行政 : JNATIP、人身売買報告書を発行
7月12日から、人身売買罪の新設を盛り込んだ改正刑法などが施行されたが、NPOのネットワークである「人身売買禁止ネットワーク」(JNATIP)では、このほど「日本における人身売買の被害に関する調査研究」報告書を発行。人身売買の現実を公表している。一部千円で頒布中。
日本は、女性や子どもの性的搾取を目的とした人身売買の積極的受入国として、国内外から批判を受けてきており、国際労働機関(ILO)も2004年12月に「日本における性的搾取を目的とした人身取引」と題する英文報告書を公表している。
こうした批判を受けて、政府は2004年12月に、人身売買の防止と撲滅、被害者の保護を含む包括的対策を講じることを盛り込んだ「人身取引対策行動計画」を発表。
7月12日には、改正刑法、改正出入国管理及び難民認定法などが施行され、人身売買罪の創設や、被害者に在留特別許可を与えて一時保護する措置などが取られることとなった。
この法改正を民間から後押しした団体のひとつが「人身売買禁止ネットワーク」(JNATIP)。2003年11月から2005年3月までの17ヶ月間をかけて、お茶ノ水女子大学21世紀COEプログラム「ジェンダー研究のフロンティア」と共同で、日本国内のNGOや婦人相談所を対象とした調査、被害者へのインタビュー、タイとフィリピンのNGOスタッフによる帰国後聞き取りなど、包括的な研究調査を行った。
JNATIPは、この研究調査の報告書「日本における人身売買の被害に関する調査研究」を3月末に発行。日本における人身売買の詳細な実情を明らかにした。報告書は、フィリピン、タイ、コロンビアの人身売買の被害の状況を扱っている。
JNATIPによれば、被害者の多くは「ホステス等接待業」に資格外で就労しており、多くが性産業への従事を強要されていたという。
フィリピンやタイの場合、日本行きを勧誘するのは、多くが職場の同僚や友人、親戚などの身近な人であり、そのために被害者である女性たち自身が犯罪被害という意識を持ちにくいという。しかし、女性たちは厳しい管理下で買春を強制され、睡眠時間も一日2,3時間という環境で働かされているのが実態。コロンビア人の場合は、店から逃げて帰国したあとに家族ともども殺害されたケースもあり、こうした現状から、女性たちは被害を訴えることをためらうという。
いずれの国の被害者も、家族に送金できれば「よほどのこと」がない限りは我慢する傾向にあり、なかには逃げれば故郷の家族に危害が加えるという脅迫を受けているケースもある。
このたび改正された刑法や出入国管理法などにより、こうした実態が改善されることが期待されるが、JNATIPでは、「防止と根絶のためには、長期的視野で被害者の帰国後の社会再統合や予防に取り組む必要がある。人身売買の背景には、貧困や低開発、ジェンダーや階層、民族などさまざまな格差がある。これらの要因を軽減させる国際的な協力も必要」としている。
「日本における人身売買の被害に関する調査研究」報告書(千円)を希望する場合は、JNATIP東京事務所(TEL&FAX:03-3207-7880、e-mail:info@jnatip.org)まで問い合わせを。