行政 : 経済同友会、NPOへの提言
7月6日、社団法人経済同友会の「NPO・社会起業研究会」(委員長:大橋洋治・全日本空輸取締役会長)は、社会的課題の解決に取り組むNPO(民間非営利組織)の活動基盤の強化に向けた提言「社会変革に挑むNPOには優れた経営者と志ある資金が必要である」をとりまとめ発表した。
7月6日に経済同友会の「NPO・社会起業研究会」が発表した提言「社会変革に挑むNPOには優れた経営者と志ある資金が必要である」では、企業経営者がNPOの経営能力や財務基盤の脆弱性を分析して、その強化に向けた7項目の提言を示し、あわせて、企業経営者自らがその強化のためにおこなう「行動計画」を表明している。
この提言では、わが国のNPOに「経営」という観点が乏しかった点を指摘し、NPOにも優れた経営者、組織体制、ガバナンス、財務基盤、事業戦略、情報公開、会計の透明性といった組織運営のノウハウが必要であり、それがなければ社会からの信頼を得ることはできず、事業の発展も難しいとの考えを示している。
他方、日本では個人を中心とした寄付金が集まりにくく、国民の社会に対する関心や意識も低いため、活動を支える十分な資金や人材を集めることが困難であるとの懸念も表明している。
具体的には、「優れた経営を行うNPO」を育てるために必要なこととして、、優れたNPO経営者を育成する(提言1)、企業が有する人材・知恵を活かす(提言2)ことを提言。
また、「志ある資金」が集まる社会を築くためには、革新的な寄付開拓の仕組みを創る(提言3)、情報公開・評価を徹底する(提言4)、寄付税制を拡充する(提言5)、成功した企業経営者が率先垂範して社会貢献する(提言6)、といったことが必要だとしている。
さらに、国民の社会に対する意識を変革するために、パブリック・マインド醸成を重視した教育を行うこと(提言7)の重要性も指摘している。
なかでも、「提言5」で指摘している寄付税制の拡充については、今年度の税制調査会の検討課題にもなっているが、これまでは財務省の強硬な反対の前に大幅な拡充には至っていないと指摘。寄付金優遇の対象となる認定NPO法人の数の少なさが大きな問題だとしている。
具体的には、現在は34団体に過ぎない認定NPO法人を、NPO法人全体の3%程度、すなわち約600団体程度に拡大することを目標に、認定要件を見直すことを提案。この3%という数字は、公益法人(社団法人、財団法人)の中で寄付金の所得控除の対象となる「特定公益増進法人」の割合と同レベルを想定しているとのこと。そのためには、「パブリックサポートテスト」に関する認定要件も見直すべきであると提言。
「公益性」の根拠となる総収入金額に占める受入寄付金総額の比率を計算するにあたって、「米国並みに会費収入を寄付金として認める」「事業収入は分母(総収入金額)に含めない」といった変更をすることだけでも、要件を満たす団体数はかなり増えるはずだとしている。
経済同友会の「行動計画」としては、民間主導型社会の実現への積極的なアドボカシーとして、1)本提言発表、2)政府等への働きかけ(寄付税制拡充等)、3)NPOのビジビリティ向上に向けた情報発信、をするとしている。
また、早期実現可能なプログラムとして、1)企業経営者がNPOの活動現場を訪問する「百聞は一見にしかず」プログラム、2)職域募金などの導入を呼びかける「ギビング・ネットワーク」の実施を盛り込んでいる。
さらに、行動計画では、新組織「NPO支援推進組織」設立の検討を行うとしている。
経済同友会では、これらの行動計画を今夏より実施していくとのこと。
この提言は、経済同友会サイト内、下記で公開されている。
http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2005/050706.html