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その他ニュース

2010年03月08日 22:00

その他 : 新しい公共円卓会議、NPO・寄付税制を議論

 3月2日、政府は「新しい公共」円卓会議の第2回会合を開催した。今回は「税制」がテーマ。認定NPO法人制度・寄附税制などについて、金子郁容座長は連絡会の提案にもある「仮認定」制度や事業型NPO向けパブリック・サポート・テスト(PST)の導入、寄附金控除での税額控除方式創設などを提案。鳩山首相・渡辺総務副大臣をはじめ、各委員からは積極的な発言が相次いだ。

 

 「新しい公共」円卓会議は、「『新しい公共』という考え方やその展望を市民、企業、行政などに広く浸透させるとともに、これからの日本社会の目指すべき方向性やそれを実現させる制度・政策の在り方などについて議論を行うこと」を目的に設置、1月27日に初会合を開催した。

メンバーは金子郁容氏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)や福原義春氏(株式会社資生堂名誉会長)、谷口奈保子氏(NPO法人ぱれっと創始者・理事長)、大西健丞氏(一般社団法人CIVIC FORCE代表理事)ら、経営者や研究者、NPO/NGO関係者など19名で構成。内閣総理大臣や副総理、内閣官房長官、内閣府特命担当大臣(「新しい公共」担当)が出席する。座長は慶応大学院教授の金子郁容氏。

参考ニュース「政府の『新しい公共』円卓会議が発足」(2010/01/29)
/2010/01/その他-政府の「新しい公共」円卓会議が発足/

3月2日の第2回会合では、「税制のあり方について」が主要議題となった。そのため、同時並行的にNPO・寄付税制の議論を進めている政府税制調査会の市民公益税制プロジェクト・チームの渡辺周総務副大臣や峰崎直樹財務副大臣も出席した。

事前の委員間の意見募集などを経て、金子座長が検討課題のたたき台として、「社会制度面での環境整備」と「『居場所と出番』プロジェクト」の2つに、10項目ずつ課題を整理。これを基に、各委員・政府側関係者との意見交換が行われた。

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●1.社会制度面での環境整備
(1) 税制
(2) 法人制度
(3) NPO等に対する金融
(4) 奨学金制度等
(5) 自治体による「コミュニティマネー(目的限定のクーポン)」による地域活性化とNPOなどによる多様な専門的社会サービスの市場形成
(6) 自治体による民間への業務委託についての新しい仕組みのパッケージ
(7) 「非営利セクター」と「政府」の連携に関する包括協定(日本版コンパクト)
(8) 社会イノベーション推進戦略
(9) マッチングのための地域インフラ整備
(10) 社会的責任投資とコミュニティ投資(地域再投資法の設定等)の促進

●2.「居場所と出番」プロジェクト
(1) 地域で支える学校
(2) チャレンジドショップ
(3) 企業の社会参加、CSR
(4) 環境プロジェクト
(5) 海外への災害チームの派遣などの仕組み
(6) 眠れる能力の活用
(7) 国際的な広がりがあるソーシャルベンチャープログラム
(8) 地域における居場所と出番づくり:「いろどり」モデルの他地域への展開
(9) NPOと政府・自治体、学校など公的機関、企業などを巻き込んだ地域再生のための政策形成の場づくり
(10) 非営利活動を促進する「寄付推進機構」、「新社会創造基金」の設置 など
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認定NPO法人制度については、「事業型NPOの認定」や「パブリックサポートテストの見直し」が盛り込まれた。金子座長は「認定NPOのパブリックサポートテストがかなり使いづらい。ここを変えたいと思う。なるべく間口を広くして、最初の敷居は下げる。一方、事後チェックをしっかりやるという風に変えていく。」と述べ、下記「認定特定非営利活動法人のパブリックサポートテスト(PST)の事後チェック化」を提案した。

金子座長は「『新しい公共』の担い手を育てるための税制の考え方」として「間口は広く、事後チェックをしっかりやる」方向性を提示。幅広く優遇税制対象を認める代わりに、事後チェックを強化する方針のようだ。

金子座長の提案は、市民公益税制PTなどで、シーズやNPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会が要望した内容にほぼ沿ったものとなっており、高く評価できるものだ。

