【セミナー報告】 1/28-29 (土-日) 環境NPO政策提言実践セミナー Part1 「ロビー活動を自分ごとで考えよう」
1.実施概要
(敬称略)
タイトル |
環境NPOのための政策提言実践セミナー 「環境アドボカシー 成功への道!」 2日連続講座 「ロビー活動を『自分ごと』で考えよう」 |
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日時 |
2012年 1月28日 14:00~16:00 1月29日 13:00~ 16:10 |
場所 |
TKP新橋ビジネスセンター |
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主催 |
NPO法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会 |
参加者 |
7名 |
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講師 |
市民がつくる政策調査会 :草刈秀紀氏 |
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当日スタッフ |
シーズ:北澤・池本・奈良・木村・坂本・大庭 |
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助成 |
三井物産環境基金 |
プログラム初日 |
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1.はじめに 14:00- 14:10 |
挨拶・自己紹介 |
2.政策提言の手順について シーズ北澤 14:10-14:15 |
政策提言の手順について解説 |
3.ロビー活動に関する講義(初級・中級編)講師:草刈秀紀 14:15-15:15 |
ロビー活動をするための基礎知識(ロビー活動の相手を知る、法律の制定・改正のプロセスを知る等)
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4. 質疑15:15-15:30 |
ロビーに関する質疑応答 |
5. カルテを使ったワーク 15:30-16:00 |
ワークシートへの参加者の活動の記入 |
6.おわりに |
連絡事項 |
プログラム2日目 |
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1.はじめに 13:00-13:10 |
挨拶・前回のふりかえり |
2.ロビー活動に関する講義(上級編)講師:草刈秀紀 13:10-14:20 |
ロビー活動に使える手法いろいろ 超重要!ロビー活動の心得 |
3.質疑応答14:20-14:30 |
ロビーに関する質疑応答 |
休憩 14:30-14:40 |
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4.カルテを使ったワーク 14:40-15:00 |
ワークシートへ活動の内容をさらに埋めていこう |
5.カルテを発表、意見交換 進行:草刈秀紀 15:00-15:55 |
自分のフィールドでのロビー活動の展開について発表し、講師を中心に全体で意見交換 |
6.おわりに 15:55-16:00 |
まとめ |
2.セミナー要旨
1/28(土) 第1日目
(1)あいさつ (シーズ北澤)
主催者よりセミナー開催の挨拶。環境NPOのアドボカシー能力向上事業におけるセミナーの位置づけ等について説明。
(2)はじめに (シーズ北澤)
環境政策提言の基本的な進め方(アドボカシーの手順)について、シーズブックレットシリーズ12および13の内容に沿って解説を行った。
(3)ロビー活動に関する講義(初級・中級編) 講師:草刈秀紀
初級編として、ロビー活動の定義から始まり、国会議員、国会用語、立法過程、年間スケジュール、内閣提出法案、議員立法などについて話し、続いて、中級編として、法律がどのように作られるのか、国会の仕組み、国会議員の動きなどについて講義を行った。
【講義のポイント】
- ロビーの定義は、「政党や議員や官僚、さらには世論に働きかけ、有利な政治決定を行わせる事」である
- ロビーの基礎知識として必要な用語として、「お経読み」「つるし」「ヤリコン」「ヨリコン」などがあり、これらを知ることで、国会議員とのコミュニケーションがスムーズになる。
- 国会を取り巻く機関(衆参両議員と事務局、国会図書館、関係各省庁など)とその役割関係について解説した後、まずは、NPOが閣法の策定策定に関わるための基礎知識や、内閣提出法案審査の流れ、法律改正のスケジュールについて解説した。
- 法律策定にNPOの要望をより反映させるためには、議員立法に関わり、議員が法制局の人を呼んで話をする場に参加する事が重要である。また、NPOが主導して議員を通じて法制局の人を呼んで法律策定を進める、市民立法という方法も今後は注目される。
- 衆参調査室(例えば環境調査室)の資料(法案、付帯決議など)は、NPOが活用すべき資料である。
(4)質疑応答
講義後、質疑応答を行った。参加者からは、パブリックコメントの位置づけと活用の仕方、国会を取り巻く仕組みと地方の仕組みの違いなどについて質問があげられた。
- パブリックコメントの位置づけがどうなっているのか?政権が民主党に変わってから、状況が変わっているのか?
→議員を使って、パブリックコメントを活用しても反映されないこともあるが、何度もトライしていくしかない。本来は、どんなパブコメが出されているのか、公開されなければならない。パブリックコメントの市民の声が法案にきちんと反映させるようにしなければならないということにも、動かなければならない。審議会も、御用学者だけでなく、中立的な立場による審議会の必要があるという「審議会革命」という著書も出ているので、参考に。
- 国会図書館の資料室に、環境分野のものはあるのか?
