シーズの顔
松原明(まつばらあきら)チーフ・プロデューサー
私が思うに、市民活動というのは、将棋のようなものなのです。
ロビイングで言えば、まず半年先くらいまで政治の行方を頭の中でシミュレーションし、それを基にこつこつと細かい文言を作成します。そして法律が現実になった時に、何がどう変わるか、予測を常に働かせ、照らし合わせ修正し続ける、根気のいる作業ですね。
一方で、多くの人達と協働することを考えたとき、そこには脚本家の役割も求められます。政治家やNPO、企業など多くの方に、法改正という舞台で活躍してもらうために、彼らにそこに立ってもらえるだけの「役づくり」と「脚本」をしなければなりません。それが私の考える、市民活動の真骨頂です。
もちろん、自分の人生は誰も他人に書いてもらうものではない。しかし、必要とされ成し遂げる価値あるものがある時、それが面白いものなら、「いっちょ乗ってやるか」というのも人生。そういう、「乗ってやるか」と思えるだけの、価値ある舞台が用意できるかどうかが腕の問われるところ。
小さな現場から、大きな社会システムまで、どんな新しい心躍る台本と舞台を社会に提供できるか。それがNPOの最大のミッションの一つと言っても過言ではありません。
現代は、地域コミュニティも会社コミュニティも衰退している。人と人が協力することがますます困難となるこの時代において、私たちは「協力のつくり方」を学ばなければならない。
NPOは人と人とがつながる結節点であり、それが強化されることは、この社会のコミュニティの再構築を生み出す。そして多様なNPOをつくること、参加すること、寄付することを通じて、私たちは新しい日本社会のビジョンを現実に学ぶのです。
新寄付税制は、そのための基礎の一部でしかありませんが、日本社会の再生に貢献する大きな一部だと考えています。
ただし、NPOの認証・認定事務の移管などにも表れている「地方分権」はいいことばかりではなく、国・県・市等の食い違いや、自治体間での対応の違い・格差も広がるでしょう。しかしそれを前提とした上で、いかに強い市民社会のネットワークを構築できるかが我々に問われています。
制度とは社会デザインです。社会を変化させたいと思った時、法律や制度をデザインすることで人々の行為を変えていくことができる。もっとみんなで制度を変えていきましょう、私たちには、社会をデザインする力があるのです。
舞台の上では誰もが主人公。観客もボランティアも舞台を作る不可欠な要素です。みんなで演劇をつくることをイメージしてください。法律は議員がつくる。言い換えれば、一種の直接民主主義です。
そう思って参加する事こそが、この世界に、私たちが自ら希望や価値を生み出していく方法なのだと私は思っています。
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