行政 : 経産省調査、社会益活動は75兆円市場
7月7日、経済産業省は、「ソーシャル・マーケットの将来性に関する調査研究報告書~共助・互助が支える生活の安心~」を発表した。報告書では、行政の担う公益活動と企業の担う私益活動の枠組みの中間領域における活動を「社会益活動」と定義して、その規模を約75兆円市場と試算。10年後には120兆円を超える市場になると推計している。
経済産業省が7月7日に発表した「ソーシャル・マーケットの将来性に関する調査研究報告書」では、国民の安心・安全に関するニーズが多様化してきた現在、求められる公益や私益の範囲は拡大しており、「公益は行政が提供し、私益は企業や個人が提供する」という枠組みを超えて、これまで顕在化していなかった公益と私益の中間領域が拡大しているとしている。
報告書では、このような中間領域における、生活リスクの低減や社会の問題解決、社会の便益に資する活動を「社会益活動」と定義。介護、子育て、防犯、防災、失業対策、健康など様々な分野で、民間非営利団体などが、社会性と事業性を兼ね備えた「ソーシャル・エンタープライズ」として社会益活動を担っているとし、その実態と発展に向けての課題等を報告している。
報告書では、サービス提供の対価や、補助金や委託費を含めたコスト負担といった社会益にかかわる経済活動の全体を「ソーシャル・マーケット」として、その事業規模は2003年現在で74.6兆円と推計。この金額は、2003年の輸出総額54.5兆円を超える。
さらに、社会益にかかわる従業員数780万人、事業所数は56万3千カ所に上るとみている。
ソーシャル・マーケットを構成する業種は、生産額ベースでは、医療業が49%、つづいて教育(27%)、社会保険・社会福祉(12.2%)で、この3業種で全体の約9割を占める。
将来的には、少子高齢化、行政機能の縮小、社会ニーズのさらなる多様化、民間開放の推進などにより、ソーシャル・マーケットは拡大すると予測。日本経済研究センター発表の実質GDP成長率予測(年平均2%弱)に加えて、横浜市における1990-2001年の対家計民間非営利サービスの伸び率61.8%がソーシャル・マーケットで実現するケースを想定して、10年後の2015年には120兆円規模となると推計している。
社会益活動の発展に向けた課題としては、自由な参入・競争環境の整備、行政や企業に集中している経営資源の流動化、情報開示などのルールの整備、推進のための政策を検討するために社会益活動の動向の把握等をあげている。
「ソーシャル・マーケットの将来性に関する調査研究報告書」は、経済産業省サイト内、下記に掲載されている。
>http://www.meti.go.jp/press/20050707007/20050707007.html