行政 : 安倍首相、所信表明で「NPO支援」
安倍首相は、9月26日、国会で所信表明演説を行い、NPOに関しては、「活力に満ちたオープンな経済社会の構築」とした章の中で、「NPOなど『公』の担い手を支援し、官と民との新たなパートナーシップを確立します。」と述べた。
安倍晋三新首相は、9月29日、国会で所信表明演説を行った。
所信表明演説とは、臨時国会の冒頭などで内閣総理大臣(首相)が行う演説のこと。衆議院と参議院の本会議で国政全般について当面の方針や重点課題を説明する。
通常国会の冒頭で行われる首相「施政方針演説」が、主に内閣全体としての基本方針を述べるのとは異なり、所信表明演説では、首相個人の政治姿勢などが述べられる。
安倍首相は、この所信表明演説で、NPOに関して、「活力に満ちたオープンな経済社会の構築」とした章の中で、「NPOなど『公』の担い手を支援し、官と民との新たなパートナーシップを確立します。」と述べた。
ただ、所信表明演説では、この一文が、「活力に満ちたオープンな経済社会の構築」に向けた、「日本文化産業戦略」、「アジア・ゲートウェイ構想」、「再チャレンジ支援」、「頑張る地方応援プログラム」、「おいしく、安全な日本産品」といった経済成長につなげる推進策に続く最後の一行に、唐突に置かれている。
NPO支援や官民パートナーシップをどのような政策課題として捉えているのかが、文脈から不透明なことから、今後の政策展開を注目していく必要がある。
NPOに関する言及を含む「活力に満ちたオープンな経済社会の構築」とした章の全文は以下の通り。
なお、全文は、首相官邸のホームページ( http://www.kantei.go.jp/ )で読むことができる。
【活力に満ちたオープンな経済社会の構築】
わが国が21世紀において「美しい国」として繁栄を続けていくためには、安定した経済成長が続くことが不可欠なことは言うまでもありません。人口減少の局面でも、経済成長は可能です。イノベーションの力とオープンな姿勢により、日本経済に新たな活力を取り入れます。
成長に貢献するイノベーションの創造に向け、医薬、工学、情報技術などの分野ごとに、2025年までを視野に入れた、長期の戦略指針「イノベーション25」を取りまとめ、実行します。自宅での仕事を可能にするテレワーク人口の倍増を目指すなど、世界最高水準の高速インターネット基盤を戦略的にフル活用し、生産性を大幅に向上させます。
アジアなど海外の成長や活力を日本に取り込むため、お互いに国を開く経済連携協定への取組を強化するとともに、WTOドーハ・ラウンド交渉の再開に尽力します。地方の活性化にも資する海外からの投資を2010年にGDP比で倍増する計画の早期達成を目指します。アニメや音楽などのコンテンツ、食文化や伝統文化などについて、国際競争力や世界への情報発信力を強化する「日本文化産業戦略」を策定します。今後五年以内に、主要な国際会議の開催件数を5割以上伸ばし、アジアにおける最大の開催国を目指します。その他、使い勝手も含めた日本の国際空港などの機能強化も早急に進め、ヒト・モノ・カネ・文化・情報の流れにおいて、日本がアジアと世界の懸け橋となる「アジア・ゲートウエー構想」を推進します。
新たな日本が目指すべきは、努力した人が報われ、勝ち組と負け組が固定化せず、働き方、学び方、暮らし方が多様で複線化している社会、すなわちチャンスにあふれ誰でも再チャレンジが可能な社会です。格差を感じる人がいれば、その人に光を当てるのが政治の役割です。私は、内閣の重要課題として総合的な「再チャレンジ支援策」を推進します。
新卒一括採用システムの見直しや、パート労働者への社会保険の適用拡大などを進めます。再チャレンジ職場体験制度の創設や団塊世代などベテラン人材の再雇用の促進といった、再び仕事を始めるためのハードルを引き下げる取り組みも行います。2010年までにフリーターをピーク時の8割に減らすなど、女性や高齢者、ニートやフリーターの積極的な雇用を促進します。再チャレンジする起業家の資金調達を支援するとともに、個人保証に過度に依存しない融資を推進します。こうしたさまざまな再チャレンジを支援する民間や自治体の取り組みを応援するため、内閣総理大臣による表彰制度を新たに設けます。
地方の活力なくして国の活力はありません。やる気のある地方が自由に独自の施策を展開し、「魅力ある地方」に生まれ変わるよう、必要となる体制の整備を含め地方分権を進めます。知恵と工夫にあふれた地方の実現に向け、支援も行います。地場産品の発掘・ブランド化や少子化対策への取り組み、外国企業の誘致などについて、その地方独自のプロジェクトを自ら考え、前向きに取り組む自治体に対し、地方交付税の支援措置を新たに講ずる「頑張る地方応援プログラム」を来年度からスタートさせます。
活力に満ちた日本経済には全国430万の中小企業の元気が不可欠です。中小企業の知恵とやる気を活かし、地域資源などを活用した新商品・新サービスの開発や販売を促進します。
地方を支える農林水産業は、新世紀にふさわしい戦略産業としての可能性を秘めています。日本の農林水産物や食品は国内向けとの固定観念を打破するため、「おいしく、安全な日本産品」の輸出を、平成25年までに1兆円規模とすることを目指します。「人生二毛作」の実現に向け、就業を促進する仕組みをつくります。
NPOなど「公」の担い手を支援し、官と民との新たなパートナーシップを確立します。