トップページに戻る

失敗しない学生インターン生の募集方法

生きものの暮らしを解説する様子

インターンシップは、学生が就職前に企業や行政で行う就業体験のことです。仕事に対するプロの姿勢を学んだり、就職先に対して抱いている期待と現実とのミスマッチを防ぐ効果があります。

生態工房では2004年にインターンシップの受け入れを開始し、年間約30人が参加しています。インターン(実習生)の大半は大学生ですが、専門学校生や、休日を利用して参加する社会人もいます。インターンは、生物調査や野外作業、普及啓発活動、事務所内でのデータ整理や庶務など、環境保全NPOとして普段行っている活動全般に12日間従事しています。

当会のインターシップには、個人的に申し込んでくる大学生が多いのですが、最近は大学からの紹介で参加する学生が増えています。今回は大学を通じてインターンシップを受け入れる場合の手順について紹介します。

ビフォーアフター

ビフォー

インターンをどうやって受け入れるのかがわからない

アフター

インターン受け入れに必要な準備や手順がわかる

手順

1. 知っておきたい、受け入れ前の大前提

現在、ほとんどの大学がインターンシップを導入しています。単位認定や、必修にしている大学もあり、非常に多くの学生がインターンシップに取り組んでいます。したがって、応募してくる学生の「動機」や「やる気」もさまざまです。あなたの会の活動分野に初めて触れる人や、NPOって何?という人もいます。こういった「普通の大学生」が対象だということを知っておいてください。

写真:植生調査をする様子

     3

2. 実施形態の交通整理

インターンシップの実施形態は、組織によってさまざまです。労働をさせて賃金を支給する組織があります。仕事ではなくグループワークやディスカッションをさせる組織もあります。就職を前提とした研修の機会にしている組織もあります。実施形態がさまざまだということは、学生の側でも、ある形態をイメージしているということです。実施形態の認識がズレていると、互いにストレスの多いインターンシップになってしまうので注意が必要です。

写真:水辺の生きものの生息環境整備の様子

3. 職員、ボランティアとの違いを整理する

大学がインターンシップを取り入れている目的のひとつは、組織・社会で「仕事をする」ということを学ぶことです。技術面の修得よりも、仕事に対する姿勢や態度、責任などを、見たり感じたりすることが大事です。あなたの会でインターン生がやることは、職員、ボランティア、アルバイト、講座参加者と区別されていますか? 見学でもなく、ただの労働でもないプログラムのあり方を考えてみてください。

写真:外来生物の調査の様子

4. 仕事内容を決める

森林保全のNPOなら、間伐のような直接的な森の手入れ、炭焼きや作業道整備のような間接的な森づくり、ツアーで参加者を案内、あるいは事務所での後方支援、加工品の販売などさまざまな仕事があります。森の中での仕事に憧れていた学生が、現実には森で過ごす仕事ばかりではないことを身をもって知るのも大切ですが、イメージと従事内容に差がありすぎると不満が生じやすいのも事実です。インターンが事業のどの部分に従事するのかをあらかじめ明示しておきましょう。

写真:湿地の整備の様子

5. 応募要項をつくる

ここまでの内容を整理できたら、インターンを募集するための要項を作りましょう。実施形態、立場、従事する仕事内容などを書いてください。応募する側は、細かい条件まで気になるものです。実習の期間、日数、時間、交通費等の支給有無などの条件をもれなく書いてください。応募方法、面接や見学の有無、方法も決めておきましょう。

6. 学校に連絡する

多くの大学ではインターンシップの窓口を設けています。大学と協力してインターンシップの受け入れ先になるのがオススメです。就職関係の部署がやっているので問い合わせてみましょう。部署の担当者に応募要項や団体概要を渡し、活動内容についてよく説明してください。担当の教職員は、学生個人の個性や適性を把握していますから、適切なコーディネートをしてくれるかもしれません。担当者と緊密にコミュニケーションをとるとよいでしょう。大学によっては、事前に社会人としての心構えなどを研修するところもあります。

7. 募集、面接

応募要項ができたら募集を開始します。募集方法には、①大学からの推薦、②ホームページ、③置きチラシなどがあります。必要に応じて使いわけてください。自団体のホームページのほか、就職情報サイトも活用しましょう。応募者には一度会って面接するのがよいでしょう。当会の場合、面接は説明会のような意味合いで行い、採用を前提とした互いの共通認識作りの機会にしています。インターンとして採用したらマニュアルを渡します。マニュアルは備忘録として活動のバックグラウンドとなる情報や、服装等の注意事項を記載しています。

8. 評価

当会ではインターンシップが半分終わった時点で中間評価を行っています。企業が使用している評価尺度を参考にして独自の評価シートを作成しています。中間評価で自分の課題に気付かされ、後半に大きく伸びる人もいます。中間評価で使う評価項目は、実習開始時に配るマニュアルにも記載されています。評価項目をあらかじめ示しておくと、頑張り方の方向性がわかっていいようです。なお大学によっては、実習終了後に受け入れ団体が評価シートを記入することになっています。

コツ

インターンシップを成功させるには、どのようなインターンシップにするのかを、まずは自分の組織内で明確にしてください。そして大切なのは学生とのコミュニケーション。中間評価、最終評価などのタイミングを作って、相手にフィードバックしてください。このような受け入れの制度やツールをどんなに整備しても、参加者とのミスマッチは起こります。そんなときは本人と対話するのはもちろんですが、大学の担当部署にも率直に状況を伝えましょう。大学に苦情を言うという意味ではありません。インターンシップを成功させるパートナーとして大学にもフィードバックが必要です。情報共有と意見交換をしながら信頼関係を深めてください。

【生態工房のインターンシップ】
http://www.eco-works.gr.jp/index.html#sanka

L9990078

佐藤方博

認定NO法人生態工房事務局長。東京都内を中心に、地域の生物多様性の保全・回 復に取り組む。生態工房では生息環境の保全管理、外来種対策、市民参加型保全 活動などを担当。

スポンサー


本記事は、2014年04月07日公開時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。
ChangeRecipeではあなたのNPO活動における知識や体験談を必要としています
あなたが活動するなかで苦労したことやそれを乗り越えるために行ったノウハウは、他の地域で活動している方がとっても必要としてます。
あなたの投稿で日本の社会変革のスピードを加速してみませんか?