NPO法人がスタッフを採用したら行うこと
新しいスタッフを雇用したら、まず労働環境の説明を行いましょう。長く活躍してもらうためにも、働きやすい職場であることが重要です。就業規則は定められていますか?勤務時間の管理方法は適切ですか? また、労働基準法で定められた通りに雇用契約書を交わしたり、労働保険や社会保険の資格取得も適正に行って、事業所としての義務を果たしましょう。 |
ビフォーアフター
ビフォー労働環境の整備って、必要なのはわかっているけど、活動は忙しいし、人事部があるわけじゃないし、どうしても後回し・・・。でも働きやすい職場じゃないと、次々人が辞めてしまって、なかなかスタッフが育たない。 |
アフター職場のルールが明確だと、スタッフのやる気も向上!辞める人も少なくなって、スタッフが育ち、活動の質もあがる! |
手順
1. 雇用契約書を交わす
スタッフを採用したら、労働条件を雇用契約書に書かなければなりません。
雇用期間、勤務場所、勤務時間と休憩時間、仕事内容、残業の有無、休日、給与や賞与、昇給、退職など
特に、NPO法人の場合、事業期間にあわせて、雇用期間に定めのある契約を結ぶ場合も多いかと思いますが、労働基準法で様々な決まりがありますので、お近くの労働基準監督署や、社会保険労務士を頼って、法律違反とならないよう注意しましょう。労働条件は思わぬトラブルに発展する場合があります。
2. 就業規則を説明する
みなさんの法人では、就業規則を作成していますか?常に10人以上の社員がいる会社は必ず就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出なければなりません。ただ、10人未満だから関係ないと思うのはもったいない!労働条件や職場での規律を具体的に定めたもので、職場のルールが明文化されていることは、公平な評価につながり、働く側のやる気も向上します。就業規則、あるいはそれに準ずるような職場のルールを、ぜひ作成して、スタッフ全員がいつでも閲覧できるように、周知しましょう。
なお、就業規則では、労働時間、休憩、休日、給与、退職に関することは必ず盛り込まなければなりません。その他に安全衛生や表彰制度など、職場の実態に応じて、運用可能なルールを作成します。
3. 職場のルールを説明する
雇用契約書と就業規則で、重要な労働条件の確認を行ったら、いよいよ現場!職場の備品の使い方、勤務時間の管理方法、休憩の取り方、残業の申請方法、業務報告の方法、休暇の取得方法、パスワード等の管理方法など、職場のルールを丁寧に説明しましょう。
4. 雇用保険の資格取得届を提出する
フルタイムで雇用する場合、雇用保険には必ず加入しなければなりません。また、パートタイムの場合でも、1週間の所定労働時間が20時間以上の場合は、加入対象です。詳しいことは、お近くのハローワークや、社会保険労務士を頼って、法律違反とならないように、注意しましょう。
5. 健康保険と厚生年金の資格取得届を提出する
フルタイムで雇用する場合、健康保険と厚生年金にも必ず加入しなければなりません。また、パートタイムの場合でも、労働日数と所定労働時間が、それぞれ一般社員の概ね4分の3以上である場合は、加入対象となります。
法人が負担する保険料が高額で、つい二の足を踏んでしまいますが、お近くの年金事務所や、社会保険労務士を頼って、適正な加入に努めましょう。
6. 住民税の特別徴収の手続を行う
職員の住民税は、法人が給与から控除して各市区町村に納めます。これを「特別徴収」といいます。
前の職場でも特別徴収を行っていたスタッフについては、「特別徴収にかかる給与所得者異動届出書」をスタッフから預かり、市区町村へ提出します。
採用前に、自分で直接住民税を納めていた(普通徴収)スタッフについては、「特別徴収への切替申請書」を作成して市区町村へ提出します。
毎月納付することになるので、事務が増えてしまいますが、原則として、法人は特別徴収することとされています。
コツ
●個人情報の取り扱いに十分注意しましょう!
スタッフを採用すると、労働契約書、履歴書、各種保険加入に必要な情報、住民税額、家族の状況、通勤経路など、様々な個人情報を一度に預かることになります。紛失・盗難・漏えいなど、情報が流出しないように気をつけます。
●説明は不明点を残さず丁寧に。
公正な職場環境を維持するために、就業のルールはとても大切です。とはいえ、規則と言われると、誰しも身構えてしまい、わからないところがあっても、ついわかったようなフリをしてしまうことも。面倒だと思わず、採用時には時間をとって丁寧に説明しましょう。全員がルールをよく理解することで、快適な職場環境が実現し、スタッフの意欲はさらに向上します。長く働ける法人は、活動の質も必ず向上します。
NPO法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会
1994年11月創設。1998年のNPO法成立、2001年の認定NPO法人制度成立、そして2011年6月の制度大改正を市民側からリード。市民活動を支える制度を勝ち取ってきました。NPOの個別サポートプログラムを4月からスタート。これからのシーズは、「基盤整備の時代」から「NPOの成長と成果の時代」を目指します。