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残業への対応~もしもあなたが職員を管理する立場になったら

Business zangyou

NPOで仕事をしていると、あなたが職員を管理する立場になることがあるかもしれません。そのような時、もしも職員が勤務時間の終了後ずっと残業をしていたらどうしますか?

「NPOは職員の上下関係なんてないフラットな組織だし、命令なんてできない・・・」と放置していたら、NPOに思わぬ債務がふりかかるかもしれません。

ビフォーアフター

ビフォー

職員ははりきって(?)残業。管理する人はひやひや。

アフター

業務時間管理をきちんとして、管理する人も職員もハッピー。

手順

1. 労働時間管理の責任は誰に?

労働基準法により、使用者には労働時間を適切に管理する責務があります。ここでいう「使用者」とは、「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為するすべての者(労働基準法第10条)」をいいます。
時間外勤務や休日勤務は、本来、使用者の業務命令により行われるべきものです。使用者は、業務の進捗状況を見極め、必要に応じて時間外勤務等を命ずるなど、適切な労務管理をする必要があります。労働時間の把握・算定は使用者の義務ですので、しっかり管理しましょう。
とはいえ、ホワイトカラーの職場では、労働者が自己の労働時間を自主的に申告することにより労働時間を把握する「自己申告制」を利用するケースも見受けられます。その場合でも、使用者による実態把握や労働者への十分な説明など、労働時間を適正に把握するための対応が定められています。

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/070614-2.html

2. 法定労働時間を超えて時間外労働をさせることがある場合に必要な手続~36協定

使用者は原則として1日8時間、1週40時間という労働時間(法定労働時間)の規制枠を超えて働かせることはできません。また、休日については、毎週少なくとも1回の休日(法定休日)を与えなければならないとされています。
法定労働時間を超えて、または法定休日に職員を働かせるためには、あらかじめ、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者との間で、「時間外労働・休日労働に関する協定」を締結し、労働基準監督署長に届け出なければなりません。この協定届は、労働基準法36条に規定されているので一般に「36(さぶろく)協定」と呼ばれています。
36協定により延長できる労働時間については、「時間外労働の限度に関する基準」において上限時間が定められており、協定内容はこの基準に適合するようにしなければなりません。また、協定により可能になったとしても、時間外労働・休日労働は必要最低限にとどめられるべきものであり、NPO及びその職員がそれを十分認識したうえで36協定を締結するべきでしょう。

時間外労働・休日労働に関する協定届
http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/tokyo-roudoukyoku/secondpage/image/todokede-imege/36kyoutei.pdf

36

3. 残業のリスクを知る~経費について

残業をさせた場合には、当然その時間に対する賃金を支払わなければなりません。
残業により、労働時間が法定労働時間を超えた場合や、法定休日に労働させた場合には、割増賃金の支払が必要です。

4. 残業のリスクを知る~職員の健康について

使用者には、職員が心身の安全を確保しながら労働できるよう配慮する義務(安全配慮義務)があります。過労死や過労自殺が発生すると、NPOが多額の賠償責任を負う可能性があります。厚生労働省の定める労災の認定基準によると、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間の評価の目安は次のとおり示されています。
① 発症前1か月~6か月間にわたり、1か月あたり概ね45時間以内の時間外労働の場合は、脳・心疾患との関連性が弱いこと。
② 発症前1か月間に概ね100時間を超える時間外労働が認められる場合、又は発症前2か月~6か月にわたり、1か月あたり概ね80時間を超える時間外労働が認められる場合には業務と脳・心疾患の発症との関連性が強いと判断されること。
長時間労働は、脳・心疾患のみならず、うつ病等のストレスが関係する精神疾患等の発症をもたらし、自殺につながることもあります。職員の勤務状況を把握し、職員を交えて長時間労働を解消する対策を話し合う等、長時間労働が慢性化しないように配慮しましょう。

5. 適切な労働時間管理を

NPOといえども、労働法上は「使用者」に該当しますから、ひとたび労働に関するトラブルが発生すれば、大きな損害につながることもあります。トラブルに結びつきやすい労働時間については、適切に管理する必要があることを、おわかりいただけたでしょうか?
あるNPOでは、残業の際には残業時間と業務内容を申告し、総務責任者の許可を得る、という方法を採用していました。NPOの事業内容や職員体制を考慮し、適切な方法を考えましょう。

コツ

NPOで働く人には、一般的に仕事熱心な人が多く、労働時間が長くなりがちです。労働時間の管理は、管理する人にとっても悩ましいことのひとつです。残業をする場合のルールをつくり、残業時間が多くなる場合には業務や役割分担の見直しをするなど、それぞれのNPOに適した方法で働きやすい環境をつくっていきましょう。業務によってはアウトソーシングをしたり、専門家に依頼するなど、作業を抱え込まない工夫も有効かもしれません。

平塚 綾子

民間のボランティア活動推進機関で約20年、経理業務を中心に管理部門の仕事をしていました。たまたま就業規則を見直す機会があり、労務管理の重要性を痛感しました。
退職後、労働や雇用に関する知識を深めるために、社会保険労務士の資格を取得。「社労士によるNPO応援団」に参加しています。
経理の経験を活かして、NPOの経理業務のお手伝いもしています。
埼玉県社会保険労務士会所沢支部所属。特定社会保険労務士。

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本記事は、2014年04月02日公開時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。
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