→農林環境というところにある。国会議員が使えるような資料を作って、資料室に送ると良い。
- 地方議会も、国会と同じだと考えればよいのか?
→全く異なる。
(5)カルテを使ったワーク
参加者がそれぞれ行っているアドボカシー活動を記録し、今後の活動計画を立てるトレーニングとして、カルテ(環境診断録)を使って、これまでの活動や今後行いたい活動を参加者に記入してもらった。その際、必要に応じてアドボカシーワークシートを使って、頭を整理して記入してもらった。
■1/29(日) 第2日目
(1)あいさつ (シーズ北澤)
主催者よりセミナー開催の簡単な挨拶、当日のプログラムについて説明。
(2)昨日のふりかえり (木村)
昨日の講義の内容を当日の記録をもとにファシリテーター(木村)より行った。
(3)ロビー活動に関する講義(上級編) 講師:草刈秀紀
昨日からの続きとして、審議会のコミッショナー制度やこれまでに講師が地域におけるロビー活動具体例として京都府野生生物保全の取り組みを紹介した。その後、ロビー活動の上級編として請願署名や質問主意書などのロビー活動に使える手法の具体的な紹介やポイント、ロビー活動の心得について講義を行った。
【発表のポイント】
- 請願署名は、国会会期中に提出でき、通過した法案以外に、1人から提出でき、紹介議員をつうじて提出する。請願署名には、採用されないが、住民がそれだけ関心を持っているというPRとして使うものから、理念を訴えるといったいろいろな使い方がある。期日や場所など具体的に、特定できる項目、記述が入っていると不採択になることが多い。
- 議員へのアプローチは、名簿や選挙区議員などをつうじたものもある。FAXで用件を伝えたうえで、面会時間は30分程度がせいぜい。
- 質問主意書は、内閣に送られ国会答弁と同じ効果がある。WEBで公開され、だれがどんな回答をしているか一目瞭然。自分がロビー活動をするときに有効な議員を見つけるのにも活用できる。
- 法案は、いつどのような法案を出すか予定を一覧で見られるので、事前に把握し動く。法案情報はできるだけ早く対案も含め入手し、問題点を把握しておくことが大切。条文の読み下し方は、解釈を間違えないことが大事。
- 国会審議の質疑はとても重要。チェスや将棋と同様、数手先を読むことが必要。予算委員会の一般質疑も活用する。国会での参考人は、犯罪捜査と異なり、国会の委員会で意見を求められた学識経験者のことを指している。
- 付帯決議は、法的拘束力はないが、将来の法改正には有効。NGO、NPOがのりしろをつけて付帯決議案を作っていくことがとても大切。
- 国会傍聴は紙と鉛筆だけ持ち込めるが、抑止効果とともに付帯決議の交渉の場としても有効。また議会視察を仕組むことも、有効な手立て。
- 国会に関連する情報はWEBや文献で公開されている。また国会議員データベースや六法全書もスマートフォンアプリやデジタルデータになっている。
◆超重要!ロビー活動の心得
1.市民が議員を動かす!
- 議員に使われてはいけない
- 閣法の世の中にしてはいけない
- 付帯決議を無視してはいけない
- 質問趣意書の手を抜いてはならない
2.偏らず、幅広くおつきあいする!
- 政党に色をつけない
- 与(野)党だけに働きかけない
3.タイミングを逃してはいけない!
- タイミングを逃さない
4.簡潔で説得力ある情報提供!
- 説明資料は多くしてはならない
- 調査室を忘れてはならない
5.応援や感謝の声を届ける!
- 自民党の仁義は忘れてはならない
※できると信じれば、必ずできる!!
(4)質疑応答
参加者からは、請願書の数や,草刈氏自身のロビー活動での失敗談や動き方、ロビー活動にかかわるきっかけなど質問が出された。草刈氏からはロビー活動で自分たちがインプットしたことを議員が話している姿をみて、ロビー活動の面白さを感じたというエピソードなど紹介された。
■質疑応答の概要
- 請願書はどれぐらいの数提出されるのか?
→かなりあるはず。
- 草刈さん自身のロビーの勝率はどれれくらい?失敗したことはないのか?
→何を勝ち取るのかという問題なので、勝率ということでは言いづらい。ただ失敗したことはある。議員に働きかけるときの仁義の切り方を誤ってしまったことなど。
- 今回は環境がテーマだが、その他にアドボカシーが盛んな分野はあるか?
→子育て、福祉分野は盛んだと思う。業界団体は頭数が多いので、動員をかけやすい。NGOも頑張らないと。そのためには、省庁にもよく行き、霞ヶ関のスピードに負けないことが大事。
- ロビー活動は、一人で動くのか、チームで動くのか?
→ケースバイケースだが、一人で動いちゃった方が早いこともある。ロビーは担当の人に全て任せるぐらいのつもりで取り組むことは大事。
- 今後議員への献金が、ロビーに影響を与えることはあると思うか?
