東日本大震災の被災三県で活動する団体向けの助成金の探し方
ビフォーアフター
ビフォー・助成金の情報を見つけたときには締切間近だったり、締切を過ぎていたりする。
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アフター・実施する事業にマッチした助成金の情報を、時間的な余裕を持って知ることができる。
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手順
1. 事業の方針を立てる
今申請できそうな助成金の情報を見つけてから、それに沿った事業を考えるというのでは本末転倒です。事業計画の中で事業方針は決めていることと思いますが、こうした本末転倒を起こしている団体もなきにしもあらずですので、敢えて書きます。何を目的にどんな事業を行うのか、組織としての事業の方針をまずはきちんと立てましょう。
毎年公募されている助成プログラムについて事前に情報を集めておき、事業計画をつくる時点でどの助成金に応募するかもある程度織り込んでいると、計画的に事業を進めやすくなります(過去の助成金情報の探し方は5を参照)。
しかし、NPOの事業はなかなか計画通りにいかないのも事実。事業の方針は立てた上で、まずはこれから応募できる助成金の探し方についてご紹介します。
2. 事業規模・スケジュール・実施体制のイメージを持つ
1にも関連しますが、助成金を得て実施しようとする事業の規模やスケジュールもある程度イメージしておきましょう。助成プログラムは助成額やスケジュール(申請期間および事業実施期間)の制約があることがほとんどです。どのくらいの規模で、いつ実施するかが決まっていれば、必然的にどの助成プログラムに申請できるかも限られてきます。
また、おろそかになりがちなのが実施体制についてです。特に外部の機関・団体と連携して事業を進める場合には、助成金に申請する前に連携機関・団体と合意していないと後になってトラブルになることもあります。連携先とは早めに連絡を取っておきましょう。
3. 助成金ならではの注意点を知る
助成金ならではの注意点もあります。多くの場合、助成金は使途に制約があります。特に人件費に充てられるかどうかは事業を実施する上でも大きな違いになってきますのでよく確認しましょう。それから、お金の出し手が行政や外郭団体の場合、民間よりも資金の使い方に制約が多い傾向があります。
また、助成金の支払時期にも注意が必要です。助成決定後、すぐ全額入金されるものもあれば、何回かに分けて入金されたり、事業終了後に精算払いというケースもあります。事業を実施してから助成金が支払われるという場合、手持ち資金がないと資金繰りが苦しくなりますので、気をつけないといけません。
そして、助成金によっては自己資金が必要なものもあります。補助率が設定されていて、例えば、補助率80パーセントで、自己資金が事業費の20パーセント以上必要になるというようなケースです。これも、その分の自己資金の用意をしておかないと事業実施が厳しくなるので、自己資金が必要かどうか、必要な場合その割合はいくらかといったことにも注意してください。
4. ウェブで探す(NPO支援センター編)
それではいよいよ情報探しです。NPO向けの助成金情報がまとまっているウェブサイトをいくつかご紹介します。以下の4つは宮城、岩手の団体・機関によるサイトで、地元の助成金情報も多いです。
手前味噌で恐縮ですが、私が所属する地星社の助成金情報です。全国規模もしくは東日本大震災の被災三県内の助成プログラムの情報を一覧にした情報をエクセルで提供しています。情報の網羅性と見やすさは自負しておりますが、月一回程度の更新のため、速報性には欠けます。
宮城で活動するNPO向けの情報サイトです。助成金の情報は一言コメントとともに締切順に掲載されていて、助成元のウェブサイトにリンクされています。情報量が多く、宮城県外の団体にとっても役立つでしょう。
◯【N活】 NPO活動交流センターBlog 【 助成金 ・ 補助金 】 情報
岩手県NPO活動交流センターのブログです。助成金についても詳細な情報とともにブログの記事としてアップされています。
いわて連携復興センターのサイトです。助成金について、内容、助成金額、締切などが紹介されています。
地域を限定した助成金の情報については、地元のNPO支援センターのサイトに掲載されることもありますので、上記以外でも自分の地元の支援センターのサイトは定期的にチェックすることをお勧めします。
以下の2つは全国規模の助成プログラムを探すときに役立つサイトです。
日本財団およびCANPANセンターが運営する公益活動支援サイトです。全国規模の助成金情報はだいたい網羅されています。
シーズ・市民活動を支える制度をつくる会が運営しています。日本全国の様々な助成金情報が、応募可能な地域、応募資格、助成対象、助成額、応募締切など、わかりやすく編集されて掲載されています。掲載順の他、締切日順に並びかえて助成金情報を探すことができます。
(画像はNPOWEBのスクリーンショットです)
5. ウェブで探す(行政編)
行政からの補助金については、NPO向けの場合は上記のサイトに情報が載ることもあります。しかし、対象をNPOに限っていない補助金も少なくありません。そうした補助金の情報はそれぞれの省庁や自治体のサイトから探した方がよいでしょう。
団体の活動と関係ある分野の省庁や、活動地域の自治体の「新着情報」「公募情報」のページをときどきチェックしてみてください。行政からの補助金は民間助成金に比べて、情報が公開されてから締切までの期間が短い傾向にあるので注意が必要です。
また、復興庁がまとめている「NPO等が活用可能な政府の財政支援」の情報も参考になるでしょう。
(画像は復興庁ホームページ「NPO等が活用可能な政府の財政支援」のスクリーンショットです)
6. 過去の助成金情報を探す
助成プログラムは、毎年継続して同じ時期に実施されるものも多いです。ですから、過去の助成金情報をチェックしておくのも重要なことです。3の助成金情報サイトから探すとよいでしょう。CANPANでは募集が終了したプログラムだけを探すことも可能です。
過去の助成先や助成実績をホームページに掲載している助成機関も少なくないので、どういう団体・事業に助成されているかを調べるのも参考になるでしょう。
また、助成財団センターが発行している『NPO・市民活動のための助成金応募ガイド』は日本国内の助成金の情報を網羅しています。この本は一般の書店ではあまり扱っていないですが、市民活動支援施設に置いてあることも多いと思いますので、機会があればぜひ一度ご覧ください。
(写真は『NPO・市民活動のための助成金応募ガイド 2012』です)
7. 助成金情報について尋ねる
NPO向けの助成金情報が集まるのは何と言ってもNPOの支援センターです。助成金で活用して実施したい事業があれば、それにあった助成プログラムがないか支援センターに尋ねるのも一つの方法です。そのときちょうどふさわしいものがなくても、あとでぴったりのものが出てこれば、真っ先に教えてくれるかもしれません。
それから、4、5にも関連しますが、あまり大きく広報されていないけれどもNPOが利用可能な補助金が、自治体によっては意外とあったりします。そこで、自治体の担当部署に該当する補助金がないか尋ねてみるのも一つの手です。
やや情報が古くなりますが、宮城県のホームページに市町村でのNPOを対象とした補助金の一覧のファイルがあるので参考にしてください。以下のページの「NPO活動への支援策(補助金・助成金等)」というPDFファイルをご覧ください。
コツ
・助成金は、使い方が制約されていることが多いですから、むやみに助成金を取ってしまうと活動がしづらくなることもあります。その事業は助成金で行うのが適切か、よく検討した上で申請しましょう。寄付を得たり、何らかの手段で対価を得る可能性について考えてみることも大切です。
・助成機関によっては、説明会を開いたり、事前の相談に応じていることもあります。そのような機会も積極的に利用してみましょう。
布田 剛
社会をよりよくする活動を行っている人や組織を支援する非営利組織、地星社の代表。