参考ニュース「事業型NPOも支援へ、制度の抜本改正を提案」(2010/02/24)
/2010/02/その他-事業型npoも支援へ、制度の抜本改正を提案/

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■提案1:認定特定非営利活動法人のパブリックサポートテスト(PST)の事後チェック化など
現状:2010年3月1日現在、認定NPO法人数は119(NPO法人総数39,217(1月末現在)の0.3%)
・公益性など(PST以外の)一定の要件を満たしたNPOは特定NPOとして仮認定する。
・この要件は簡易にし、プロセスは透明なものとする。
・一定期間後にPSTを適用し、合格なら本認定し、合格しなければ仮認定を取り消し、一定のペナルティを課す。
・検討事項:(i)PSTの総収入から特定非営利活動による事業収入を除外する、(ii)寄付者の控除を「税額控除」「所得控除」の選択制とする、(iii) みなし寄付金制度における損金算入限度額を所得金額の50パーセントとする。
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この提案に対して、多くの委員や政府関係者から積極的な発言が相次いだ。

峰崎直樹財務副大臣は「国税当局側の調査では、パブリックサポートテストを変えることが大きな要望との報告がある。しかし、当局はここを厳しく縛ってきた。私としても、これを改革すべきだと思う。」と座長の提案を支持。「実績のある先輩NPOが、新しいNPOの保証人になるというアイディアもある。」とも述べた。

井上英之委員(慶應義塾大学総合政策学部専任講師)も「今までの仕組みでは事業型NPOがパブリックサポートを通らない。『事業収入を総収入から除く』という提案はとても良い。」と賛同を示した。一方で「多くのNPOが財務状況などの報告を行っていない。間口を広げつつ、最低限の報告をしないところには罰則を含めた事後チェックを行うべき。」と述べ、事後チェックの重要性を強調した。

佐野章二委員(ビッグイシュー日本代表)は「(仮認定後の本認定で)ペナルティを行政が与えたら、行政が肥大する。肥大化する行政から脱却しないと。」として、仮認定後、本認定を受けられなかった際のペナルティに慎重姿勢。

オンライン(Twitter)にて参加していた寺脇研委員(京都造形芸術大学芸術学部教授)も「PST(パブリック・サポート・テスト)は緩やかにすべき。性善説で行こう。」と見直しに積極的な発言。

自身も事業型のNPOを経営している谷口奈保子委員(NPO法人ぱれっと創始者・理事長)は「ずっと認定NPOになりたかった。チェックやペナルティーは大切だが、育成の視点をきちんと持ってほしい。お金の寄付もそうだが、労働力の寄付も寄付足りうる。」と語った。

福嶋浩彦委員(前我孫子市長)は「『認定NPOを自治体で認定する』というルートがあっても良いと思う。」と提案。

平田オリザ内閣官房参与は「行政では、もはや社会的包摂を支えるのは無理。担い手を増やすような税制・制度について話さなくてはならない。」と必要性を述べた。

こうした意見を受けて、市民公益税制PTの座長である渡辺周副大臣は「市民公益税制PTでは、有識者からヒアリングを行った。主な論点は、金子先生のご指摘と同様。PSTの見直し・税額控除の導入・控除対象拡大。自治体に基金をつくり、自治体を通して寄付が分配されるような仕組みも考える。なんとか税制改革を頑張りたい。」と述べ、今後の市民公益税制PTでの議論に意欲を示した。

会議終盤に登場した鳩山首相も「ぜひ税額控除を実現したい。さきがけ時代からずっと私は言い続けてきたが、役所の壁を破れぬまま、今日を迎えてしまっている。この問題にしっかり穴を開けたい。ぜひ速く結論を出してほしい。」と述べ、特に寄附金の税額控除方式創設に強い意欲。

また「公益認定拡充の問題も、ぜひ積極的にやって欲しい。どのように政府が関わるかは問題になる。政府は大きな顔をしてはいけない。認定も民間でできるような仕組みはできないかと思う。NPOを支える小規模な金融も創りたい。」と述べ、民間機関による認定の可能性に触れた。

寄付税制・寄付文化に関しても、各委員の積極的な姿勢が目立った。

大西健丞委員(公益社団法人Civic Force代表理事)は米国のプランドギビング制度(生前に遺産の寄付の使い方を決められる制度)に触れ、日本への導入を提案。

佐野委員は「今の税制は『寄付抑圧税制』だ。土地の寄付では値上がり分に課税され、納税が必要になる。これでは寄付できない。物納もやりにくい。また、公益財団法人京都地域創造基金をモデルケースに『新社会創造基金』や『寄付推進機構』のようなものをつくるべきだ。」と提案。

