その他 : ソーシャルビジネスの“集い”ギャザリング開催
社会的企業家によるソーシャルビジネスを支援する組織、NPO法人ソーシャル・イノベーション・ジャパン(SIJ)(代表理事:日野公三)は、9月4・5日に「第5回ソーシャル・アントレプレナー・ギャザリング」を開催した。
日本でも、コミュニティ開発・障害者雇用・高齢化社会・青少年教育・途上国支援・環境問題等の社会的課題に、ビジネスとして取り組む動きが広がりつつある。こうした動きをさらに推進していくため、特定非営利活動法人(NPO法人)ソーシャル・イノベーション・ジャパン(SIJ)は、2005年より社会的企業の全国大会「ソーシャル・アントレプレナー・ギャザリング」を開催している。企業、NPO/NGO、政府、研究機関、メディア等、ソーシャルビジネスに関心を寄せる多様なセクターからの参加を得ている。
■トークセッション
4日の開会式に続いて行われたトークセッションでは、通信販売の株式会社フェリシモ矢崎和彦代表取締役社長、チコリの栽培を通じた農業支援を実施する株式会社ギアリンクスの中田智洋代表取締役社長、ミドルエイジの女性の就職支援に特化した株式会社フラジュテリーの橘田佳音利代表取締役が、それぞれのビジネスとその社会的意義を語った。
(ギャザリングの模様 キックオフスピーチ 9/4)
ファシリテーターの谷本寛治一橋大学教授からは、自身の20年以上にわたるソーシャルビジネスの研究を通じて、社会性と事業性の両立の困難さについて発言があった。また、起業直後と現在での社会環境の変化についても問いかけを行った。これに答える形で、3氏からは以下の発言があった。
よいものを安く提供することに意義を感じる企業もあるが、フェリシモは社会を変えることに意義を見出した。社員もそうしたことに心地よさを感じてくれている。困難なことも多いが、心地よい。
かつては、企業は本業を通じて収益を上げて、その中からメセナ等を通じて社会貢献すべきとの風潮があった。阪神淡路大震災の発災以降、企業の意識も社会の風潮も変わった。
熱い想いを持った人が自ら立ち上がり、周囲がそれをサポートする社会になってほしい(矢崎氏)。
岐阜県での農業と南米の日系人移民の農業支援をリンクさせることで価値を生み出している。大手の企業では採算の合わない事業になってしまうので、逆に大きくない我々の事業規模でも収益を出している。
利益は必ず必要だが、社会を変えたいという想いが募ったときにわれわれのような新しい事業が生まれるのだと思う。
現在よりも収益の少なかった数年前に「ガイアの夜明け」(テレビ東京)で取り上げてもらったときに、企業の規模だけでなく、事業の意義や社会性に注目が集まっているのだと感じた。
これからは、社会的に意義があることが企業にとってたりまえのことになっていくのではないかと感じている(中田氏)。
自身の就職・性別・年齢差別の体験があって起業した。この事業の意義については、働く側の女性のニーズが非常に大きい。彼女たちのサポートができることに喜びを感じる。女性を雇用する企業側にも意識の変化が見られる。
起業した6年半前と比べて、女性・年齢差別はよくないという風潮が非常に強くなった。女性の雇用に積極的な企業も増えてきて、世論の後押しも感じている。
これからの社会は多様性の社会。70歳まで働きたい人もいれば、50代でリタイアしてゆったり過ごしたい人もいる。そのどちらも実現可能な社会を目指したい(橘田氏)。
株式会社Frajouterie: http://www.frajouterie.com/
株式会社ギアリンクス: http://www.gialinks.jp/
株式会社フェリシモ: http://www.felissimo.co.jp/
■ソーシャルビジネスアワード表彰式
4日に行われたソーシャル・ビジネス・アワードでは、下記の法人が各章を受賞した。
1)ソーシャルビジネス賞
・山梨日立建機株式会社・・・地雷除去機の開発・カンボジアの地雷除去
・株式会社カタログハウス・・・通信販売分野におけるグリーンコンシューマー拡大プロジェクト
2)ソーシャルベンチャービジネス賞
・中村ブレイス株式会社・・・過疎地域(島根県)での福祉用具開発・製造事業
・社会福祉法人素王会・・・知的障がい者がアーティストとして自立することを支援
3)ソーシャルエコビジネス賞
・NPO法人タウンモービルネットワーク北九州・・・自転車を活用した駐輪施設整備プロジェクト(環境大臣賞受賞)
