参加者倍増!市民ボランティアの募集方法
ビフォーアフター
ビフォー参加できるボランティア活動がひとつしかなく、参加人数の上限が低い。 |
アフターボランティアの受け皿が多様化し、大勢のボランティアの参加が可能になる。 |
手順
1. かいぼりにはボランティアがいっぱい要る!
かいぼりでは池を排水するので、大切な在来魚を手早く救出しなければなりません。排水しながら、捕った魚を外来魚と在来魚に仕分け、種類ごとに数を記録し、在来魚はいけすへ運び・・・と多くの工程が同時に進行します。大勢のボランティアがいないと円滑な運営は難しいのです。全国各地で行われているかいぼりは、いくつもの団体が協力して行われるのが普通です。
また、井の頭池の自然を再生していくためには、池の管理者の東京都だけでなく、大勢の市民が手を携えて息の長い活動をしていかなければなりません。かいぼりは、市民が井の頭池の現状を自分の課題として捉え、直接関わるための好機です。
今回はこの2つの理由から大勢のボランティアと一緒にかいぼりをすることになり、ボランティアの参加計画が立てられました。
写真:かいぼり後の記念写真。主催者と井の頭かいぼり隊。
2. 多人数を受け入れるしくみをつくる
大勢のボランティアに参加してほしいのはやまやまですが、一方では、水辺での活動で事故のないように目を行き届かせながら、集まってくれたボランティアのパワーを存分に発揮させるには、現場を仕切ったりまとめたりする十分な数の人が必要です。この仕切り役・まとめ役の人数や力量によってボランティア全体の人数が決まります。今回のかいぼりは、将来的な池の自然再生を視野に入れたキックオフイベントとしてできるだけ多くの人に参加してもらうことを重視しました。そして、半日のボランティアイベントに多くの参加者を集め、訓練を受けたボランティアがイベントをサポートする、という複層構造をつくりました。
写真:外来魚のハクレンを運ぶボランティア
3. 複層化のデザイン
かいぼりボランティアは、やる気と経験に応じて、次の3つのステージに整理しました。
・井の頭かいぼり隊(募集人員 50人)
かいぼりにしっかり携わりたい人向けの、ボランティアの核になるチーム。高校生以上を条件とし、事前に説明会と6回の講習会があります。
・おさかなレスキュー隊(募集人員 60人×3回)
ちょっとだけ参加したい人向け。かいぼり当日に魚を捕る半日参加のボランティアです。小学生から参加できます。
・かいぼり見学者
かいぼり実施中に来園した一般市民。池のほとりに、かいぼりや池の再生活動を知ってもらう情報発信処「かいぼり屋」を設置し、解説員を常駐させました。また、水のない池底を歩く自然観察会を2回開催しました。これらの普及啓発活動によって市民はかいぼりへの理解を深めます。
このほか、井の頭池で活動している地域団体は、かいぼりの計画段階から関わっており、当日も主催者側として協力しました。関東で活動している水辺保全系団体は、経験値の高い助っ人として当日に協力してもらいました。
写真:浅くなった池で魚を捕るボランティア
4. ボランティアを募集する
当該地域では、かいぼりに対する関心が高まっていたので、ボランティアの募集人数を超える応募があると予想されました。そのため、情報の拡散を制御せざるを得ないと判断し、主催者のホームページを除いてインターネット上での広報をしませんでした。使用した広報媒体は、自治体の広報紙と現地掲示板です。
自治体の広報紙にあるイベント等の情報欄は無料で利用できます。広報紙は市内に全戸配布されるので、地域住民への広報効果が高い方法です。井の頭恩賜公園がある武蔵野市・三鷹市の市報に掲載しました。井の頭かいぼり隊の説明会では、両市の市報の発行を待って受付を開始したところ、申込64名のうち30%が初日に申し込みました。広報紙は、掲載希望団体が多い場合には、確実に掲載できるとは限りません。掲載できる団体や内容にも条件があります。かいぼりでは両市が主催者になっていたのでスムーズに掲載できました。
広報紙は効果が高い反面、見ない人は見ない、ということもあります。普段から井の頭恩賜公園を利用している人に参加してほしかったので、公園内の掲示板にポスターを掲示しました。募集期間後半にポスターを掲示したところ、申し込み数の増加が確認できました。
【井の頭池のかいぼりの結果】
http://inokashirapark100.com/water_green/kaibori/index.html
写真:外来魚駆除の成果を解説するボランティア
コツ
井の頭池のかいぼりは、2015、2017年度、その後も数年おきに実施していく計画です。今回構築したボランティアの複層構造は、ボランティアが3層それぞれに固定されるものではなく、より中心部に移行していくことを想定しました。井の頭かいぼり隊は、現在は東京都が募集・運営するボランティアですが、将来的には自立した組織となってかいぼりを運営し、池の自然再生にも携わっていきます。また、今回おさかなレスキュー隊に参加した人たちからは、次回はかいぼり隊への入隊希望者が現れることが期待されています。さらに、今回かいぼりを見聞きして関心を持った人は、次回のおさかなレスキュー隊の予備軍です。ボランティアによる活動を継続していくために、かいぼりを通して池の深みにどんどんはまっていく設計になっているのが今回のミソだと思います。
佐藤方博
東京都内を中心として、市民参加によるかいぼりで在来種の回復を手がける。井の頭池のかいぼりでは、市民参加の企画・運営を担当。全国ブラックバス防除市民ネットワーク理事、認定NO法人生態工房事務局長。