その他 : 資金循環システムに関する実態調査
6月23日、内閣府は、平成19年度内閣府委託調査「『豊かな公』を支える資金循環システムに関する実態調査」の報告書を公開した。報告書では、NPO 法人が会費や寄付を集めやすくするための寄付者への税制優遇の重要性などが提言されている。
民間が公共的なサービスの担い手として期待されている一方で、その担い手に対する資金的な支援の乏しさは顕著。そこで、内閣府は、平成18年度に、第1回目の「『豊かな公』を支える資金循環システムに関する実態調査」を実施。
平成18年度の調査では、資金の出し手受け手を仲介する資金支援の仕組みに着目。NPOなどへの資金支援を行っている助成財団や金融機関に対してアンケート調査を実施することにより、現行の資金支援の仕組みについて実態を調査。加えて、NPOへのヒアリング調査により、資金支援の仕組みの実態把握を行った。
その結果、融資や寄附、公益信託等諸制度について、より利用しやすい環境整備や制度の見直しの余地があることが示唆された。
そこで、平成19年度は、豊かな「公」を支える資金循環システムを構築するために求められる政策的な諸課題を整理し、いくつかの具体的な提言を提示することを目的として、2回目の調査を行った。
この調査では、法人制度、資金調達手段、寄附金税制、評価システム、会計基準等に関する有識者と実務者から構成される研究会を設置。
研究会では、以下の2つの論点を扱っている。
1.豊かな公の担い手について(非営利・営利の境界線に関する考え方の整理、様々な担い手のための新たな枠組みの可能性)
2.資金循環のあり方について(ガバナンス・アカウンタビリティのあり方、評価システムと中間支援組織のあり方、税制のあり方)
6月23日に公開された報告書では、研究会で出された「主な意見」のなかで、
「NPO の経営困難の背景には、経営モデルが描きにくく、『市民が支える公共領域における市場(市民市場)』を構築できていないことがある。こうした現状を転換するため、パブリック・サポート・テストについて、無償役務の提供も評価できる仕組みに改め、税制や民間支援のインセンティブが連動するようなシステムにする必要がある。」との提言がなされている。
また、非営利法人のディスクロージャーの今後のあり方としては、「会計書式の標準化と電子ファイリング化を進め、各法人のデータが包括的に公開されるようにすべきである。そうすることによって、市民の眼による評価が可能となり、各法人ひいては非営利セクター全体の信頼性向上につながるものと考えられる。」との見解が示された。
加えて、19年度の調査では、非営利活動の現場における資金需要の実態を把握するため、様々な活動領域(子育て支援、介護・福祉、街づくり等)、法人格(NPO 法人、公益法人、株式会社等)で活動する合計30 団体に対してヒアリング調査を実施。
ヒアリングで示された見解として、「NPO 法人の情報を一元化したデータベースを作り、市民がNPO 法人の活動をチェックできるような環境づくりが必要」だと、情報・評価システムの必要性があげられている。
また、法人制度について、「NPO 法人はようやく認知されてきたところであり、法人制度をより使いやすいものにしていくという観点では、新しい法人形態をつくるよりも、現在の株式会社やNPO法人の制度を修正していく方が、一般の人々にはわかりやすい。」との見解も示されている。
さらに、「NPO 法人が会費や寄付を集めやすくするための寄付者への税制優遇が必要。」との意見も示されている。
報告書には、研究会での議論やヒアリング調査の結果を理解する上で役に立つ、「基礎資料」として、各種統計データなども掲載されている。
平成19年度内閣府委託調査「『豊かな公』を支える資金循環システムに関する実態調査」の報告書は、内閣府サイト内、下記に掲載されている。
http://www5.cao.go.jp/keizai2/2008/0623yutakanaooyake/index.html