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(ギャザリングの模様 表彰式 9/4)
4)奨励賞
・有限会社エコファーム・・・食品リサイクルと養豚・農業の両立
・NPO法人宮崎文化本舗・・・映画を中心とする芸術文化の街づくり・仕組みづくり
・NPO法人森の生活・・・林業を中心とした多様なサービス事業(精油作り)シモカワ
■交流会
4日の夜には、全参加者の交流会が行われ、SIJの谷本最高顧問より挨拶があった。続いて日の代表理事より乾杯の発声があり、会場はソーシャルビジネスに関心を持つ参加者の交流の場として賑わいを見せた。また、特別ゲストとしてスイスに拠点を持つシュワブ財団のヒルデ・シュワブ氏が駆けつけ、祝辞を述べた。
(ギャザリングの模様 交流会 9/4)
■各分科会について
4日と5日には分科会が行われ、ギャザリングの各参加者がそれぞれの分科会に出席して議論を交わした。分科会の議題は下記のとおり
●分科会1「社会が求めるビジネスの在り方 ~企業の社会性はどう評価されるか~」
登壇者
・濱口敏行氏(ヒゲタ醤油株式会社代表取締役社長/社団法人経済同友会(NPO・社会起業推進委員会委員長)
・原丈人氏(デフタ・パートナーズグループ会長)
・山岸徳人氏(富国生命投資顧問株式会社株式運用部・株式運用グループSRI担当)
・コーディネーター:岩坂健志氏(SIJアドバイザー/サンケァフューエルス株式会社取締役)
●分科会2「ソーシャル・マーケティングの可能性~ソーシャル・ビジネスが消費者とコミュニティを繋ぐ!」
登壇者
・竹田義信氏(アサヒビール株式会社理事・社会環境推進部長)
・杉浦克典氏(アサヒビール株式会社ビール戦略部・チーフプロデューサー)
・中島好美氏(アメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc.個人事業部門マーケティング担当 副社長)
・プリュン・エフテル氏(世界の医療団日本(メドゥサン・デュ・モンド ジャポン)事務局長)
・吉沢 直大氏(ダノンウォーターズオブジャパン株式会社「 1L for 10L」プログラムプロジェクトリーダー)
・浦上 綾子氏(財団法人日本ユニセフ協会広報室)
・コーディネーター:土肥将敦氏(SIJシニアフェロー/高崎経済大学地域政策学部准教授)
・サブコーディネーター:中野里美氏(SIJフェロー/株式会社ソシオ エンジン・アソシエイツ シニアコンサルタント)
●分科会3「企業が育てる、子どもたちの“ソーシャル・アントレプレナーシップ”~企業の「新しい教育CSR」の可能性を探る~」
登壇者
・横須賀剛順氏(野村ホールディングス株式会社コーポレートシティズンシップ推進室)
・萩原美穂氏(ソフトバンク株式会社総務部CSRマネージャー)
・横尾敏史氏(NPO法人鳳雛塾 事務局長 / 佐賀銀行人事企画部 副調査役)
・後藤宗明氏(NPO法人rolemodel.jp(申請中))
・コーディネーター:松倉由紀氏(株式会社ソシオ エンジン・アソシエイツ ラーニング・デザイン・ユニット プログラム・オフィサー)
●分科会4「技術革新とソーシャルビジネス」
登壇者
・赤澤輝行氏(株式会社eスター代表取締役社長)
・穴水孝氏(東京ガス株式会社 総合企画部エネルギー・技術企画グループマネージャー)
・速水浩平氏(株式会社音力発電 代表取締役)
・コーディネーター:大室悦賀氏(SIJ常務理事/京都産業大学経営学部准教授)
●経済産業省SB分科会「ソーシャルビジネス~新たな地域力と共鳴のしくみ~」
登壇者
・勝田亮氏(弁護士/NPO法人ロージーベル副理事長・NPO法人ワンファミリー仙台理事/NPO法人ほっぷの森理事・NPO法人ふうどばんく東北AGAIN副理事長)
・坂本竜児氏(NPO法人中部リサイクル運動市民の会 eco-T(エコット)担当)
・野田耕一氏(経済産業省地域経済産業グループ立地環境整備課長)
・渡辺一馬氏(株式会社デュナミス代表取締役/NPO法人ハーベスト常務理事)
・コーディネーター:関戸美恵子氏(NPO法人起業支援ネット理事/東海・北陸コミュニティビジネス推進協議会代表世話人)
(ギャザリングの模様 分科会 9/4)
●分科会5「いま日本全国で活躍する、気鋭のソーシャル・アントレプレナー達が語る!
