紀型の社会システムの構築に役立てようかという視点と、かねがね問題になっている公益法人そのものの改善につながるような仕組みをつくったらどうかという視点の2つがある。
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(行革事務局の改革案に関して)
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会議では、新しく「第三機関による公益法人の認定」というのが入ってきた。これは今までの主務官庁制のさまざまな弊害を切り離して、第三者機関による認定によるとしたことは、非常に大きな成果ではなかったかという意見だった。
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(公益性のある非営利法人の課税)
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「公益性を有する非営利法人」は非課税。屋上屋を重ねて、さらに税務当局が判断するんじゃなくて、公益性があり、公益活動をしているときには非課税でいいだろう。ただ、収益事業をやったときには従来通り収益事業の出てくる収益に対しては課税をする。
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(非営利法人に関する課税)
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従来のように、原則課税・原則非課税といったような一刀両断的な発想はしない。法人の態様、あるいは課税ベースの範囲等々によって自ずから課税の対象、あるいは税率の軽減等々も決まってくる。
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(非営利法人の会費の扱い)
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同窓会みたいな、それで閉じてる場合の会費は非課税でもいいんじゃないかという声も当然出てくる。会費は、非課税の場合もあるだろう。
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(収益事業課税に関して)
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公益性があると認められても、収益活動をしたら、それは従来通り課税する。33の収益事業のリストでは、公平や不公平があるし、もう非常に古い職業のカテゴリーで決められているから、これはかなり大仕掛けな形で見直さなきゃいけないんじゃないか。
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(収益事業の軽減税率に関して)
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税率格差を認めるかどうか。つまり、収益事業には22%の法人税がかかっているが、もう30%で、同じでいいんじゃないかというご意見もある。
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(他の公益法人などとの関係について)
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今回の議論では、特定の法律が必要な学校法人、社会福祉法人、宗教法人、管理組合法人とかNPO法人、これは手つかずになっている。ただ、税を仕組んでいくときには、この既存の公益法人の税負担との均衡、バランス、これも考えなければいけない。たまたNPO法人は残しておくが、これが非営利法人の公益性を認めるほうに入ってくるかもしれないし、この辺は将来わからないが、そのようなこともあるだろう。
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石会長の会見の内容は、以下のホームページから読むことができる。
http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/kaiken/kiso_b33.htm