金田晃一委員(武田薬品工業株式会社コーポレート・コミュニケーション部シニア・マネジャー)は「政府が寄付を奨励する広報にお金を使うよりも、NPOが寄付者に対してしっかりフィードバックする際のフィーを払うべき。そして、寄付のリピーターをつくるべき。」と提案。

秋山をね委員(株式会社インテグレックス代表取締役社長)は「国民とNPOをつなぐ寄付ポータルサイトが必要だ。寄付の規制を緩和し、ITで寄付を促進できるようにしよう。」と述べた。

他にもコミュニティ・スクールや企業の社会的責任(CSR)、新公益法人制度の公益認定、委託事業のあり方(フルコストリカバリー)、NPOバンク、日本版コンパクトなどが議論になった。

今回の「新しい公共」円卓会議での議論を受けて、翌3日には市民公益税制PTにて、金子座長と福嶋委員が出席してメンバーらと意見交換。認定NPO法人制度の仮認定や寄附金税額控除などが、引き続き議論された模様だ。

市民公益税制PTと共に、新しい公共円卓会議での議論にも注目していきたい。

「『新しい公共』円卓会議」については、内閣府サイト内、下記ページを参照。会議資料の入手や会議動画の閲覧が可能。
http://www5.cao.go.jp/entaku/index.html

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検討課題(たたき台)

1.社会制度面での環境整備
(1) 税制
・ 医療、環境、教育など社会分野の活動に対する寄付税制等(以下を含む)
-NPOや環境・伝統工芸・小規模事業などに対するICTビジネスツール、クリック募金、少額融資プラットフォームなどの提供に対する優遇措置
-公立学校の学校支援地域本部などへの寄付
-遺贈税制の検討(例えば、非営利のホスピスや在宅医療サービスなど)
・ 自治体が指定した機関への寄付について、独自に個人住民税を控除できるような仕 組みを設ける
・ 企業の社会貢献部署をファイヤーウォール化した「企業内財団」、「企業内学校法 人」等の制度設計と優遇措置

(2) 法人制度
・ 「社会事業法人法」(いわゆる社会的企業に関する法人制度)
・ 「事業型NPO」の認定についての検討(「事業型」の範囲や公益性)
・ 「労働協同組合」(「ワーカーズコープ」、「ワーカーズコレクティブ」を含む)の制度整備
・ 民法法人などの公益認定の基準・手続き等の透明化、事後チェック制度の検討(認定における準則主義と事後監査化、仮認定、既存公益認定団体による保証)
・ 認定特定非営利活動法人のパブリックサポートテストの見直し
・ 多様な学校の設置を促進する制度(特区(株式会社立学校、インターネット授業な ど)や小中学校にかかわる学校法人の設立要件の更なる検討)

(3) NPO等に対する金融
・ NPOバンク等の活動を円滑化するための仕組みの検討(貸金業法の適用除外範囲の拡大等)
・ 消費者信用生協等の取り組んでいる多重債務者支援制度の促進
・ NPO融資(信金、労金、NPOバンク等)とNPOの評価を実施する機関との連携促進
・ NPOなどへのつなぎ資金の確保

(4) 奨学金制度等
・ 学生へ貸与した奨学金について、卒業後、地域の社会ニーズのある分野に継続して勤務する場合の返済支援等
・ 社会貢献のための休暇取得の促進

(5) 自治体による「コミュニティマネー(目的限定のクーポン)」による地域活性化とNPOなどによる多様な専門的社会サービスの市場形成
・ 児童生徒にかかわる子育て、教育等のサービス費用の支援(時間外・病児保育、不登校フリースクール、発達障がいや障がいのある児童生徒への支援など)、学校への寄付など
・ 高齢者の健康維持・向上の支援、ボランティア活動の支援など

(6) 自治体による民間への業務委託についての新しい仕組みのパッケージ
・ 民間提案型の業務委託
・ アウトプットベースの契約

(7) 「非営利セクター」と「政府」の連携に関する包括協定(日本版コンパクト)

(8) 社会イノベーション推進戦略
・ ソーシャル・キャピタルの高いコミュニティを作るための時限的な、地域/対象地域・機関を限定した、ピンポイント、ないし、包括的な規制緩和特例措置の実施(例えば、遠隔地医療、エネルギーの地産地消など地域コミュニティによる環境適応策、当直医ネットワーク等)

