行政 : 政府税調、寄附金税制拡大を検討
4月22日、政府税制調査会は会合を開き、公益法人制度を改革してできる新しい「非営利法人」制度において、「公益性を有する非営利法人」として認定された法人には、寄附税制を認める方向で検討することを確認した。
4月22日(金)、政府税制調査会の基礎問題小委員会と非営利法人課税ワーキンググループの合同会議が開催された。
テーマは、「寄付税制のあり方」について。
議論では、事務局から、現行の公益法人制度における寄付税制の仕組みである特定公益増進法人について
- 特定公益増進法人制度における寄附金優遇の対象とする公益事業の範囲が時代のニーズに適合しているとは言い難い
- 事業類型を決める基準が不明瞭
- 認定基準が不明確
などといった問題点が指摘され、改正の必要性が提案された。
その上で、新しい非営利法人制度においては、2階部分である「公益性を有する非営利法人」を寄附金優遇法人とすることについて検討が行われた。
また、認定NPO法人制度に関しては、さまざまなNPO法人が活躍している中で、寄附金収入の割合に着目する方式は、NPOの活動実態に合わなくなっているのではないかということも議論され、認定NPO法人のいっそうの要件緩和の必要性が議論された。
会合終了後の石弘光税制調査会会長の記者会見の要旨は以下の通り。
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(寄付税制の拡大について)
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基本的な方向としては、寄附文化を定着させ、あるいは民間が担う公共活動を支援するという視点から、従来以上に拡張する方向があるじゃないかという議論をした。
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(税制と寄附文化)
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特にアメリカと比較すると、圧倒的に日本の寄附金額は、個人も法人も少ない。これは税制が理由というよりは、やはり寄附の文化、寄与するというマインドが、日本では少ないんじゃないか。そういう意味で、税を緩めたからといって寄附は伸びないだろう。しかし、今後、やっぱり寄附文化というのを根付かせる意味で、ささやかなれど少し税のほうで寄与できるならば、いろんな形で寄附税制というものの見直しは必要だろうということで一致した。
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(公益性を有する非営利法人の税制)
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新しい公益性のある非営利法人というのをつくって、第三者機関がそれを認定して、収益事業だけ課税するような形にすれば、言うなれば寄附金優遇法人という形で、その枠を使って(寄附税制の対象として)いくことでいいのではないか。ただ、その後の不正利用等々あることもあり得るので、十分に事後チェックをしなければいけないだろう。
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(認定期間)
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認定期間は、2年程度がいいではないかとか、あるいはもっと長くすることについてはどうかと、これについては今日、委員の中から意見は出なかった。
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(足切りの問題)
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国税は所得税1万円を超えないと寄附金控除の対象にならない。地方税は10万円。これを今後どうしようかということについてかなり意見が出た。今後、寄附文化を根付かせようとか、あるいは寄附税制というのを少し拡大しつつ、民間の担う公共活動を支援しようという点から言うと、この下限の適用のところをどうするかという点について検討する。おおむね全廃は無理にしても、少し寄附者の有利になるような方向で議論できないかということだ。
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(地方税)
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寄附の税制について、国と地方というのはこれまで全く別個の観点の議論をしてきた。国税としては、法人税、所得税でそれなりの対応をしてきた。これは国際的なレベルに達していると思う。一方、地方はこれまで、寄附金あるいは寄附税制に対して支援をしてこなかった。今後このままでいくのか、それとも、やはり地域住民に密着したところでさまざまな民間の担う公益性というのはあるわけで、それを少し税制で、従来以上に面倒を見るという発想が出てくるのかが、今後、議論のポイントになる。
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政府税制調査会の石会長の記者会見の概要は以下のホームページで読むことができる。
http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/kaiken/kiso_b34.htm