~「社会を変える仕事」挑戦の軌跡と未来への課題~」
NPO法人ETIC.が様々なプログラムを通して育成・支援してきたソーシャル・アントレプレナーを招き、その課題解決のアプローチやビジネスモデルを解説頂くとともに、日本において次代に続く挑戦者を育むためのビジョンを議論します。
登壇者
・秋元祥治氏(NPO法人G-net 代表理事)
・塚田寛一氏(株式会社ヨセミテ代表取締役)
・村田早耶香氏(SIJフェロー/NPO法人かものはしプロジェクト共同代表)
・牧大介氏(株式会社トビムシ 取締役・事業プロデューサー)
・コーディネーター:宮城治男氏(NPO法人ETIC.代表理事)
●分科会6「ソーシャルビジネス事業者、行政、農業者、市民の有機的な連携による地域活性化~滋賀県野洲市における展開~」
登壇者
・遠藤由隆氏(滋賀県野洲市役所 協働推進課 課長補佐)
・立入誠悟氏(有限会社たちいり新聞販売店店長)
・辻村美喜子氏(すまいる市野洲駅前店責任者)
・南次雄氏(南農園経営)
・コーディネーター:大室悦賀氏(SIJ常務理事/京都産業大学経営学部准教授)
●分科会7「企業は生物多様性にどう関わるのか~生物多様性貢献を本業業務に位置付ける~」
登壇者
・宮本育昌氏(富士ゼロックス株式会社CSR部企画グループ)
・中島恵理氏(環境省総合環境政策局環境教育推進室&民間活動支援室室長補佐)
・コーディネーター:中川芳江氏(SIJ理事/株式会社ネイチャースケープ専務取締役)
●分科会8「集まれ!農業ビジネスに挑戦したい人!」
登壇者
・木村修氏(農事組合法人伊賀の里モクモク手づくりファーム社長理事)
・宮治勇輔氏(NPO法人農家のこせがれネットワーク代表理事CEO/株式会社みやじ豚代表取締役社長)
・吉田和生氏(NGO大地を守る会理事)
・コーディネーター:福本眞也氏(株式会社ベネッセコーポレーション 事業創成推進室 インキュベーションマネージャー)
●分科会9「ソーシャルビジネス実践者向けスクール」
テーマ:「ミッションベースのイノベーション戦略」
使用ケース:慶應ビジネススクール公式ケース「NPO法人フローレンス」
登壇者
・講師:国保祥子氏(SIJフェロー/慶應ビジネススクール博士課程・特別研究助教)
・コーディネーター:坂本文武氏(SIJ理事、ウィタンアソシエイツ株式会社 取締役シニアコンサルタント・コメンテーター:小出浩平氏(SIJシニアフェロー/NPOサスティナブルコミュニティ研究所理事)
・コメンテーター:森本登志男氏(SIJアドバイザー/マイクロソフト株式会社 公共営業本部 自治体営業部 シニアマネージャー)
■このほかに、米国に拠点を持つマイクロ・ファイナンスえを実施しているKIVAのMatt Flannery NPO Kiva.org共同創設者兼CEOが特別講演を行った。
NPO法人ソーシャル・イノベーション・ジャパン(SIJ)のホームページは下記。http://www.socialinnovationjapan.org/
SIJのソーシャル・アントレプレナー・ギャザリングに関するページは下記。
http://www.socialinnovationjapan.org/c000007/archives/2009/05/29/entry217.html