その他 : 社会的責任の国際規格「ISO26000」が発行
11月1日、組織の社会的責任に関する国際規格「ISO26000」が発行した。ISO(国際標準化機構)が2004年から本格的な検討を行ってきた。NPO/NGOを含む、様々な組織が社会的責任を果たす上での手引きとなるもの。ISO9000や14000と異なり、認証を行う仕組みではない。
「ISO26000」は、組織の社会的責任(SR:Social Responsibility)に関する国際規格。
日本においては、「社会的責任」というと「企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)」を思い浮かべる人が多いと思われる。
しかし、現代社会においては、企業に限らず、あらゆる組織が社会的な責任を果たしていく必要があることなどから、今回のISO26000は企業だけではなく、NPO/NGOや労働組合、政府など様々な組織を対象としている。
日本でも有名なISO9000やISO14000などを策定しているISO(国際標準化機構)が2004年頃から本格的な検討を行ってきた。
検討には、世界83か国の標準化機関が正式参加、16か国がオブザーバー参加した。日本においては、「ISO/SR国内委員会」が設置され、策定に参画。国内標準化機関である財団法人日本規格協会が事務局、一橋大学大学院法学研究科教授の松本恒雄氏が委員長(平成22年度)を務めている。
ISO/SR国内委員会は、消費者・産業界・政府・労働・NGOなどのグループから計40名弱のメンバーで構成。
NGOグループは「社会的責任向上のためのNPO/NGOネットワーク(NNネット)」のメンバーが中心で、堀江良彰氏(認定NPO法人難民を助ける会事務局長)や水谷綾氏(社会福祉法人 大阪ボランティア協会事務局長)、黒田かをり氏(CSOネットワーク共同事業責任者)らが参加。
国際的なISO26000の策定進捗に合わせた意見提出や、国内での情報発信・普及活動を行ってきている。
今回発行したISO26000では、具体的に以下のようなことが盛り込まれている。
(日本規格協会による訳を参考)
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
・Concepts, terms and definitions related to social responsibility
社会的責任に関する概念、用語及び定義
・Background, trends and characteristics of social responsibility
社会的責任の背景、潮流及び特徴
・Principles and practices relating to social responsibility
社会的責任に関する原則及び慣行
・Core subjects and issues related to social responsibility
社会的責任に関する中核主題及び課題
・Integrating, implementing and promoting socially responsible behaviour throughout the organization and, through its policies and practices, within its sphere of influence
組織全体及びその組織の影響力の範囲における、その組織の方針及び慣行を通じた社会的に責任ある行動の統合、実施及び推進
・Identifying and engaging with stakeholders
ステークホルダーの特定及びステークホルダーエンゲージメント
・Communicating commitments, performance and other information related to social responsibility.
社会的責任に関するコミットメント、パフォーマンス、その他の情報の伝達
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「社会的責任に関する原則及び慣行」では、社会的責任の原則として、次の7点を挙げている。
1.説明責任(Accountability)
2.透明性(Transparency)
3.倫理的行動(Ethical behaviour)
4.ステークホルダーの利害の尊重(Respect for stakeholder interests)
5.法による支配の尊重(Respect for the rule of law)
6.国際的な行動規範の尊重(Respect for international norms of behaviour)
7.人権の尊重(Respect for human rights)
「社会的責任に関する中核主題及び課題」では、社会的責任を実現する上での、主だったテーマとして、次の7点を設定。それぞれについて、何点かの課題が述べられ、社会的責任におけるポイントが記載されている。
1.組織統治(Organizational governance)
2.人権(Human rights)
3.労働慣行(Labour practices)
4.環境(The environment)
5.公正な事業慣行(Fair operating practices)
6.消費者課題(Consumer issues)
7.コミュニティへの参画及びコミュニティの発展(Community involvement and development)
これらISO26000規格本体のみでは、内容の理解や各組織での具体的な活用は難しい。
策定の経緯や「ISO/SR国内委員会」に関する情報は、日本規格協会サイト内の下記ページを参照。国際文書の邦訳も入手できる。
http://iso26000.jsa.or.jp/contents/
また、中小企業向けに「やさしい社会的責任-ISO26000と中小企業の事例」を公開しており、これはNPO/NGOでも活用できると思われる。
概要⇒ http://iso26000.jsa.or.jp/_inc/top_iso/1.gaiyou.pdf
NPO/NGOでの活用については、ISO/SR国内委員会にも参加している「社会的責任向上のためのNPO/NGOネットワーク」が編集した下記ブックレットが参考になる。
『これからのSR―社会的責任から社会的信頼へ』
社会的責任向上のためのNPO/NGOネットワーク 編
定価700円(税込) A5判・48ページ
第1部 概論
第2部 SRの基礎を学ぶQ&A
第3部 事例に学ぶ・地域ぐるみですすめるSR
詳細・購入⇒ http://www.sr-nn.net/kenshu3.html
今後の各組織での活用やそれによる成果に注目していきたい。
※参考ニュース
参考ニュース「社会的責任円卓会議、来春に協働戦略策定へ」(2010/07/23)
/2010/07/その他-社会的責任円卓会議、来春に協働戦略策/
参考ニュース「社会的責任円卓会議にNPO/NGOが提案へ」(2009/06/24)
/2009/06/その他-社会的責任円卓会議にnpo-ngoが提案へ/
参考ニュース 「SR(社会的責任)フォーラム開催」 (2008/10/22)
/2008/10/その他-sr(社会的責任)フォーラム開催/