→合法であれば、問題ないと思うが、パーティーなどお金を払ってまで行く必要があるのか。NGOはお金がないので。
- 草刈さんはどれくらいの議員に会っているのか?そのうち、話がすぐに通じる議員は何人くらいいるか?
→名刺だけで700はある。話がすぐ通じる議員は2-3人ぐらい。
- 議員視察は、有効なロビー活動になりそうだが、簡単に組むことできるのか。
→視察を行うことで予算が付きやすくなるなど効果はある。視察を行うこと自体は、大変ではないが、タイミングが難しい。
- 江東区で水辺の活動をしているが、ローカルな問題でもグローバルに関連する案件もある。どのようにアプローチすればよいか。ローカルなNGOの場合は、議員よりも行政との結びつきが強く、行政からはロビー活動をいやがるケースもある。
→ケースバイケースで、行政も議員に動いてもらいたいことがある。基礎情報の収集が重要。国の法令と地方の条例との違いを知るなど。
- 草刈さん自身のロビーのきっかけは?
→1999年鳥獣法が改悪されることになったために、活動したことが最初。自分たちがインプットしたことを議員が話し、そのことによって法律ができるのをみて楽しさを感じた。人を相手にしているのだから、楽しくないと!
(5)カルテを使ったワーク
1、2日目の講義をもとにして、これまでの活動や今後行いたい活動の内容を再考してもらい、カルテ(環境診断録)の内容をそれぞれ深めてもらった。
(6)カルテの発表と意見交換
2日間の講義の最後は、参加者の活動をカルテを使って紹介したうえで、ロビー活動のポイントについて講師よりコメントを受けた。
各活動概要と講師コメント等のポイントは次のとおり。
◇産業廃棄物対策問題を発端に里山の小河川の水質調査をおこなっていた。その最中に、絶滅危惧種のトウキョウサンショウオが発見されたことを契機に、里山の保全地域づくりを目指した活動を展開したいと考えている。
- まだ希少種条例が制定されていないのであれば、条例づくりに向けて動いてはどうか?現在、国レベルでの里山の生物多様性保全についても、里山イニシアチブなど様々な取り組みが進められている。利用できそうな動きをつかみ、連携づくりから議会の動きをふまえ6月を目標に定める。
- 市民活動支援の助成もあるので、他の団体とも連携して進めると良い。
- 耕作放棄や代替わりによって土地の線引きが不明になっている。条例制定によってゾーニングのしくみづくりにつなげることができる。
◇川の保全活動をしている。ゴミ拾いから水質調査、ウグイやヤマメを放す活動をしている。現在下水道推進、浄化槽の推進として、設置費用のサポート検討し、議員や町長にも働きかけたい。
- まず浄化槽に関する法的根拠はどのようになっているか?条例や省令や言葉の定義などをしっかりと調べることが大切。
- ステイクホルダーの整理をして、しくみづくりと住民自治の方向へ。
- 事業者決定のしくみチェックや海外の事例も見てみるのも良い。
◇宮代町で13年前から環境基本計画をきっかけに、地域資源を守り育てる取り組みをしている。「新しい村」という新しい会社をつくり、風景を作っている農家と共に竹林アートや田んぼアートなどの地域づくりをおこなってきた。農家や役場も巻き込みサスティナブルにしていきたい。
- 13年前から取り組んでいるのであれば、その当時かかわった子どもたちがまちに戻って交流会やワークショップを開催してはどうか
- 生物多様性保全活動促進法など、民間活動を促進する制度ができたので、そうした制度も後押しになるだろう。
- 事業を助成する制度もあるので、いろいろな制度を調べて使い、助成金もゲット!
◇給水塔の保全活動をしている。歴史資産として、施設周辺一帯の公園化を目指している。現在は災害用の貯水等になっている。地権者である水道局の理解は得られている。区の地域風景資産として認定され、区議や研究者にもアプローチしているが、区民の理解は未知数。メンバーの高齢化や派手にロビー活動をするとかえって良くないかなと思っている。
- 敷地内の生物相を調べてみては?貴重な生物がいるかも。
- 学術的価値の整理をし、地域の人がかかわる要素を増やす。
- 今は震災の関係で存続理由があるとされているがいろいろな状況証拠を集めるだけ集めておき、外堀を埋めて、タイミングを見計らってメディアなどでアピールする。
- 避難エリアなど存続理由を"水道だけ"にしないことがポイント。
◇トウキョウサンショウウオや駒沢給水塔のことなど、マスコミなどメディアをうまく使ってやると効果的だとおもう。後々のロビー活動に活きるのではないか。
- (7)総括
- メーリングリストやFacebookなどネットのツールを活用すると良い。今回のセミナーに参加した人たちのネットワークもつくり、ひろげられるとよい。それぞれの活動がつながりあうようなツールがあると良い。
- あとは実践あるのみ!