(9) マッチングのための地域インフラ整備
・ NPO、社会的企業への人材、寄付等のマッチング機能
・ 社会的企業の評価のあり方 など

(10) 社会的責任投資とコミュニティ投資(地域再投資法の設定等)の促進

●2. 「居場所と出番」プロジェクト
(1) 地域で支える学校
・ 学校・地域連携プロジェクト(いい学校をつくるための地域連携の実践)
・ もっと本を読もう、学校に本をプロジェクト(国民読書年にちなんで学校に本を寄付する、よい本を紹介する、図書館・公民館を活用するなどの提案)

(2) チャレンジドショップ
・ 障がい者の社会参加

(3) 企業の社会参加、CSR
・ CSRの評価をする仕組み、情報提供をする仕組みの拡充
・ ソーシャルイントラプレナーの促進

(4) 環境プロジェクト

(5) 海外への災害チームの派遣などの仕組み
・ 大規模災害への対応プラットフォームの形成
・ 友愛ボートの利用

(6) 眠れる能力の活用
・ 地域づくりや教育への定年退職者の能力等の活用(例.手助けが必要な子どもたちの勉強を高齢者が手伝う、若者が高齢者から「伝記」をインタビューする)
・ 眠れる「士」(介護士、看護師、保育士等)の活用のためのインフラ整備

(7) 国際的な広がりがあるソーシャルベンチャープログラム

(8) 地域における居場所と出番づくり:「いろどり」モデルの他地域への展開

(9) NPOと政府・自治体、学校など公的機関、企業などを巻き込んだ地域再生のた
めの政策形成の場づくり

(10) 非営利活動を促進する「寄付推進機構」、「新社会創造基金」の設置 など

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「新しい公共」円卓会議 第二回 座長提案の説明ペーパー

「新しい公共」の担い手を育てるための税制の考え方:「間口は広く、事後チェックをしっかりやる」
・・・「税の優遇を受けるべきでない対象に優遇措置を適用してしまうリスク」と「「新しい公共」の担い手になるはずの対象者の芽を摘みとってしまうリスク」を比べたとき、第二のリスクを回避することを基本とする。第一のリスクは事後チェックで最少にしつつ、まずは、やる気のある人・団体にチャンスを与えることで社会を活性化する。

■提案1:認定特定非営利活動法人のパブリックサポートテスト(PST)の事後チェック化など
現状:2010年3月1日現在、認定NPO法人数は119(NPO法人総数39,217(1月末現在)の0.3%)
・公益性など(PST以外の)一定の要件を満たしたNPOは特定NPOとして仮認定する。
・この要件は簡易にし、プロセスは透明なものとする。
・一定期間後にPSTを適用し、合格なら本認定し、合格しなければ仮認定を取り消し、一定のペナルティを課す。
・検討事項:(i)PSTの総収入から特定非営利活動による事業収入を除外する、(ii)寄付者の控除を「税額控除」「所得控除」の選択制とする、(iii) みなし寄付金制度における損金算入限度額を所得金額の50パーセントとする。

■提案2:企業のCSR部署を“ファイヤーウォール化”した“企業内財団”の設置を検討する
現状:企業や企業で働く人も「新しい公共」の重要な一員。公益性の担保をしつつ、最近盛んになってきた企業のCSR活動をよりやりやすくする方策をとる。
・企業の一部署を“ファイヤーウォール”で通常の企業活動と切り分け、企業財団と同程度の優遇措置を講じる。このことは届け出によって可能にする。
・公益性の担保のため、“企業内財団”の活動対象を、たとえば、「文化・芸術・伝統工芸」「農業・里山・棚田」など、確認が容易なものに限定する。一定の書類の提出によって事後チェックする。
(以下は、直接は税制の問題ではないが関連事項として提案する。)

■提案3:公益認定基準の簡易化、手続き等の透明化と事後チェック
現状:2010年2月末までの特例民法法人(平成20年12月1日時点 24,317)による移行認定申請は全国で433件(総数の1.8%)、認定を受けたものが111件(同0.5%)
・基準を簡易化する。その上で、簡潔な基準によって“トリアージ”し、入念な審査が必要な(少数の)案件を取り分ける。
・その他の案件は、一定の書類の提出によって基準を満たす事を確認し、認定する。
・これらのプロセスは、ウェブで認定事例集を公表するなど徹底的に透明化する。事後チェックをしっかり行う。
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※本記事作成には、当日の江口氏・駒崎氏両氏による下記Twitter実況を参考にさせていただいた。この場を借りて感謝申し上げたい。
http://togetter.com/li/7819

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